ジュニアヨットスクール葉山

セーリングスポーツを通して子どもたちの成長を
 2010年8月27日

往復52海里の航海と離島での野外活動を体験!

絶好の風を受けて相模湾を航海する生徒たち
絶好の風を受けて相模湾を航海する生徒たち

夏の大海原を走るセーリングクルーザー。南から気持ちの良い風を受け、美しい追い風用のセールが音を立てて洋上に開きました。クルーの子どもたちは互いに声を掛け合いながら、懸命に舵やシート(セールを操作するロープ)を操作し、全長13メートルほどの大型クルーザーを操ります。今年度の「ジュニアヨットスクール葉山」自然体験活動の第3回目となる伊豆大島への外洋帆走訓練は、往復52マイル(約96km)の外洋航海、そして離島でのキャンプや海浜探索などの野外活動を通して、個々の生徒がリーダーシップやチームワークを発揮しながら、より幅広い知識と判断力、予測力などを身に付けることを目的に、8月21日、22日の1泊2日で行いました。当校では通常のスクールでは味わえないこれらの体験が、セーラーとしての、また人としての成長に向けた大きな足がかりになることを願っています。

26マイル(48㎞)沖合の伊豆大島を目指して

8月21日(土)の朝、葉山マリーナに隣接する葉山新港(神奈川県葉山町)に、セールバッグを担いだ子ども達が次々とやってきました。ジュニアヨットスクール葉山の自然体験教育の3回目のイベントとなる「伊豆大島外洋帆走訓練」出発の朝です。今回の外洋帆走での目標、そして安全面での注意事項の説明を受けた生徒たちはグループに分かれて2 隻のクルーザーに分乗、荷物を積み込みはじめます。

そしていよいよ出港。およそ26 マイル南方に浮かぶ伊豆大島を目指します。桟橋から手を振る見送りの保護者の方々の姿が見えなくなると、艇上にも少しずつ緊張感がただよってきます。出港当日の相模湾は風が弱く、子供たちが力を合わせてメインセールをあげた後は機帆走で一路、伊豆大島を目指しました。

航海中のヘルムスマン(舵手)は高校生のクラブ生が担当。セールトリマー(メインセール担当)、コックピット(セールを上げるハリヤード担当)、ナビゲーター(現在地の確認)は小・中学生のスクール生が担当。それぞれの仕事を、クルーザーを提供してくれた艇長の指示とコーチのサポートを受けながらこなしていきます。

またこれらのクルーワークだけではなく、艇上では大型本船の動きや浮遊物などに気を配るワッチの役目もこなしました。さらに海上では捕食魚から逃げまどう小魚のナブラや、それに群がる鳥山を発見して歓声を上げるなど、様々な自然の光景に出会うことができました。

およそ6時間の航海を経て目的地の大島・岡田港に舫いを取ると、生徒たちはこの日の宿泊地「大島町立海のふるさと村」に移動。ここではみんなで協力してテントを張り、夕食も自分たちで作りました。メニューを考えたのも2人の食事リーダーを中心とする生徒たちです。

「食事リーダーだといわれて、コーチと相談しながらメニューを考えました。前回の合宿で栄養のことなども教えてもらったので、バランスの良い食事を心がけました」(中1・川原さん)

慣れない火起こしや調理に時間はかかってしまいましたが、飯ごうで炊いたご飯と焼き肉、豊富な野菜の夕食は、コーチをはじめとする大人にも好評でした。

各人が役割を意識して40フィートのクルーザーを動かす

8月22日、大島のキャンプ場で朝を迎えた生徒達は、午前中、岡田港近くの海岸でインストラクターの指導のもと、シュノーケリングや海浜探索を体験。生物観察など洋上とは異なる海中の世界を目の当たりにしては感動し、磯場では滑りやすい場所の確認やフジツボなどで怪我をしやすい危険性なども学びました。

