2025年7月6日(日)
神奈川県三浦郡葉山町(葉山港管理事務所/森戸海水浴場)
7月6日、葉山マリーナ(神奈川県葉山町)を拠点に活動するYMFSジュニアヨットスクール葉山は、毎年恒例の「水辺の安全講習会」を実施しました。地元の葉山ライフセービングクラブの指導の下、水辺で発生する事故の危険性と、それに対応する救命措置に関する実践的な対応を学びました。

毎年、海開きの前後に行われているYMFSジュニアヨットスクール葉山の「水辺の安全講習会」は、今年で14回目を迎えました。
「講習の内容は基本的に毎年同じことです。子どもたちに興味を持ってもらえるような工夫はしますが、基本的な救命措置については同じことを繰り返し行っています」(葉山ライフセービングクラブ・加藤智美さん)。
実際に、講習中に「去年もやったことですけど、憶えていますか?」と問いかけると、毎年受講しているはずのコーチの中にも忘れてしまっている人もいて、毎年同じ講習を行う大切さがわかります。
午前中は葉山港事務所の会議室を借りて、心肺蘇生訓練用マネキン(通称・リトルアン)を使って心肺蘇生の手順からAED機器の使い方までの講習が行われました。高学年の子どもの中には「ああ、去年もやったよ」という気のない表情をしている生徒もいましたが、実際に胸骨圧迫の動作に入ると正しい姿勢で力強く身体を動かすなど基本に忠実な動きをするなど、毎年行っていることが身体に染みついているということがよくわかります。


こうした訓練では講習用のAEDが何台も用意されていますが、実際は事故現場の周辺のどこかに常備されているAEDを探して持ってこなければなりません。講習中の加藤さんは「この事務所のどこかに本物のAEDがあるはずです。今からどこにあるか探してきてください」とアドリブで要請すると、子どもたちは普段の記憶を頼りにあっという間にその場所を見つけてきました。訓練のための訓練にならないよう、常に実際の現場を連想させるような工夫をすることが重要だと加藤さんは言います。


午後に予定されていた森戸海岸の海水浴場での実地訓練は、猛暑による熱中症を考慮して午前中から始めることにしました。
「海水浴場で遊泳禁止にするかどうかの判断は、その時の風速や波、潮流などあらゆる状況を総合的に考慮して我々ライフセーバーが判断します。猛暑日が増えた最近は、気温も重要な要素になっていて、40度を超えるような気温の時は遊泳禁止どころか『帰って涼しいところに移動してください』というインフォメーションをしたこともあります」(加藤さん)


子どもたちは海で流されたときに、疲れにくく長く泳ぐことができる泳ぎ方や、ライフセーバーが使うレスキューボードでの海面移動、立ち泳ぎでの足づかいなど、ライフセーバーの基本的な技術を直接教わりました。「後ろ向きに泳ぐと全然疲れなくて、沖のブイから浜辺までラクに泳ぎきることができました」と、泳ぎがあまり得意ではないという子どもにも自信と安心が得られたようです。


一方、コーチたちは普段使用している自動膨張式のライフジャケットを持ち寄り、実際にどのように浮力体が膨張するのかの実地検査を行いました。「腰巻き式のモノはコンパクトで邪魔にならないから便利なんですけど、浮力体が膨らんだときに身体をきちんと浮かせるポジションになりにくいので、意識がないときは危険だということがわかりました」など、安全に関する新たな知見を得るという大きな収穫があったようです。


普段はヨットハーバーからヨットやレスキューボートで海に出て、そのままハーバーに帰ってくるという海との関わり方をしているジュニアヨットスクールですが、身体一つで海に入ったときにできることとできないことを、ライフセーバーの指導の下で安全に経験できたことが、この日の最大の収穫だったようです。毎週のように海に出ている彼らですが、時には全く違った角度から海を知ることで、彼らのシーマンシップ(海やフネに関する技術や知識のこと)は大幅に向上したはずです。