年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
山本 裕二
氏名
山本 裕二(やまもとゆうじ)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成:第1期生
サッカースキル獲得のための「もぐらたたき型パストレーナー」の開発

私たちの身体運動、特にスポーツ技能において要求されるのは、機械のような正確性ではなく、さまざまな環境の要請に瞬時に応えつづけていく柔軟で、機知に富んだ動きです。しかしながら、従来は機械のプログラムのように正確な動きを重視しすぎるあまり、この環境への柔軟性が軽視されてきたと思われます。その結果として、自ら考えない、状況判断ができない子どもたちという声はスポーツ現場だけでなく社会的にも聞こえてきます。こうした反省に立ち、スポーツ心理学、特に運動の制御や学習に関する領域においては、環境と行為との密接な結びつき、すなわち環境に応じて行為が発現し、またその行為によって環境が変化するという循環的な関係が強調されてきています。したがって、スポーツ技能の指導において、指導者やコーチの役割は、選手に対して技能獲得方法を事細かに指示することではなく、練習環境をデザインすることによって選手自らが環境に適応する中で技能・行為を獲得することを目指そうというものです。こうした考え方をさらに発展させようとするのがこの研究グループ、EACL(いーくる:Environment-Action Coupling Learning: 環境‐行為結合学習)研究プロジェクトです。

ここでは、この練習環境のデザインを子どもたちのサッカースキル獲得に援用し、ゲーム感覚で遊びながら子どもたちが楽しく技術を獲得できるような、遊具であり、トレーニング器具であるといった練習用具の開発を目指します。具体的には、「もぐらたたき型パストレーナー」の開発です。これは、単に壁に向かってボールを蹴るだけでなく、ボールをパスする方向とそのタイミングが、移動していくランプによって呈示され、3ヶ所のいずれかにタイミングよくボールをパスすることによって得点が加算されるというゲーム型練習機です。サッカーのパスはただボールを蹴るキックだけでなく、いつどこへ蹴るかという状況判断が重要な要素となります。この環境を認知し、状況判断する能力を初心者・初級者の段階から遊びながら身につけさせることがねらいです。ランプの点灯タイミングによっていくらでも複雑に、あるいは難しくすることができます。小さな子どもだけでなく、ある程度サッカーをやってきた選手にも有効だと思われます。私たちは、こうした新しいコンセプトに基づいた練習機の開発に取り組んでおり、近い将来、小学校などで子どもたちがこの「もぐらたたき型パストレーナー」を使って練習することによって、状況判断力を備えた素晴しいサッカー選手育成の一助になればと思っています。