スポーツチャレンジ賞

スポーツ界の「縁の下の力持ち」を称える表彰制度
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第8回 奨励賞 中島正太

第8回 奨励賞 中島正太

先端技術を駆使したデータ分析でラグビー日本代表の躍進に貢献

熊谷工業高校、筑波大学ラグビー部ではSOとして活躍。卒業後は、セコムで1年、キヤノンで3年、トップイーストリーグの現場でアナリストとしての実績を積んだ。2012年、エディ・ジョーンズHCから指名を受け、ラグビーワールドカップ2015に挑む日本代表のアナリストに就任。ここから「世界最高の準備」に向けた4年間にわたるチャレンジがスタートした。

試合に向けて対戦チームへの対策を練り、トレーニングを通じて選手への落とし込みを行うコーチ陣に対し、アナリストの主なミッションはその前段階の準備を情報によって整えること。たとえば、ジョーンズHCから「理想的なアタックシーンの映像を2つ用意」といったリクエストが入れば、膨大なデータから意図に沿ったシーンを選び出し、数時間のうちに編集データを提供する。いつ、どこでも、またどんな要求にも即座に対応できるよう、2TBのハードディスク8台は常に手元にあった。

接点で人数をかける戦い方は、運動量で優位性を持つ日本が世界と戦うための生命線だった。しかし、二人がかりで相手を止めにいけば、そこにはディフェンスラインが手薄になるという危険も生まれる。そのリスクを回避するため、低くタックルに入り、すぐに立ち上がって3秒以内にディフェンスラインに戻ることが選手に義務づけられた。リロードと呼ぶこの動作に、さらにジョーンズHCは75%という具体的な達成率も定めた。その動作を判定するのもまた、アナリストの任務の一つ。「選手の評価にも直結する仕事。必要を感じれば『エディーと話してみるように』と選手に渡す映像データに一言を添えることもあった」という。

また、ジョーンズHCは、「サムライ・アイズ」という言葉を使って鋭い視線でピッチ全体を見渡し、スペースを衝いて一発で仕留める戦術眼や、ボールのないところでの質の高い動きを選手に求めた。これらを磨くためにラグビーポールの後方から広角撮影した映像が必要となり、導入したのがドローンだった。ドローンによる撮影データは手元のスマートフォンに即時送信され、練習終了後5分以内で各コーチに届けられた。

また、「扱いやすく、わかりやすいフィードバック」を目的に、その手法についても工夫を凝らした。クラウドシステムを利用し、タブレットでデータを提供することで、選手はどこにいても、たとえば宿舎のベッドの上でもトレーニングを振り返ることができた。

就任期間中、チームとしての活動は合計520日にも及んだ。日本代表はその長い戦いをワールドカップ初の3勝という結果で結実させた。「世界最高の準備」によって積み上げられたその経験は、日本スポーツアナリスト協会が2015年12月に開いた「スポーツアナリスティックジャパン2015」での講演により、幅広く日本スポーツ界の資産として共有されることになった。

第8回 奨励賞 中島正太

中島正太ラグビーワールドカップ2015 15人制日本代表チーム/男子7人制日本代表チーム アナリスト (1985年生・東京都出身)

エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)体制がスタートした2012年に、ラグビーワールドカップ2015に挑む日本代表チームのアナリスト(分析担当)に就任。以来、ジョーンズHC以下5人のコーチのもとで、「世界一の準備でベスト8をめざす」という目標に向け情報収集と分析に奔走した。ジョーンズHCらが求める情報の領域は多岐にわたり、日本代表チームの練習および試合の記録・分析はもちろん、世界中で行われているラグビーの試合映像、各国のチームや選手に関わる詳細データ、さらには試合会場やその気象情報に加え、時にはラグビー以外のスポーツの試合など広範囲なデータ収集・分析・提供を行った。また、より精度の高い情報をチームにフィードバックするため、ドローンを導入するなど最新の機器や手法も積極的に活用。ワールドカップで3勝を挙げ、世界に衝撃を与えた日本代表の躍進に「縁の下の力持ち」の一人として貢献した。なお、2016年リオデジャネイロオリンピックでは、7人制ラグビー男子日本代表チームのアナリストとして再び世界をめざす。