ジュニアヨットスクール葉山

セーリングスポーツを通して子どもたちの成長を
 2015年8月16日

大自然を肌で感じ取った3日間

初日は好天に恵まれ、南風に向かって大島をめざす生徒たち

ジュニアヨットスクール葉山では、8月16日(日)から18日(火)までの3日間の日程で、「大島外洋帆走訓練」を実施しました。

今年で6回目の開催となった今回の外洋帆走訓練には小学2年生から高校2年生まで17名のスクール生、およびクラブ生が参加。普段のトレーニングで使用している小型のセーリングディンギーとは異なる、大人数で運航するセーリングクルーザー「フッフール号」(加藤幸男オーナー)と「アドニス号」(大野稔久オーナー)に分乗し、往復約52海里(96km)の航海を成し遂げました。

今年の航海は特に復路で10m/sを超える強風となる場面もあり、スクール生たちは緊張感を強いられましたが、そのような中で、下級生の安全を気遣い、また、励ますなど、上級生がリーダーシップを発揮するシーンが多々見受けられました。

また、滞在した伊豆大島では、豪雨によって一部の予定を変更しつつも、三原山の周囲に広がる原生林でのトレッキングや、秋の浜でのシュノーケリングなど自然体験を満喫しました。

大海原での航海や大島での自然体験活動を通して、さらに夏休み期間中に行ってきた「水辺の安全講習会」、「浜名湖夏季合宿」などの活動を通して、生徒たちは、セーリングスキルを伸ばし、また、自然や海への理解を深め、仲間と助け合うことの大切さを感じ取るなど、たくましく成長しています。また、中学生、高校生たちは下級生たちのリーダーとしてコーチングスタッフを十分にサポートできる存在となりつつあります。

今後も当スクールではこうした「個の逞しさ」や「リーダーとしての資質」を身に付けることを目指し、総合的な水辺教育活動に取り組んでいきます。

参加者が感じた「大島外洋帆走訓練」

協力艇オーナー:大野稔久さん

協力艇として参加したのは6回連続となる「フッフール号」と4回目となる「アドニス号」。オーナーやサポートクルーたちのコメントに共通していたのは「いつまでもヨットを続けて欲しい」「卒業しても葉山マリーナに足を運んで欲しい」といった、子どもたちへの期待と海の仲間としての視線でした。「アドニス号」のオーナーであり、葉山マリーナヨットクラブの副会長も務める大野稔久さんは、往路はスキッパーとして、復路は伴走艇「フィアンコ」(島田潔オーナー)に乗船して子どもたちを見守りました。

「自分たち自身も大いに楽しめるところがこのイベントの魅力だと思っています。そして大人のヨット教室などと比べても上達が早いぐらいで、子どもたちが目に見えてたくましくなっていくのが嬉しい。個人スポーツの色が濃いシングルハンドヨットですが、葉山のジュニアは和気藹々としていてとてもいい雰囲気だと感じています。組織は異なりますが、同じマリーナで活動するジュニアセーラーの育成に、これからもクラブとしても何らかの形で協力していきたいと考えています」(大野さん)

プロセーラー:谷路泰博さん

世界最高峰のヨットレースとうたわれるアメリカズカップに挑んだニッポンチャレンジのクルーとして、その後もプロセーラーとして世界中でヨットレースを経験している谷路泰博さんが、アドニスのクルーとして子どもたちのセーリングをサポートしてくださいました。

「昨年、シンガポールのユースのナショナルチームのコーチに招かれ、結果を出せたこともあり、コーチングとジュニアやユースの育成に関心が高まりました。そなんときに大野さんから声をかけていただき参加することにしました。今回はハードなセーリングで、もしかしたら怖い思いもしたかもしれません。でも夏休みが終わって学校に行ったら、みんな、この日のことを自慢するのでは。そんな貴重な体験だったと思います。セーリング技術の向上だけでなく、人生を学べるようなところがあるのだと、このスクールに共感しました」(谷路さん)

リーダー&サブリーダー:写真左から
大野達也さん(中3)、宇佐美明日実さん(高2)、小屋英美理さん(高2)、廣瀬翔大さん(中3)

この外洋帆走訓練で高校生、中学生はそれぞれリーダー、またサブリーダーとして小学生たちのまとめ役を担い、セーリング中はもちろん、3日間の生活全般で活躍しました。リーダーの小屋さんは「リーダーとしてはほとんど何もしてないですよ。私はサブリーダーの方が合ってるかも」と笑いながら話しますが、宇佐美さんとともにセーリングのスキルを生かし、それぞれのクルーザーで下級生の安全に気を配りながら舵を取りました。サブリーダーの大野さん、廣瀬さんは男子が圧倒的に多い小学生たちの兄貴分として、生活面でもいなくてはならない存在。

「下級生たちはテンションが上がると何も言うこと聞かなくなって、5分前集合すらできない。まとめるのは大変でした。セーリングの面では、普段とは違って、チームワークが本当に大切なのだと実感しました。中学でもヨット部で活動してきましたが、シングルハンドでも風や海の情報を同じチーム同士で伝え合うなど、チームワークが大切な場面があります。こうした体験をこれからも生かして生きたいですね」(廣瀬さん)

保護者:戸田健さん

小学3年生の男子生徒の父親、戸田健さんは、往復ともにサポート艇「フィアンコ号」に乗艇し、この外洋帆走訓練に参加。

「一緒に海を走ってみて、改めて過酷なスポーツなんだなと実感しました。たとえばサッカーではボールを与えればすぐにでも始められるけど、ヨットは準備の段階から、協力しながらでないと始められない。今回は協力しながら、無事に帰ってこれたことで、本人にとって大きな喜びになっていればいいな、と思います。マリーナに戻って母親に会ったとき、いつになくよそよそしい態度だったんですが、少しは成長したのかなと感じました」(戸田さん)