スポーツチャレンジ賞
自国開催のワールドカップをみんなに味わって欲しかった
YMFS2019年の日本代表はそれまでの日本代表に比べると目を見張るほど強かったです。

廣瀬2012年頃に僕が代表でプレーしていた時に比べると、2019年のチームはまずマインドが変わりましたよね。僕たちの頃はまだ、負ける、ということを前提に世界のトップレベルに挑んでいましたけれど、今のチームはもうそうではない。そのマインドの進化があって、それに伴ってスキルも成長していったように思います。
YMFS元日本代表のお二人としては、今回の日本代表の試合を観ながら、オレもここでプレーしたかったな、という感情は起こらなかったですか?
真壁うーん、僕はそこでプレーしている自分の姿はイメージできなかったです。もちろんギリギリまで頑張って、あと一年、もう一年、2019年のワールドカップ出場を目標にしてやっていたにもかかわらず、そこにたどり着けなかった悔しさはありました。でも、さっきも言いましたけど、初戦のロシア戦を観て、オレはもういいや!って、笑。
廣瀬そういう感情はほとんどなかったですけど・・・でも、ほんの一瞬だけ、ワールドカップを闘っているかっこいい代表の選手たちを観ながら、ええなあ、あそこに立ってるってどんな気分なんやろな、って思いました、笑。海外でのワールドカップだったら全く何も思わなかったでしょうけど、初めての自国開催、つまり本当に1回しかない出来事じゃないですか。そこに立ってたら、どんな景色が見えたんやろうな、って。

真壁ですよね。だからこそ、あの瞬間あのピッチに立っていた選手たちが、これからどんな風にその時間や経験のことを伝えていくのか、それが本当に大事だと思いますよ。あの人たちの言葉は全く重みが違いますから。
廣瀬中村選手、姫野選手、流選手、若手と呼ばれていた選手たちも、2019年の大会を経て、みんなずいぶんかっこよくなりましたね。
YMFSでは最後に、改めて今回の受賞のことについてお伺いします。今回の受賞が決まって、廣瀬さんはどういう感想をお持ちですか?
廣瀬自分たちの想いだけで始めた活動が色々な人に助けられて大きく広まっていったプロジェクト、それを「あれ良かったよ!」って公に褒めてもらえたってことが、本当に嬉しかったです。それと、この賞の評価基準、縁の下で支える、っていう点も、まさに僕たちの目指したところでした。僕たちは決して主役ではなくて、でももうちょっと喜びを広げたり、記憶に残る場を作る、そんなことに役立ちたいな、と。
YMFS真壁さんはどうでしょうか?
真壁今日一番難しい質問ですね、笑。せっかくそんな素晴らしい賞をもらったのだから、じゃあこれからはスクラムユニゾンのメンバーだけではなく、その活動に賛同してくれた周りの人も含めて、もっともっと広がっていってほしいなあって思います。選手にとって、温かく迎え入れてくれるのって本当にありがたいし、ここで戦っていいんだ、って気分にさせてくれるんですよね。みんなが自分の国の国歌を歌ってくれている、そういう風景って記憶に残りますからね。
廣瀬とにかく僕は、ワールドカップの雰囲気をみんなに味わって欲しかったんです。傍観するのではなくて、その雰囲気の一部分になるというか。隣の人が歌ってるなあ、じゃなくて、自分も一緒に歌っている。ちょっとだけ勇気のいることなんですけど、一度越えてしまえば次からはもう怖くない、ってことがあるじゃないですか。それはスポーツの世界だけのことではなくて、自分の日常の中でも役に立つ感覚だと思うんです。
真壁ほんとに驚きましたよ。スクラムユニゾンの活動ってこんなに広まってるの!って、笑。
廣瀬今年は新型コロナの影響で色々なことが中断しましたけど、スクラムユニゾンの活動で言えば、次のイベントに向けてさらに国歌のレパートリーも増えてますし、動画の収録も進んでます。オリンピックを意識してギリシアとか、ミクロネシア連邦とかの国歌も仕込んでます。
真壁ミクロネシア連邦って!笑
廣瀬イベントができないんだったら、その隙にどんどんできること進めてしまおう、って。そう考えれば、いい機会でしたよ。
真壁さすがリーダーですね!

<了>
写真=近藤 篤 Photograph by Atsushi Kondo
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