- 氏名
- 榎木 泰介(えのきたいすけ)
- 助成実績
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スポーツチャレンジ研究助成:第1期生
遺伝子発現からみた低酸素トレーニングの効果に関する研究
私たち国立スポーツ科学センターは、様々な舞台で活躍する日本人アスリートをサポートすべく、医学・科学・情報学の3部門を中心として活動しています。当センターのスポーツ科学研究部には、生理学、バイオメカニクス、心理学、トレーニング学など様々な専門をもった研究者が所属しています。これらの研究者が、アスリートの活躍をサポートするために、それぞれの専門性を活かし、時にはプロジェクトチームとなって研究を進めています。今回、私たち生化学研究室は「遺伝子発現からみた低酸素トレーニングの効果」というテーマで研究を行います。現在、様々な競技種目のスポーツ選手が、高地トレーニングや低酸素トレーニングを採用しています。一般的に高地トレーニングを行うと、心肺機能の向上や赤血球の増加などが起こると理解されています。よってコーチや選手は標高の高い場所や低酸素環境でトレーニングを行うことによって、運動能力の向上を期待しています。
しかしながら、高地/低酸素トレーニングについての学術的な情報(知見)は十分とはいえず、明確なトレーニング方法は確立していません。これまでの研究論文では、実際にトレーニングを行った後、パフォーマンスが向上したり、血液中の成分が改善されたりすることによって、高地/低酸素トレーニングの効果や成功、または失敗を判断しています。この様に、実践的な研究を行い、正確な科学情報を積み重ねる事は非常に重要だといえます。しかし今回、私たちは全く新たな取り組みにチャレンジします。この研究では、従来のように、赤血球の増加など生体内で起こった現象によって高地/低酸素トレーニングを評価するのではなく、高地/低酸素トレーニングによって生体内で何が起こるのかを、根本的に調査します。このために、生体内の最もミクロな情報を提供してくれる「遺伝子」に注目します。低酸素トレーニングによって何が変化する可能性があるのか、ミクロからマクロへの研究にチャレンジします。今回、YMFSスポーツチャレンジ研究助成を受け、この研究プロジェクトへの大きな使命感を感じています。この研究を通じて、スポーツの現場で努力を続けるコーチ、選手、また次の世代に対しても貢献することが、チャレンジスピリットの到達点だと考えています。
年度別チャレンジャー一覧
助成対象者のチャレンジ概要