年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
黄 忠
氏名
黄 忠(こうちゅう)
助成実績
外国人留学生奨学金:第3期生
一流競泳選手における推進効率の定量化、および泳技術特性の解明
外国人留学生奨学金:第1期生
競泳パフォーマンスに関する検討~生理学的、および力学的要因に基づいた競泳パフォーマンスとテクニックの限定要因の解明~

水泳運動の科学的研究は、20世紀初頭より、90年以上もの間行われてきました。水中運動の最も大きな特徴は、空気のおよそ800倍もの密度を持った水を媒体として、その抵抗に対して力を発揮しなければならない点です。そのため、水泳運動の研究は、泳速、身体抵抗(または推進力)、およびエネルギー消費(酸素摂取量)の相互関係、ならびに泳パフォーマンスに影響する因子の解明を大きなテーマとして行われてきました。これまでの研究から、泳距離が長くなるほど、より多くの有酸素性エネルギー供給量が必要となり、また、運動時間に伴う酸素摂取量の増加率は、ほぼ最大酸素摂取量に依存して高まるため、長距離選手ほど高い最大酸素摂取量を有する方がより有利であることが明らかとなり、また、有酸素性エネルギー供給能力が高いほど、高い泳速でも疲労困憊に至ることなく、運動を持続できるという潜在的可能性を示しています。一方、競泳パフォーマンスは体力因子だけではなく、体型、体格、姿勢などに伴って変化する抵抗力や推進効率などの力学的要因も競泳パフォーマンスに大きく影響することも、近年分かってきました。しかしながら、技術因子に関しては力学的分析、適切な測定方法、あるいは実験装置が未開発であることなどから、これらの指標と競泳パフォーマンスの関係を直接的に明らかにした研究はほとんどありません。そこで、我々は昨年度、競泳パフォーマンスと体力因子および力学因子との関連性について検討しました。しかしながら、年間トレーニングによるこれらの各指標の変化、およびそれらの変化と泳パフォーマンスとの関係については未だ明らかにされていません。そこで、今年度では、競泳パフォーマンスと関連性の高い指標に対して特異的なトレーニングを課し、年間トレーニングを通して、泳パフォーマンスを向上させる効果の度合いを明らかにしたいと思っています。また、本学で開発された抵抗測定装置を用いて、推進効率、および機械的効率を算出し、年間トレーニングを通じて、競泳パフォーマンスと推進効率(泳テクニック)の変化の関連性についても検討しようと思っています。近年の競泳スポーツで成功を収めるには、豊富な経験・情報に加え、データに裏付けされた科学的サポートの導入が必要不可欠となっています。永続的に一流選手を養成するならば、一流選手におけるデータの蓄積、それによる重要因子の解明、効果的トレーニング法の開発などが重要な課題といえます。そのため、被検者はアテネ五輪水泳800m金メダリスト、および国際試合で入賞する選手、日本水泳選手権に出場する選手数名とします。もちろん、オリンピック金メダリスト、および国際試合で入賞する選手の推進効率の結果は、世界中においても非常に貴重なデータであるため、これらの実験から得られた結果は日本、あるいは世界の競泳研究に貢献できるかと思っています。

多くのアディポサイトカインの中でも、アディポネクチンがメタボリックシンドロームと深く関連することが示されています。アディポネクチンは、健康な人では血液中に高い濃度で存在し、逆に疾患を持つ人は低い濃度で存在します。つまり、アディポネクチンを増加させることが健康増進につながるといえます。また、アディポネクチンは大きく分けて3種類の分子量で存在し、近年、分子量の高いアディポネクチン濃度がメタボリックシンドローム(インスリン抵抗性)の発症をよりよく判定できることがわかっています。このことから、運動によりアディポネクチン濃度に変化が生じ、また、その分子量の濃度にも影響を及ぼす可能性があると考えていますが、その点については明らかになっていません。そこで、私は有酸素性運動中の血中アディポサイトカイン濃度の動態を実験的に検証してみようと考えています。本検討では、運動中の血中アディポネクチン濃度に着目して、実験をすすめていきます。また、その分子量の違いも検討していきます。将来的には、様々なアディポサイトカインに着目し、メタボリックシンドロームを効率的、効果的に予防、治療する運動処方の構築を目指していきます。本検討ではそのための、基礎的な知見の蓄積をできればと考えています。