スポーツチャレンジ賞

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YMFS SPORTS CHALLENGE AWARD SPECIAL CONTENTS

Scrum Unison(スクラムユニゾン)

ラグビーと音楽を繋ぐ。田中美里、村田匠

田中美里

廣瀬が最初に連絡を取ったのはシンガーの田中美里だった。

田中の父は廣瀬と同じく慶應義塾大学ラグビー部出身で、86年に大学選手権を制覇した時の栄光のメンバーの一人である。その後東京ガスでもプレーを続けた生粋のラガーマンだった。

そんな父の影響で彼女は幼い頃からラグビーというスポーツとその精神に触れて育った。音楽の道に進んでからも、自ら積極的にラグビーが大好きであることをアピールし、ラグビーに関連する仕事をこなしてきた。ラグビー関係のイベントでMCをやることもあったし、日本代表の試合で君が代を斉唱したこともあった。

「当然私の中では、2019年の RWCを、音楽を通して私なりに盛り上げていきたい!という気持ちがありました。けれどどうやったら音楽とラグビーが繋がるのか…その答えがなかなか見つけられないでいたんです」

廣瀬から、参加国の国歌をみんなで歌って盛り上げたいんだけど、という相談の連絡が入った時、田中は一瞬でラグビーと音楽が繋がるイメージが持てたのだという。そして、世界とも繋がる事ができる。

そうか、国歌とラグビー、その手があったんだ!

村田匠

田中に続いて、廣瀬が連絡を取ったもう一人のミュージシャンは、バンド「カルナバケーション」のリーダー、村田匠だった。

NHK『おかあさんといっしょ』の‘うたのおねえさん’だった母親の影響で、村田は子供の頃から音楽とともに育ち、早稲田大学に入学すると自らのバンドを結成した。彼自身にはラグビーのプレー経験はないが、2歳年下の弟、村田毅は慶應義塾大学ラグビー部を経て、今現在はジャパンラグビートップリーグの日野レッドドルフィンズでプレーしている。2015年にはラグビーワールドカップ日本代表のバックアップメンバーにも選ばれたほどの選手である。

そんなバックグラウンドもあり、村田は自ら率いるカルナバケーションとともに、ジャパンラグビートップリーグやラグビー番組の楽曲などを担当するようになった。そして田中美里同様、4年に一度のラグビーの祭典に何らかの形で関わることが出来ないか、と模索していたところだった。

「そこにいきなりトシさんから連絡が来たんです。国歌を歌って盛り上げたいんだ、って。断るっていう選択肢はないですよ。すごく興味を惹かれたし、まず何より、あの廣瀬俊朗からの依頼を断れるわけもないじゃないですか、笑」

渋谷のカフェで廣瀬と田中の二人に会い、最初の具体的な打ち合わせを終えると、村田は早速動き始めた。

写真提供:スクラムユニゾン

それぞれの国歌のパブリックドメイン(著作権)を調べ、外国語の歌詞を誰でも口ずさめるようにカタカナ化し、現地の言葉がわかる人間にチェックをしてもらい、歌詞の意訳を作り、音符化し、音楽家の仲間の助けを借りてピアノの伴奏を録音してゆく。

正直なところ、このプロジェクトが一体どういう方向へと動いていくのかは全く予想できなかったが、一つだけ明確なことがあった。

「トシさんは僕の中ではラグビー界のレジェンドですから、この人が始めたプロジェクトをスベらせるわけにはいかないな、と」

<次のページへ続く>



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