- 氏名
- 小木曽 航平(こぎそこうへい)
- 助成実績
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スポーツチャレンジ研究助成(基本):第12期生
タイ農村地域社会におけるロングボートレースの文化機能に関する人類学的研究
本研究は、地域社会に必要なスポーツの文化機能の一つを「紐帯の形成」とし、それを可能にする仕組みを人類学的な手法で明らかにすることを目指している。人間の健康は単に心身の状態を良好に保つだけでなく、他者との健全な共生感覚のもとに生活が豊かになることで実現される。スポーツが人と人の紐帯となり、社会の共生を実現する文化であることをタイ伝統スポーツの資源的活用の事例に求め、実証的に明らかにしたい。
成果報告(2019年3月)
現代社会において伝統スポーツは地域社会の人々の繋がりを生み出す機能を持ち得るか。このことが本研究の主たる関心ごとであった。この問題を検討するために東南アジアのタイにその事例を求め、この国で盛んに行われている伝統スポーツの1つである「ロングボートレース」の実施状況を調査、分析した。6月、10月、11月に行った現地フィールドワークと年間を通じて行った文献研究の結果、ロングボートレースがタイの社会で大切にされている歴史性、宗教観、そして娯楽の要素を総合的に包含するスポーツとして、今なお多くの人々の生活の一部として実践され、タイ人としてのアイデンティティーを育むと同時に、彼らの社会を成り立たせる伝統文化として機能していることが明らかになった。他方で、このようなロングボートレースもまたタイ社会の変化の中で、かつてとは異なる様相を見せ始めていることも窺えた。今後は、その変化の諸相をタイ社会の政治、経済の変化と関連させながら、具体的に検討していく必要がある。そのような研究を通じて、スポーツを介した人間と社会の有機的関係の多様な側面について、さらなる検討を進めていきたいと考えている。
年度別チャレンジャー一覧
助成対象者のチャレンジ概要