スポーツチャレンジ賞

スポーツ界の「縁の下の力持ち」を称える表彰制度

第9回 表彰式

第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞 表彰式を開催しました

第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

4月21日(金)、東京都千代田区の如水会館にて、「第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞 表彰式」を開催しました。

平成28年度は、ドイツで日本若手卓球選手の武者修行を支え続ける今村大成氏(功労賞)と、健常者トップ選手の指導からパラアスリート強化の現場に転身し、水泳・木村敬一選手とともにリオでのメダル獲得を目指したパーソナルコーチ・野口智博氏(奨励賞)を選出。表彰式では当財団の木村隆昭理事長から、それぞれ表彰状とメダル、賞金(目録)、記念品を贈呈しました。

選考経緯の説明に立った浅見俊雄選考委員長は、「今回も素晴らしい候補者の推薦をいただいたが、中でも受賞されたお二人のチャレンジと功績は、まさに縁の下の力持ちとして称賛されるべきもの。こうした素晴らしい人物を選考できたことは、選考委員会としても誇らしい気持ち」と挨拶。当日は大勢の来賓や関係者が祝福に訪れ、「国がスポーツ基本法をつくり、そうした中でスポーツ庁が誕生し、オリンピックやラグビーワールドカップを誘致した。スポーツを振興して、誰もがどこでもいろいろなスポーツができる社会を目指している。今回受賞されたお二人は、そうした社会のお手本となるような存在」と話された塩谷立氏(衆議院議員、当財団評議員)をはじめ、川田耕二氏(スポーツ庁健康スポーツ課課長補佐)や、岡崎助一氏(公益財団法人日本体育協会副会長、当財団評議員)、星野一朗氏(公益財団法人日本卓球協会専務理事)、櫻井誠一氏(公益財団法人日本障がい者スポーツ協会 日本パラリンピック委員会副委員長)らから祝辞が贈られました。

表彰式の終了後には受賞者を囲んで交流会も開かれ、「この表彰式は毎年感動する。この賞を受賞される方は、スポーツを実質的に支えていらっしゃる方ばかり」と話された岡崎氏の挨拶に続き、平岡英介氏(公益財団法人日本オリンピック委員会専務理事)の乾杯の発声により、なごやかなお祝いのひと時を過ごしました。交流会では、受賞者のチャレンジの軌跡を紹介するとともに、前原正浩氏(公益財団法人日本卓球協会副会長)、水谷信雄氏(リオ五輪男子卓球メダリスト・水谷隼選手の父)、松下浩二氏(一般社団法人Tリーグ理事)、大澤卓子氏(株式会社タマス代表取締役社長)、小石公二郎氏(公益財団法人日本障がい者スポーツ協会事務局長)、木村選手(リオパラリンピック水泳メダリスト)など、大勢の関係者から受賞者にまつわるエピソードなどが披露されました。

コメント

功労賞・今村大成氏 (株式会社タマス取締役、タマス・バタフライ・ヨーロッパ社長)

第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

このような場がとても苦手で、たいへん緊張しております。私は人生の半分以上をドイツで暮らしてきまして、そうした中で、ドイツでプレーしたいというたくさんの日本人選手と巡り合いました。その3人目が松下浩二さんで、彼はプロ選手としてドイツに渡ってきました。プロとしてチャレンジする彼の勇気を私自身が感じとり、面白半分でサポートしたのが始まりです。以来、仕事なのかプライベートなのか分からないまま、たくさんの日本人選手をお預かりしてきました。今でも20人ほどの日本人選手がヨーロッパでプレーしています。しかし、Tリーグが始まることで、これからはヨーロッパに行かなくても日本で強くなれる環境が整っていくものと期待しています。本日はありがとうございました。

祝福メッセージ|星野一朗氏 (公益財団法人日本卓球協会専務理事)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

今日は今村さんの人柄に合わせてフランクなお話をさせていただきます。今村さんには、これまでたくさんの中高生を生活面から支えていただきました。中には生意気だったり、だらしない選手もいたことでしょう。そうした意味で今村さんはデュッセルドルフの父であり、母でもあったんだと思います。おかげさまでリオでは男子が銀、女子が銅メダルを獲得することができました。これからも有望な若手選手をお預かりいただき、リオの躍進の続きをサポートしていただければと思います。

祝福メッセージ|前原正浩氏 (公益財団法人日本卓球協会副会長)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

日本卓球協会では、「チーム・ビハインド・チーム」という言葉を使って、チームの後ろにチームがいるということを伝えています。ともすると選手たちは自分の力だけで強くなったと思いがちですが、じつはドクターやマッサー、そして今村さんのような方が支えてくれている。それを忘れてはならないということです。5月末から、今村さんのおひざ元のデュッセルドルフで世界選手権が始まります。この世界選手権から2020東京に向けて金メダルを目指して頑張っていきますので、ぜひ卓球にご注目ください。

