スポーツチャレンジ賞
歌うという行為が人々の心を暖かくする

活動開始時に製作したスクラムユニゾンプロジェクトの紹介ポスター。結果的に、日本全国に広がる大きなムーブメントとなった
そして迎えた9月20日の開幕戦、日本は初戦の相手ロシアを撃破し、そこから日本全土はとんでもないラグビー熱に包まれることになる。
日本が1勝するたびにテレビの視聴率は跳ね上がり、ニュージーランドが試合前に披露するハカを小学生が真似し、ラグビーの根底に流れるノーサイドの精神性を人々は称賛し、スタジアムでも、パブリックビューイングの会場でも、街中のパブでも、誰もが肩を組んで自分の国の国歌を歌い、その他の国の国歌も手元にある歌詞カードを見ながら歌った。そして、歌うことで選手たちとシンクロし、より深く試合の中へと入り込んでゆけた。
村田や田中が試合会場の外でゲリラ的に歌いだすと、たくさんの人々が集まってきて一緒に歌い始める。警備員が、一箇所に立ち止まらないでください、と注意しにくるから、その集団は歌を歌いながら行進を始めることになる。

「毎回何が起こるかわからないんですけど、その毎回起こるわからないことがとても感動的でしたよ」
と、橘田はその光景を思い出して微笑む。
「最初は、他の国の国歌なんて歌わないわよ、って言ってた人たちが、そのうち、1枚ちょうだい!って、私が現場で配っていた歌詞カードを持っていくんです。ほんとにびっくりしましたね」
と、丸岡はその光景を思い出して微笑む。

それがたとえ国歌という堅苦しい呼び名の歌でさえ、歌うという行為がこんなにも人々の心を暖かくする。人と人とをつないでゆく。
つまるところ、2月のあの朝、廣瀬の中で閃いたアイデアは100%正しかったわけだ。
「僕自身は、こんなことができたらいいよな、って言い始めただけで、途中でテレビドラマに出てしまったりして、実はあまり何もやっていないんです、笑。スクラムユニゾンの活動が成功したのは、チームのみんなが頑張ってくれたおかげです。そしてもちろん、一緒になってこのプロジェクトを支えていってくれた人たち、声を出して歌ってくれた人たちにも心から感謝しています。今回はラグビーでしたけど、まだまだこれからも他のスポーツでもこの活動を続けていけたらいいですよね」
(廣瀬俊朗)
<了>
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