年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
上 英俊
氏名
上 英俊(うえひでとし)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成:第1期生
運動性疲労による味覚感受性の変化について

健康志向が高まる現代社会において、スポーツは競技選手だけが行うだけでのものではなく、健康な体づくりを目指す多くの人々に親しまれるものとなりました。総理府「体力・スポーツに関する世論調査」によって、国民全体の約30%もの国民が週に1日以上スポーツを行っていることが明らかにされています。また、同調査から得られたスポーツ人口の推移から、このスポーツ人口は今後さらに増加するものと考えられており、人々のスポーツに対する高いニーズをうかがうことができます。適切なスポーツの実施によって、筋力・持久力が高まるだけでなく、肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病の予防・改善やストレス解消などの効果までもが確認されています。しかし、一方で、スポーツの実施方法を間違えると様々な障害を引き起こす他、ひどい場合は突然死の原因となります。このように、スポーツ事故を未然に防ぎ、安全にスポーツを遂行するためには、環境整備・休養・栄養摂取が必要だと考えられます。特に、栄養の摂取は、「時間・内容・量」を適切にコントロールする時と、コントロールしなかった時の違いが大きく、このことからも“栄養摂取”は重要な研究課題であることが伺えます。疲労回復を促進させ、スポーツの効果を最大限に発揮させるためには、適切な栄養摂取が求められます。スポーツ後は、できるだけ速やかな栄養補給が重要であることが明らかになっていますが、疲労した身体では食欲が低下することが多く、速やかな栄養補給が困難となります。このような疲労時の食欲不振を改善させるために、スポーツの現場では「盛り付け・香り・温度・食感・味付け」などを工夫した調理が求められます。これまでに、様々なストレスによる味覚の変化が明らかになっていますが、それらの多くは精神的疲労に関するものであり、疲労時の味覚について調査したものはほとんどみられず、スポーツの現場で活用するためには十分ではありません。そこで、我々は、“運動後の食欲を増進”を目指して、身体的疲労によって味覚感受性がどの程度変化するのかを調査を行います。得られる結果をスポーツの現場で活用できるよう、マラソン大会・トレーニング合宿など、疲労が発生する環境下での味覚感受性変化を測定します。本研究の成果により、味付けを工夫することで、疲労時の速やかな栄養補給が実現する可能性があります。また、疲労と味覚感受性の変化を把握することで、運動性疲労がもたらす、塩分や糖分など「味付け」に関する栄養素の過剰摂取を未然に防げる可能性も期待できます。