年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
高橋 謙也
氏名
高橋 謙也(たかはしけんや)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第17期生
エネルギー代謝から考える中距離種目のレース戦術

スポーツにおける中距離種目は、スピードと持久力の両方が要求される競技であり、レース戦略は、前半から積極的に飛び出す場合と後半に温存する場合の2つに大別される。本チャレンジでは、中距離種目を得意とするサラブレッドを対象として、ペース配分の違いがエネルギー代謝に与える影響について明らかにすることで、記録の向上やレース戦略の立案に貢献することを目的とする。

成果報告(2024年3月)

本チャレンジでは、中距離種目に相当する2分間の高強度運動時のエネルギー代謝について、中距離種目を得意とするサラブレッドを対象として検討した。具体的には、前半のスピードが高い前半型と後半にスピードをあげる後半型の2つのペース配分について検討した。酸素を利用したミトコンドリアによるエネルギー産生は、ペース配分によらず同じように行われる可能性が示唆された。前半型では後半型と比較して、骨格筋グリコーゲン濃度が大きく減少し、血中乳酸濃度が大きく上昇した。これらの結果は、総運動時間や量が同じであっても、ペース配分によって、高強度運動時の主要なエネルギー源である糖の利用量が異なる可能性を示唆している。各個体の骨格筋代謝能力とエネルギー代謝の関係性はみられなかったものの、ペース配分を立案するうえで重要な代謝データを取得できたと考えている。現在、得られた成果を論文としてまとめ、査読を受けている。

スポーツチャレンジ研究助成(基本):第16期生
高強度インターバル運動時の乳酸代謝を探る

乳酸は、高強度運動時に産生される代表的な代謝産物であるが、エネルギー基質としてミトコンドリアで酸化されることがこれまでの研究によって示されつつある。本研究では、休息時間の違いが、高強度インターバル運動時の骨格筋乳酸代謝に与える影響ついて、非常に高い運動能力を有するサラブレッドを対象として検討し、骨格筋のエネルギー代謝に関する基礎的な知見を得ることを目的とする。

成果報告(2023年3月)

本チャレンジでは、高強度インターバル運動時における休息時間の違いが、乳酸代謝に与える影響について、高い運動能力を有するサラブレッドを対象として検討を行った。休息が長い条件では、運動を繰り返しても血漿乳酸濃度の上昇率および血中酸素飽和度の減少率に有意な変化はみられなかった。一方で、休息時間が短い条件では、運動を繰り返すごとに乳酸濃度の増加率が低下し、血中酸素飽和度の減少率が上昇した。メタボローム解析により、骨格筋の代謝基質を網羅的に測定したところ、乳酸および解糖系中間代謝基質の増加量は、休息時間が短い条件と比較して、休息時間が長い条件で大きかった。これらの結果は、インターバル運動時の休息時間を短縮することで、乳酸産生によるエネルギー産生の貢献度が低下し、ミトコンドリアによる酸素を利用したエネルギー産生が上昇する可能性を示唆している。現在、得られた成果をまとめ、論文執筆を進めている。