中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2026年10月18日

2026年度 第20期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

2026年度 第20期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

10月18日(日)、2026年度第4回目の中間報告会を東京・日本青年館で開催しました。今回は体験チャレンジャーの角谷太樹さん(体操)、研究チャレンジャーの太田一岳さん、今井彩乃さん、成昌奐さん、永原悠利さん、牧野晃宗さんの6名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を振り返るとともに、下半期の活動計画について発表を行いました。

参加いただいた審査委員(敬称略・五十音順)

伊坂忠夫審査委員長、杉本龍勇委員、片山敬章委員、瀬戸邦弘委員、増田和実委員

2026年度 第20期生スポーツチャレンジ助成 第4回中間報告会を実施しました

太田一岳(研究)
太田一岳(研究)

「爆発的筋力は遠隔部位の冷却により向上するか」というテーマで、その解明にチャレンジしている。爆発的筋力とは、短時間で素早く発揮される筋力であり、スプリントや転倒回避などに重要な能力。これまでの研究では、運動する部位を冷却すると爆発的筋力は低下する一方、神経活動は高まることが分かっている。そこで、手足など遠隔部位の冷却によって神経活動を促し、爆発的筋力を高められるのではないかと考え、健常成人15人を対象に実験を行った。その結果、遠隔部位の冷却による爆発的筋力や運動神経活動への一貫した影響は認められなかった。一方、冷却に対する反応には個人差があり、交感神経活動の変化と運動神経の活動開始時間に部分的な関連が見られた。今後は、この関係が生じるメカニズムを解明するとともに、学会発表や論文執筆を通じて研究成果を発信し、筋力向上に向けた新たなコンディショニング法の開発につなげたいと考えている。

角谷太樹(体操)
角谷太樹(体操)

2028年ロサンゼルスオリンピックで団体メンバーに入り、団体と個人総合で優勝することが目標。今年は肩のけがの影響で全日本個人総合選手権では32位となり、NHK杯出場を逃した。リハビリと技の回復に追われる中、指導者の助言をきっかけに、自分本来の持ち味であるEスコア(演技の美しさや正確性を評価する得点)を見つめ直した。練習量を増やせるまでに回復すると、着地の安定性も向上し、国民スポーツ大会では4月の大会から得点を大きく伸ばした。今後は12月の全日本団体選手権で順天堂大学の表彰台獲得に貢献するとともに、跳馬では技の難度を上げ、3回ひねる「ロペス」に挑戦する。技の難度を高めながらも、自分の強みである美しい演技を磨き、2028年の目標達成を目指す。

今井彩乃(研究)
今井彩乃(研究)

本チャレンジでは、競泳選手を対象に、自発的低換気(VHL)を用いた低酸素トレーニングの効果を検証する。VHLは、運動中に呼吸を止めることで血中酸素濃度を低下させる方法であり、人工的な低酸素設備を必要としない利点がある。一方、筋肉への低酸素刺激が十分に生じるかは明らかになっていない。そこで、競泳選手12名を対象に、VHL条件と通常呼吸条件で15mの全力板キックを16本行い、血中酸素飽和度や筋酸素動態を比較する。予備実験では、VHL条件で血中酸素飽和度が約90%まで低下し、呼吸筋の酸素レベルにも変化が見られた一方、脚の筋肉では条件間の差が確認できなかった。今後はVHLの練習機会を設けたうえで本実験を実施し、得られたデータから筋肉への低酸素刺激を検証する。最終的には、競泳におけるVHLを活用したスプリントトレーニングの確立を目指す。

成昌奐(研究)
成昌奐(研究)

運動によって増加する乳酸は、エネルギー産生の副産物ではなく、細胞に働きかけるシグナル分子としても機能する。今回は、乳酸がヒストンラクチル化という修飾を介して、遺伝子発現を制御する仕組みに着目した。27種類の細胞を用いて調べた結果、生理的な濃度の乳酸によって、骨、軟骨、骨格筋、心筋の細胞で特定のヒストンラクチル化が誘導されることを確認した。さらに、その誘導には特定の酵素と二つのシャペロンタンパク質が関与し、圧力や振動などの機械的刺激によってシャペロンの発現が高まることも分かった。機械的刺激と乳酸を組み合わせることで、低濃度の乳酸でもラクチル化が促進される可能性が示された。今後は、関連する遺伝子の解析を進めるとともに、これらのシャペロンを欠損させたマウスを用いて、運動能力への影響を検証する計画。

永原悠利(研究)
永原悠利(研究)

本チャレンジでは、筋の特性や走動作の個人差を統合し、ランニングエコノミーの評価精度を高めるとともに、傷害予測につなげることを目指している。ランニングエコノミーとは、一定の速度で走る際のエネルギー消費量を示す指標であり、競技力の向上だけでなく、健康増進や運動習慣の形成にも関わる。従来のシミュレーションモデルでは、代謝コストの絶対値を高精度に予測することが難しく、その要因として筋の形態や筋線維組成などの個人差に着目した。現在は、マラソンを3時間以内で走る男性ランナー20人の走動作や呼吸、筋活動のデータに加え、MRIによる筋体積や筋線維特性の解析を進めている。地面反力の推定や大量の画像データの処理が課題だが、年内に解析を進め、年明けからシミュレーションを開始して3月の最終報告を目指す。将来的には、個人に適した効率的で安全な走動作の獲得につながるトレーニングの開発を目指す。

牧野晃宗(研究)
牧野晃宗(研究)

私は、ランニングに伴うメカニカルストレスを力学的・生理学的な両面から評価し、疲労骨折などの傷害につながるメカニズムの解明を目指している。従来の研究では、力学的または生理学的な側面から個別に評価することが多かったが、両者の関係や、衝撃の大きさだけでなく身体への伝わり方にも着目する点が本研究の特徴。
これまでに予備実験を複数回実施し、60分間の連続測定に必要な環境整備や、データの同期・処理方法を確立した。男性4人を対象とした予備実験では、地面反力や脛骨・腰部の加速度を測定し、衝撃の大きさや周波数特性を分析するためのデータ処理を進めている。今後は、所属先の変更に伴う実験環境を整え、12月から本実験を開始する予定。2027年2月までにデータ収集を終え、その後解析を進めたうえで、学会発表や論文投稿につなげたいと考えている。