スポーツチャレンジ賞




マリオ・ビジーニとの約束

2015年4月20日、東京都千代田区にある如水会館には、妻木の受賞を祝うべく、日本サッカー協会会長 大仁邦彌氏をはじめ、大勢のサッカー関係者が訪れた。その中には、原博実、西村雄一、清雲栄純といった妻木にとっては馴染みの深い顔も数多く見受けられた。
「自分のこと以上に嬉しかったね。ああいう式って、一次会が終わったらみんなとっとと帰っちゃうけど、二次会になっても誰も帰んなかったでしょ。あれって、やっぱり妻木さんの人柄なんだよ」(原博実)

今現在、妻木充法は週3回、西葛西にある東京メディカル・スポーツ専門学校に足を運んで治療を行い、年に3回ほど上級者対象のゼミを開催している。他にも、自宅で古くからの患者さんたちを診ているが、以前に比べれば、生活のリズムはそう慌ただしくない。長い間苦労をかけてきた奥さんには、FIFAの仕事もブラジルのW杯が最後だ、とすでに伝えてある。
でもね、と妻木は困ったような微笑みを浮かべながら付け加える。
「FIFA仲間のマリオ・ビジーニとも、ほんとにブラジルで最後にしようって約束してたんですよ。でも今回、こういう賞を頂いたら、やっぱりもう少し続けなきゃいけないのかなあ、って考えるじゃないですか。おまけにマリオはマリオで、またFIFAの仕事やり始めてるらしいし」
きっと奥さんはため息をついて、がっかりするに違いない。
でも、FIFAに集う世界中の審判員たちにとっては、この上ない朗報である。

<了>
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