スポーツチャレンジ賞


第12回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞奨励賞は、Scrum Unison(スクラムユニゾン)の7人のメンバーに贈られることとなった。
元ラグビー日本代表廣瀬俊朗の閃きから始まった彼らの活動は、大会に参加する日本を含めた20の国と地域のアンセムをみんなで覚え、それを歌うことで海外からのファンや選手をもてなそう、という斬新なもの。
大会の盛り上がりとともにスクラムユニゾンの活動は大きなうねりを起こし、スタジアムでも、あるいはパブリックビューイングの会場や繁華街のパブでも、人々は大きな声で対戦国同士の国歌を歌い、ラグビーの試合だけでなく、「ノーサイド」というラグビーカルチャーを大いに楽しむこととなった。
そうだ、国歌を歌う、っていうのはどうだろう。
2019年2月上旬のある朝、廣瀬俊朗はふとそんなことを思いついた。
ラグビーワールドカップ2019は8ヶ月後に迫っていた。
どうやったら特別な大会にすることができるのだろうか。そのために自分は何をできるだろうか。廣瀬はしばらく前からそのことを考えていた。

一度大会が始まってしまえば、日本全土がラグビーで盛り上がるのはわかっている。しかしそれだけでは物足りない。日本で、そしてアジアで初めて開催されるこの特別な祝祭を、日本人はもちろん、この国を訪れる世界中のラグビーファンにも心から「素晴らしかった」と賞賛され、記憶されるような大会にしたかった。
ラグビーを始めたのは5歳の時、そこからはずっとラグビーとともに成長してきた。大阪の北野高校から慶應義塾大学、卒業後は東芝ブレイブルーパス、そして日本代表でもプレーした。廣瀬はその際立ったキャプテンシーで誰からも尊敬を集める男だった。
現役を引退したのは3年前だ。選手として自らのプレーで盛り上げることはもうできないが、グラウンドの外からでもきっと力を与えられる、という確信はあった。諦めない心とハードワーク、現役を引退しても彼の人生における軸は変わらなかった。
みんなで参加国の国歌を歌えば、外国からの選手やファンをもてなすことにもなるし、みんなで楽しみ、盛り上がることにもなる。国歌を通じて、それぞれの国の文化にも興味を持てる。
そのアイデアが閃いたベースには、彼自身が日本代表の一員としてプレーしたスコットランドでの試合の経験があったのかもしれない。試合前の国歌斉唱、スコットランドのファンの歌声は、それまでのラグビー人生で体験したことのないような感動を廣瀬に与えてくれた。
「海外の試合で、現地にいる日本人が君が代を歌ってくれたり、その仲間の外国人も一緒になってサポートしてくれた時は、本当に嬉しかったんです。スポーツを通して、皆が一つになっている。僕自身、試合に向けてのモチベーションがとても上がりました。」
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