中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2012年11月3日

平成24年度スポーツチャレンジ助成 第6回目中間報告会を実施しました

平成24年度スポーツチャレンジ助成 第6回目中間報告会を実施しました

11月3日(土)、今年度の第6回目となる中間報告会を東京・丸の内で開催しました。この日は、研究チャレンジャー第6期生の角川隆明さんと福谷充輝さん、第3期生の永見智行さん、第4期生の稲葉優希さん、第5期生の樋口貴俊さんと、体験チャレンジャー第6期生の小野塚隆さん(ラグビー審判/指導者)、湯浅菜月選手(エアライフル)の7名が出席しました。

自身の競泳ワールドカップ出場を目前に控えた角川さんは「泳パフォーマンスに影響する流体力学的研究」の進捗を、福谷さんからは「身体運動中のアキレス腱長の動態を解析する研究」について、動画を織り混ぜながらの報告がありました。

昼休みには、カナダで開催されたショートトラック(スケート)のワールドカップを終え帰国したばかりの酒井裕唯選手(体験チャレンジャー・第6期生)が結果報告のために参加。合わせて2014年ソチ五輪での日本女子初のメダル獲得に向けた熱意、競技の特色や見所、11月末に迫った名古屋大会への抱負についても話してもらいました。

午後は永見さんからスタート。第3期生時代に取り組んでいた「野球の投球ボールの特性」の研究を踏まえ、新たに取り組んでいる「変化球の回転軸の特徴」について報告がありました。続く樋口さんも、従来取り組んでいた「野球打撃前のウォーミングアップ法」の研究をさらに進化させ、「視認能力」に焦点をあてた研究の進捗を話してもらいました。稲葉さんからは「アスリートが素早い動きをする場合の身体重心と足圧中心点との差異」についての報告がありました。

体験チャレンジャーの小野塚さんからは、日本でのラグビーフットボールの女子レフリー育成を目指した活動の進捗、湯浅さんからは試合の結果報告や新たなチャレンジ、今後の具体的な計画について発表してもらいました。また今回の質疑応答では、専門領域が大きく異なる体験と研究チャレンジャーが出席していたこともあり、さまざまな角度から意見が出され、双方にとって貴重な時間となったようです。



参加いただいた審査委員

浅見審査委員長、伊坂審査委員、綿貫審査委員、事務局


角川 隆明(第6期生)

競泳選手の競技力向上に向けた流体力学的な泳パフォーマンス評価法確立への試み


角川 隆明氏本研究は泳いでいるときの身体に生じる流体力を定量的に評価し、競泳選手のパフォーマンスとの関連を明らかにする試み。キックで生じる流体力を定量的に評価する方法が確立されていないなか、今回はキックによる推進力がポイントとなる平泳ぎを対象とした。この半年は、泳者が前進する際に発揮する力と、足部の圧力分布から推定した足部流体力の関連を人間の泳動作を対象として調査した。11月以降は、ロボットを用いた実験を行い推定値の妥当性、信頼性、誤差を確認する。またロボットを用いた実験の結果をそのまま人間に適応することは難しいため、人間による検証実験も行い、選手、指導者にとっての有益な情報をフィードバックする方法として確立したい。

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福谷 充輝(第6期生)

身体運動中のアキレス腱長の生体計測法の確立 -スポーツ動作中のパワー発揮メカニズムの解明に向けて-


福谷 充輝氏関節の発揮パワーは、筋が力を発揮し、その力が腱を介して骨に伝わり生じる。従ってパワー発揮の仕組みは、動作中の筋と腱の動きを検証することで明らかになる。そこで本研究では、身体運動中のアキレス腱の長さを実測する方法を確立し、動作中の筋と腱の関係を検証、パワー発揮メカニズムを解明する。筋の長さ変化は超音波で確認できるが、腱の長さ変化はMRIを用いても静止時しか測定できない。そこでジャンプのような動的な動作中に腱の長さを実測できる方法を考案。MRIで得たアキレス腱長と、マーカーをアキレス腱に沿って皮膚上に貼付しビデオで収録したものを比較して検証した。結果、アキレス腱長はほぼ同じ値を示すことが確認できた。ただし、湾曲している皮膚上のポイントとアキレス腱の間には僅かな誤差も生じており、その咀嚼も含め下半期は妥協せず精度向上に努めたい。

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永見 智行(第3期生)