祝福メッセージ|水谷信雄氏 (リオ五輪男子卓球メダリスト・水谷隼選手の父)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

私はヤマハ発動機に勤務しておりまして、会社のホームページで今村さんがこの賞を受賞されることを知り、ぜひこの表彰式に出席して、あらためてお礼を申し上げたいと考えていました。隼は中2の9月からドイツに留学しました。そして今村さんに親代わりをしていただいたわけです。父親としては不安もありましたが、今村さんに面倒を見ていただいて5年間、みっちりとドイツで修業ができました。国際大会の会場で今村さんからドイツでの生活ぶりを聞くたびに、親として安心したものです。長い間、お会いすることができなかったので、こうして今村さんにスポットライトが当たり、再会できたことを心から嬉しく思っています。

祝福メッセージ|松下浩二氏 (一般社団法人Tリーグ理事)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

私がドイツ・ブンデスリーガに挑戦したのはちょうど20年前。すでに30歳でしたので、私にとっては「デュッセルドルフの父」というよりも「兄貴」といった存在でした。所属クラブを探しや契約、アパート紹介や電気・水道の手続きまで、あらゆることをすべて今村さんにやっていただきました。当時所属したデュッセルドルフは非常に強いクラブで、勝てば王様のように扱われる反面、負けるとボロカスに言われる。負けて落ち込んでいる時今村さんに連絡して、食事などをしながら愚痴を聞いてもらい、それでリフレッシュできたことが何度もありました。いま私はTリーグ(卓球新リーグ)で一生懸命やらせてもらっていますが、若い選手にとって海外で力をつけるというプロセスはやはり重要なこと。これからも欧州でチャレンジする若者のサポートをよろしくお願いします。

奨励賞・野口智博氏 (日本大学文理学部教授、木村敬一選手パーソナルコーチ)

第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

この度は身に余るような素晴らしい賞をいただき、推薦いただいた櫻井先生、そして選考いただいた浅見先生をはじめ、皆様に深く感謝申し上げます。このようなところに立たせていただけるのは、コーチとして挫折したときに「大学院でもう一度勉強しなおしたら?」と背中を押してくれた妻のおかげだと考えています。また、妻はマネージャーとして、木村選手と私を支え続けてくれました。普段はなかなか感謝を伝えられませんが、この場をお借りしてありがとうと言いたいと思います。2020東京に向かうにあたって、それぞれの競技の専門家がパラの世界に入ってきてくれることを願っています。我々もますます努力していく所存です。本日はありがとうございました。

祝福メッセージ|櫻井誠一氏 (公益財団法人日本障がい者スポーツ協会 日本パラリンピック委員会副委員長)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

私が障がい者の水泳に関わり始めた頃は、国際大会などもまだ交流の場というレベルでした。パラリンピックという名前はありましたが、アスリートという概念がなかなか浸透していかなかった。それが北京大会で大きく変わり、パラリンピックでメダルを獲ることが本当に難しくなりました。私たちは何とか日本の選手を強くしたいと、オリンピックのコーチの皆さんにも声をかけさせてもらいましたが、なかなか良い返事はいただけなかった。そうした中で、野口先生に木村選手の指導を始めていただいたわけです。野口先生は「まずはパワーだ」とおっしゃった。私たちは半信半疑だったけれども、リオ大会で各国の選手たちを見て、野口先生の指導が正しかったことを確信しました。こうして賞をいただくことによって、野口先生をロールモデルとして健常者の指導者の皆さんに支援していただけるようになることを願っています。

祝福メッセージ|小石公二郎氏 (公益財団法人日本障がい者スポーツ協会事務局長)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

木村選手のインタビューなどを聞いていると、非常に素晴らしい対応をされていまして、話もユニークでおもしろい。今日、野口先生の受賞のお言葉を聞いていましたら、木村選手の話のうまさは野口先生譲りなのだなと納得した次第です。また、ヤマハ発動機スポーツ振興財団には、まだ障がい者スポーツが社会に周知されていない時代から、こうした功績を称賛していただいていることをありがたく思っています。

祝福メッセージ|木村敬一選手 (リオパラリンピック水泳メダリスト)
第9回ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞

野口先生には私が大学に入学して以来、8年間お世話になっています。特にロンドンパラリンピックを終えてからの4年間は、みっちりマンツーマン指導をしていただきました。朝は6時半から練習が始まり、先生はその後、大学の授業や研究を行う。そしてまた夜は8時まで練習する。私の一日の練習量は5時間ですが、野口先生はいったい何時間働いているんだろう?と不思議に思っていました。東京2020は、選手として結果を残すだけでなく、最高の大会だったと世界に言っていただけるようなものにしたい。僕たち選手もそういう責任を感じながら取り組みますので、野口先生にもぜひお力添えをいただきたいと思います。