年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
岩田 理沙
氏名
岩田 理沙(いわたりさ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(奨励):第13期生
女性アスリートに向けたプレクーリングの有用性の検討:暑熱下運動時における体温調節機能の性差に着目して

運動中の体温調節にとって重要な役割である発汗による熱放散は、体表面積や性ホルモンにより影響を受ける。体表面積が小さく、発汗量が少ない女性は、熱放散能が低く、発汗による体温調節能が男性よりも低いと言える。本研究では、液状の氷であるアイススラリーの摂取によるプレクーリングに着目し、運動パフォーマンスへの影響を男女で比較することで、女性にとって適切な摂取方法の手がかりを得ることを目的とする。

成果報告(2020年3月)

本チャレンジでは、女性にむけたプレクーリングの有用性について男女を比較することで研究を進めてきた。アイススラリーを摂取させ、プレクーリングを行う群と、同組成の飲料水を摂取するコントロール群を設け、男女ともそれぞれ2試行の実験を行った。飲料摂取後は、環境温38℃相対湿度40%の環境下で一定の自転車運動を行わせ、深部体温が38.5℃または疲労困憊に至るところまで運動を継続させた。平均の運動時間は女性が男性よりも長い結果となった。代謝性の熱産生量に有意傾向がみられたことから、酸素摂取量による相対強度を揃えた場合、代謝性の熱産生量が男性のほうが高く、それが体温の上昇に影響したことが考えられる。なお、主観的な指標については平均して女性のほうが低かったことから、冷却による快適感は女性のほうが長続きする可能性が示唆された。しかしながら本研究では、男女ともアイススラリーによる運動継続時間の改善は見られなかったことから、今後効果が期待される高湿度な環境下での実験を行って検討していく必要がある。本研究での結果は、7月に行われる国際学会での発表を予定している。3月末までにデータを追加し、終わり次第論文の執筆に取り掛かる予定である。今後は、女性にむけた運動の間および運動中や運動後のクーリングについても効果を検討していきたい。