スポーツチャレンジ賞

ナショナルチームとヨハン・デビッド氏
YMFS新しくヘッドコーチに就任したオランダ人のヨハン・デビット氏と最初からコミュニケーションがバッチリだったわけでもないんですよね?
紅楳信用してもらえるようになるまで、彼が来日してから約6ヶ月くらいかかりました。最初は明らかに信じてもらえていなかったですね。体力測定なども全てオランダ人スタッフで行われていましたから。
黒岩オランダで測定をやりたい、とか主張していた時期もありましたよ。
紅楳こちらがどういう風に仕事をするのか、その姿を見せ続けることで、ああこいつらも大丈夫なんだな、と少しずつ認められていった感じですね。データの取り方、方法論に関しては、日本人の方が細やかだし丁寧なんです。
黒岩人と人との関係を築くには、それなりに時間がかかります。だからそう簡単に、はい、君はダメ、次の人、ともいかないんです。お互いに信頼できるようになって初めて、それは違うんじゃないか、という意見も言えるようになるし、耳を傾けるようにもなる。そこでようやくいい仕事ができるようになるわけですから。

紅楳ただし、自分を信頼してくれるどうかは、最終的に相手の問題です。こちらとしては、ただ粛々と自分のできることを見せ続けるしかないんです。内心は、この理論もちゃんと受け入れてくださいよ、ということは多々ありますが、何かがうまくいかなかった時、最終的に責任を負うのはヘッドコーチですからね。決定権が相手にあることはしっかりと理解した上で、自分のできることをやっています。
黒岩現状、結果はしっかりと出ているわけですから、科学サポートチームのデータや意見を、ヨハンは正しく判断し使えている、ということになると思います。
YMFSヨハンヘッドコーチは、ソチ五輪の後に創られた新たなナショナルチーム制度のリーダーとして招聘されたわけですが、これまで実業団や大学単位で行われていた活動を、ナショナルチームという新たな場に集約できたのは、やはり大きな出来事だったのですよね?
黒岩実業団が潤沢に資金を持っていた頃はそれでも良かったのかもしれません。互いの強烈なライバル心が、良いモチベーションにもなっていました。しかしバブルが崩壊すると、各企業はそれほど強化費を出せなくなり、以前ほどに合宿も組めなくなりました。こじんまりとなんとか活動しながらソチ五輪を迎え、いざフタを開けてみるとメダルはゼロ。だったらナショナルチームを組織しようという動きになったわけです。
YMFSそのナショナルチーム制度が功を奏したわけですね。
黒岩様々な意見がありましたけど、結果的には良い方向に進んでいます。実際、ナショナルチームに招待された若手選手たちにとっても、新鮮な環境なんだと思いますよ。1年目のシーズンで、みんなタイムがぐんぐん上がっていますから。
紅楳本当にそうですよね。今、全日本レベルのトップから20位くらいまでの選手たちのタイムは相当上がってきて、競争が激しくなっています。ナショナルチームという存在を意識して、可能性のある選手たちがいい意味でしのぎを削っているからなんだと思います。
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