外洋帆走訓練のクライマックスは復路に訪れました。大島のブランケット(島によって風が遮られるエリア)を抜けると背後から吹く8〜10m/secほどの南風を、セーラーである生徒たちは誰に言われるまでもなく察知します。艇長の指示に従ってスピンネーカー(追い風専用のセール)を展開。そして生徒たちはウインチマン(ウインチでシートを巻き取る)とスピントリマー(スピンシート調整)の役割を交代でこなしていきます。風もあることでスクール生達の表情は真剣そのもの。眩しい空に広がるスピンネーカーの形状を見つめながら大声で互いに指示を出し合い、しっかりと自分の役割をこなします。

セーリングクルーザー<アドニス>のヘルムスマンは高校2年生のクラブ生・岡崎君が担当し、セーリング中はほとんどの時間、ラット(舵輪)から手を離すことはありませんでした。「ディンギーとはフィーリングがまったく異なるんです。舵を動かすタイミング、追い波へのフネの乗せ方など、慣れるのに大変でした」といいながらも、集中力を切らすことなく、さらにチームリーダーとして下級生の動きにも気を使いながらその任務を最後まで果たしました。

もう1隻のクルーザー<牛若丸>のヘルムスマンは、高校1年生のクラブ生・加藤君が担当し、<アドニス>と同じく大島から葉山までラットを持ち続け、チームリーダーとしてしっかりクルーザーの操船とチームへの指示を行いました。

午後4時30分。定刻通り2隻のセーリングクルーザーは葉山マリーナに帰港しました。今回ボランティアとしてセーリングクルーザーを提供し、艇長として協力をいただいた<アドニス>の大野稔久さんは「安全への配慮など気を使いましたが、子どもたちはとてもヨットを理解し、バランス感覚や動きもいい。私は大人のセーリングクルーザー教室のインストラクターの経験もありますが、日頃から葉山で小型ヨットを経験しているこの子たちの方が、大人より数段早く操作を理解している」と驚いた様子。

同じく<牛若丸>のオーナー・加藤幸男さんは「このクルージング1回だけでチームワークとか仲間と助け合う気持ちの育成など、成果がすぐに現れるものではないと思いますが、それでも生徒たちにとって素晴らしい体験になったでしょう。生徒たちは普段シングルハンダー(一人乗りヨット)に乗っていますが、将来ダブルハンド(2人乗り)や大型クルーザーに乗るときに今回の体験の意義を思い出してくれるのでは」と期待を寄せていました。

この夏、スクール生たちは7月18日の安全講習で命の大切さを学び、危険を知ることで自分の命を守る術を知り、8月9日(野尻湖合宿最終日)のトレッキングでは仲間と協力することの大切さ、チームビルドを学び、さらに今回は、大型クルーザーで葉山から伊豆大島をセーリングで往復し、大島でのシュノーケリングでは水中に広がる洋上とは異なる世界を知りました。

日常とは異なる環境で行ったこれらのイベントは、普段以上の力を発揮する生徒たちの新しい姿を数多く目にするなど、生徒たちのみならず、コーチをはじめとするスタッフにとっても意義のあるプログラムとなりました。

この秋、当校の活動場所である葉山マリーナでは、一回りも二回りも逞しくなったジュニアセーラーたちの姿を目にすることができそうです。

今年行なった3回の「自然体験活動」では、多くの関係者の方々から多大なご理解とご協力をいただきました。おかげさまで、子どもたちも素晴らしい体験をすることができました。ご協力いただいた関係の皆様方に、心より御礼を申し上げます。

<水と安全講習>(危険を知って安全を知る) 7月18日

内閣府特定非営利活動法人 日本ライフセービング協会および公認指導員の皆様、ダイビングスクールインストラクターの皆様、国立大学法人 東京海洋大学海洋科学部の皆様

<黒姫高原トレッキング> 8月9日

野尻湖「吉野家」旅館の皆様、信州・信濃町森林ガイド(セラピートレーナー)の皆様

<大島外洋帆走訓練> 8月21〜22日

「牛若丸」オーナー 加藤幸男様、「アドニス」オーナー 大野稔久様、東京都大島町役場(教育委員会)
の皆様、大島岡田港漁業協同組合の皆様、「うみのふるさと村」村長様、和光マリンインストラクターの皆様、(株)葉山マリーナー 様、第三管区海上保安本部横須賀海上保安部 様、ヤマハ発動機(株) 様