野球のボールの回転・軌道と投球動作の関係の解析


永見 智行氏第3期生のときは、野球での投球ボールの回転速度・回転軸角度と飛翔軌道との関係、それらと手・指を含めた上肢の動作・筋活動との関係を解析してきた。現在も、さらなる精度アップをめざして研究を継続している。飛翔軌道の相異は、スピード・ボール回転速度・回転軸等が影響するが、2012年は「変化球の回転軸の特徴」に着目。被験者はプロ野球選手5名、大学野球投手3名。スライダー、カーブなど直球に似た握り方の変化球と、フォーク、シンカー、チェンジアップなど直球とは異なる握り方の変化球を投げてもらいデータを収集し、ボールの回転平面の傾きの個人差を確認。握り方を変えることで、回転軸の向きを平面から変化させることが可能なことを確認できた。今後は投球動作を選手毎に解析し、さらに精度を高めたい。

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樋口 貴俊(第5期生)

活動後増強を用いた野球打撃前のウォーミングアップ法の有効性


樋口 貴俊氏野球の打撃を司る要素は多岐に渡る。2011年は第5期生として「打撃前のウォームアップの影響」に着眼点をおき研究したが、2012年は「視認能力」に焦点をあてている。これは投球軌道における視覚情報の「量」と「打撃の正確さ」の関係を大学野球選手(打者)10名を被験者に検証した。ピッチングマシンから145km/hの直球を投じ、投球飛翔時間約0.45秒の間の、①視覚遮断なし、②ボール投射後0.15秒以降視覚遮断、③ボール投射後0.3秒以降遮断、によるミートの相異を高速カメラで検証。結果、投球軌道長の1/3の視覚情報でもボールをある程度打てること、インパクト直前の0.15秒間の視覚情報の有無は、打撃の正確性に影響がないというデータが取れた。この結果から、インパクト瞬間までボールを見ていても、スイングの修正には使えないであろうという考察が成り立った。今後は視認動作、スイングのタイミング、バットコントロールなどの実験データをもとに正確な打撃を実現させる打者の能力について検討していきたい。

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稲葉 優希(第4期生)

方向転換走の素早さに関するバイオメカニクス研究


稲葉 優希氏第4期生として、サッカーやバスケットボール等の球技スポーツにおける素早さを決定付ける要因を解析するため、素早い方向転換走を実現するストラテジーをバイオメカニクス的観点から解明する研究を行った。現在はその成果を踏まえ研究を深めていくため、被験者8名の協力を得て、素早い動作時の「身体重心」と「足圧中心点」との差異に着眼点を置き解析。運動方向を0〜90度まで5段階に分け分析した結果、アスリートはこの差異を意図的に作り出すことで始動の契機を作っていること、即ち予測的姿勢調節を行っていることが確認できた。また、倒立振子モデルを用いて踏み出し動作における移動方向が、動作のかなり早い段階で決定づけられていることを確認した。今後は片足だけでのデータを解析するなどして、研究の奥行きを深めたい。

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小野塚 隆(第6期生) ラグビー審判/指導者

世界にチャレンジできるラグビー女子レフリーの養成


小野塚 隆氏日本ラグビーフットボール協会の審判委員会では、2016年の五輪、及び2019年ラグビーW杯への日本人レフリー派遣を目標に育成を図っているが、国内での女子の大会や試合が少なく、女子国際レフリー育成が課題となっている。本チャレンジでは、2名の女子レフリーにポイントを絞り、4〜6月は研修会参加、全国高校選抜女子セブンズ、関東大学対抗Bセブンズ、関東大学オープン、日本協会セブンズフェスティバルなど多様なカテゴリーの体験を通じ、レフリーとしての成長を支援した。うち1名は昨秋に試合中(レフリー)の負傷でピッチに立てない状態が数ヵ月続いたが、この10月のトップリーグ「ヤマハ-ドコモ」戦では第3アシストレフリーを務めるまでに復帰した。今後もコンスタントにゲーム経験を重ね、世界を統括するIRB、アジア圏を統括するARFUとの交流を図ることで、女子レフリーのレベルアップをめざす。

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湯浅 菜月(第6期生) エアライフル/選手

エアライフルで2016年リオ五輪出場 〜400点満射への挑戦〜


湯浅 菜月選手リオ五輪のエアライフル競技出場を目指し、国内での強化に加えて、海外合宿・遠征を行い、世界における自分の位置・実力を把握しながら技術向上と精神面の成長を図る挑戦をしている。競技では肘を腰にあてて姿勢を保つため、競技用ウエア(コート)との相性が鍵のひとつ。来るべき五輪での規則改定に合わせ、今回はコートを変更し実戦に臨んだ。ドイツでの国際ジュニア大会、JISS夏合宿、ロシアでの世界学生大会などに参加してレベルを確認した。この11月からの3ヵ月は、2013年2月のドイツ遠征、3月の全日本選手権に照準を絞り体力づくりを行うとともに、常にリオの切符を目指した取り組みを続けていきたい。

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