スポーツチャレンジ賞

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YMFS SPORTS CHALLENGE AWARD SPECIAL CONTENTS

TOSHIAKI HIROSE × SHINYA MAKABE
TOSHIAKI HIROSE × SHINYA MAKABE

違いを知ることが自分を知るきっかけに

真壁逆に、いろいろな国の国歌をそうやって意識して聞いたり歌おうとしたりすると、自分の国の国歌、つまり君が代にも一つの個性があって、これはこれで結構いいもんだなあって思えるようになってきますよね。

廣瀬スクラムユニゾンの活動を通じて、自国の国歌を意識するようになったり、あるいは相手国のことをより深く理解して、寄り添うっていうんですかね、そういう意識が芽生えたのはすごく良かったことだと思います。最初はまず、どうやって海外から来た選手やファンをもてなそうかな、ってところから始まったんですが、同時に、漠然とですが、違いを知ることが自分たちを知るきっかけになるんじゃないか、とも考えていました。君が代だけしか知らなければ、それだけでしかない。でもフランス国歌を知れば、そこにある違いはなんだろう?と考えるきっかけになります。

真壁でもやっぱり、おもてなし、っていうコンセプトがまず良かったですよ。おもてなしの方法って、なかなかわからないじゃないですか。それがああやって、相手の懐に思い切り入っていって。とても素敵なアイデアだなと思いました。自分が現役時代、ロンドンで日本代表のジャージを着て歩いている現地の人を見かけた時、めちゃくちゃ心が温まったんですよ。迎え入れてくれてる感覚っていうか。もちろん相手はこっちのことなんて知らないんですけど。

YMFS2019年大会、他に印象に残っていることはありますか?

廣瀬まずラグビーという共通言語でみんなが語れるようになりましたよね。ジャッカルとかいっても、あまりラグビーを詳しくない方にも通じるようになったじゃないですか。選手の名前も結構覚えていただいたし、ラグビーがもたらす幸せな瞬間、ということについても共通認識ができた気がします。

真壁僕は、大会が終わってから、街の中で日本代表のジャージを着た子供がその辺を歩いている、そんな光景にグッときました。それって、日本代表で戦うラグビー選手たちが憧れの存在になった、ということじゃないですか。あのジャージを着て遊びに行く子供なんて数年前はいなかった。子供だけじゃなくて、大人もそうです。ラグビージャージってなかなか私服で着られませんから!

YMFSラグビーの面白さ、なんでこの国でこれだけ長い時間伝わらなかったんでしょう?

廣瀬ひとつには、なかなか日常的に触れる機会がないですよね。

真壁引退してから思ったんですけど、ラグビーっていざやりたいと思っても、やれる環境が少ない。クラブチームを見つけるのも難しいですし、そもそもラグビークラブの数は少ない。ラグビーでもやるかと思っても、15人集めるのは大変です。しかもラグビーは基本的には企業スポーツです。

廣瀬個人的には、学校の部活というところからクラブ単位での活動も活発になり、ハイブリットになれば、この国のラグビーは成長できるように思います。ただ、ラグビーを教えられる人の数がまだまだ少ない、という問題はありますよね。サッカーや野球と違って、ラグビーは怪我のリスクが高い。なので、いい加減なレベルでは指導者になれません。

真壁ラグビーは他のスポーツと違って、痛いし、責任感を問われるし、ちょっと特殊な部分がありますよね。それがラグビーをやるメリットでもあるんです。でも個人的には、必ずしもラグビーでなくてもいいのかな、と。

廣瀬基本的には僕も同じ意見です。自分の打ち込めるもの、好きになれるものが見つかればそれが一番。ラグビーをやるメリットとしては、それぞれの人間にそれぞれの居場所があるというか、小さい人には小さい人が役に立つポジション、大きい人には大きい人の働けるポジションがある、ということを理解できるところじゃないですか。足が早くなくても、体が大きくなくても、力を出せる場所がある。

YMFSでも現実には、例えば意気揚々とグラウンドの中に出ていっても、真壁さんのような人が目の前に立ちふさがったら、これって勝負にならないじゃん、と思ってしまったりしませんか?

廣瀬勝ち負けだけにとらわれてしまったら、そうなります。でもラグビーの本質というのは、そこだけじゃないですから。

真壁あとは、ちょっとビジネスの世界にも似ているところがあって、どう考えても勝てそうにない相手に対して、じゃあどういう風に15人の力を組み合わせるんだ、と考える。それはスポーツを超えて、人生にも適応できる思考法だと思います。2019年の日本代表は色々な国の選手が集まった、本当に多様性のあるチームだったじゃないですか。その多様性からあんなに美しいパスワークを生み出せる、すごくいいなと思いました。

<次のページへ続く>



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