2024(令和6)年度

障害者スポーツを取巻く社会的環境に関する調査研究

ー 障害者スポーツ選手のキャリア、TV放送、選手認知度に着目して ー

2024(令和6)年度活動の全体概要

本年度は、2019年度から実施している障害者スポーツ選手のキャリア調査24名、パリパラリンピックに関するテレビメディアによる障害者スポーツ情報発信環境調査、パラリンピアンに対する社会的認知度調査の結果を報告しています。

各調査テーマの概要および結果

[第1章]障害者スポーツ選手のキャリア調査

調査目的

障害者がスポーツを実施する際の促進・阻害要因及びスポーツ実施の目的、実施状況を明らかにすることで、障害のある人のスポーツの普及・強化に関するデータを取得、具体的にどのような支援や施策があれば障害のある人のスポーツ実施に結びつくのかを明らかにしてく。

調査対象
  • これまでインタビューできていなかった聴覚障害のある選手も調査
  • 24名実施(肢体不自由の選手7名、視覚障害の選手9名、聴覚障害の選手8名)
調査結果
  • 聴覚障害のある選手からは、学校生活やスポーツ実施に際してコミュニケーションや情報保障に関する課題を挙げていた。
  • 手話ができる指導者及び活動時の情報保障の必要性が指摘されていた。
  • 聴覚障害に理解のある教員や指導者が存在する中で、健聴者と接点を持ちながらスポーツ活動を継続して競技力を向上させている選手もいる。

[第2章]テレビメディアによる障害者スポーツ情報発信環境調査

調査目的

パリ2024パラリンピック競技大会の開催に合わせ、障害者スポーツのテレビメディアでの露出状況(量的、番組傾向、トピックスなど)を把握し、影響度や障害者スポーツの社会的認知度を図る。

調査対象

東京都内での地上波デジタル(メインのみ)の放送環境を有するテレビ局の東京エリア放送分のデータをもとに、検索対象ワードとして、①“パラリン”、②“障害” AND “スポーツ”、③“障がい” AND “スポーツ” の3条件を設定しデータを抽出。

調査期間

過去5大会(北京大会、ロンドン大会、リオ大会、東京大会、パリ大会)の「開催前1か月間」「開催中」「開催後1か月間」

調査結果
  • 大会別の放送時間を見るとリオデジャネイロ大会は、北京大会の約4倍の放送時間となり、東京大会も同規模の放送時間であったが、パリ大会は東京大会の約3分の1に減少し、ロンドン大会と同規模の放送時間となった。
  • 過去5大会のテレビ局の合計放送時間は、「NHK総合」が最も多く、ついで「NHK教育」、「TBS」であった。大会別に20時間以上放送しているテレビ局は、パリ大会では「NHK総合」の1局であった。
  • 過去5大会の番組カテゴリー別の合計放送時間は、「ニュース/報道」が最も多く、ついで「情報/ワイドショー」、「スポーツ」であった。「スポーツ」の放送時間は、東京大会で急増したがパリ大会で半分以下に減少した。

[第3章]パラリンピアンに対する社会的認知度調査

調査目的

パリ2024パラリンピック競技大会開催後のパラリンピアンに対する社会的認知度、パリ大会の視聴状況、日常生活における障害者のスポーツ環境を調査。前回調査との比較を行い、変化、傾向、要因などを測定。

調査対象

全国の市町村に在住する20歳以上の男女2060名を対象とした、インターネットによるウェブ調査。

調査期間

2024年11月10日(日)~2024年11月11日(月)

調査結果
  • 最も認知度が高い選手は「小田凱人」(30.8%)で、ついで、「上地結衣」(21.9%)、「池崎大輔」(12.6%)、「木村敬一」(7.6%)、「伊藤智也」(7.3%)であった。
  • パリパラリンピックの観戦形態は、「テレビでニュースを観た」が44.6%で最も多く、ついで、「テレビで中継・録画を観た」(20.7%)、「テレビで特集を観た」(12.0%)、「SNS(Facebook、X(Twitter)、TikTok、Instagram等)でニュースを観た」(8.0%)であった。
  • 観戦した競技は、「車いすテニス」(44.8%)が最も多く、ついで、「水泳」(19.6%)、「車いすバスケットボール」(18.4%)、「開会式」(18.3%)、「車いすラグビー」(16.7%)であった。
  • 東京2025デフリンピックの認知度は、13.1%、愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会の認知度は11.8%だった。
  • 日常生活の中で「障害のある人がスポーツを行う光景をみることがある」は10.3%だった。2016年度調査(6.0%)、2021年度調査(9.4%)から徐々に増えている。
報告書に関するコメント
藤田紀昭
(日本福祉大学大学院 スポーツ科学研究科 教授/当財団障害者スポーツ・プロジェクト リーダー)

2024年度の「障害者スポーツを取巻く社会的環境に関する調査研究」ができあがりました。本プロジェクトが立ち上がってから13冊目の報告書となります。
第1章、障害者スポーツ選手のキャリア調査は6年目を迎え、インタビューした選手は100人を数えました。今年は新たに聴覚障害の選手にもお話を伺うことができました。第2章はパリパラリンピックのテレビ報道量の調査結果を記載しています。報道量はロンドン大会時と同程度。リオデジャネイロ大会、東京大会と比較すると少なくなっていました。しかし、パリパラリンピックを全く見なかったという人の割合が大きく増えたわけではないことから、人々の関心は維持されているのではないかと推測されます。第3章ではパラリンピアンの認知度について報告しています。国枝選手引退後、認知度が最も高かったのは車いすテニスの小田凱人選手でした。
ぜひ、関心のある調査の結果をご覧いただき、この間の障害者スポーツを取巻く社会的環境の変化をご確認いただき、ご意見ご質問等いただければ幸いです。

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はじめに・障害者スポーツ プロジェクト・目次ダウンロード
[第1章]障害者スポーツ選手のキャリア調査
障害者スポーツ選手のスポーツを始めるに至った経緯や活動状況について2024年度にインタビューした24名の報告。
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[第2章]テレビメディアによる障害者スポーツ情報発信環境調査
パリ2024パラリンピック競技大会開催前後での、障害者スポーツのテレビでの露出状況(放送時間、番組傾向、トピックス)を調査。
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[第3章]パラリンピアンに対する社会的認知度調査
パリ2024パラリンピック競技大会開催後のパラリンピアンに対する社会的認知度、大会の視聴状況、日常生活における障碍者のスポーツ環境を調査。
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附録・調査票・集計表ダウンロード