セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

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第26回(平成30年) レースレポート

大会史上最多130艇のジュニア/ユースセーラーが出場

第26回セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

「第26回セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖」は、スポーツ振興くじ助成金を受けて実施されました。 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団(YMFS)では、3月23日(金)から25日(日)の3日間にわたり、静岡県立三ヶ日青年の家(浜松市)において「第26回セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖」を開催しました。

参加艇数は四半世紀のメモリアルイヤーとなった昨年の128艇を上回る130艇。2年連続で最多参加の記録を上回る盛況ぶりです。

本大会最大の特徴は、勝敗だけにこだわる単なるチャンピオンシップではなく、国内一流コーチを招いての直接指導およびレース後に行われる講習会など、セーリング大会では珍しい「学べるイベント」であることです。本格的なシーズンインを迎える春休み、最高のゲレンデである浜名湖で選手たちは心身ともに大きな成長を見せました。

期間 2018年3月23〜25日
会場 静岡県立三ヶ日青年の家(静岡県浜松市)
共同主催 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団、NPO法人静岡県セーリング連盟
参加艇 OP級・初級17艇/上級26艇、ミニホッパー級:8艇、レーザー4.7級:32艇、レーザーラジアル級:29艇、420級:15艇、FJ級:3艇

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絶好のコンディションの中、各クラスで熱戦を展開

本大会の最大の特徴は、元五輪セーラーなど国内一流のコーチを招聘し、ハーバーや海上での直接指導に加え、レース後に行われる各専門分野の講義等にあります。昨年までは3日間で最大9レースを実施するフォーマットで運営されてきましたが、今年は最大レース数を7レースに減らして開催しました。これは、レース後に行われる講義の時間をきちんと確保する狙いとともに、レースの合間にも積極的な指導が行われることを期待したものです。

今大会にはシドニー五輪470級男子代表スキッパーの浜崎栄一郎さん、アトランタ五輪レーザー級代表、シドニー五輪49er級代表の佐々木共之さん、レーザー協会強化副委員長の高橋昌威さんらのコーチ陣に加え、国内外で輝かしい実績を持つセーラーでありながら気象予報士の資格を持つ杉山武靖さんによる講義「セーリングと気象予報」を実施。これまでになかった内容の講座を盛り込み、新たな視点からセーリング競技を掘り下げる試みがなされました。また、ここ数年国内の主要レースで採用されるようになった「スマホでヨットレース」というGPS機能を利用したリアルタイムの位置表示システムが採用され、各チームのコーチや保護者は陸上に居ながらにしてレース状況を把握できるようになり、またレース後のコース分析により多くのことを学べる可能性が広がりました。

例年この大会では、3日間のうち1日は微風や無風の日があるのですが、今年は期間を通じてセーリングに最適な中〜強風が続いたうえ、晴天にも恵まれ、各クラスで実力者が順当に上位に食い込む結果となりました。

OP級

小学生および軽量の中学生が取り組むOP級は選手間のレベル格差が大きいため、2年前から初級/上級の2クラスに分けてレースが行われています。初級クラスでは、北海道の室蘭から初参加した鵜野環選手(中1)が、同学年の石井貴大選手を2点差で抑えて優勝。「強風は苦手だけど、今回は思ったより走れました。北海道は5〜10月までしか海に出られないので、この時期にレースができてよかった」と笑顔で語ってくれました。女子優勝は、元470セーラーの母親と元インターハイ王者の姉を持つ鈴木しおん選手(小4)。「風が強くても弱くても、自分の好きなように走ることができるヨットが大好き」と、そのDNAは見事に引き継がれているようです。 一方、全日本出場枠を狙うレベルのセーラーが集まった上級クラスには26艇が参加し、名門クラブの横浜ジュニアヨットクラブから出場した西村拓真選手(中1)が、1点差で横浜市民ヨットハーバージュニアクラブの鈴木海翔選手(中1)を退けて初優勝。「風のシフトや強弱がありましたが、それらをうまく利用することができたのが勝因だと思います」と冷静にレースを分析。女子優勝は福岡から来た市橋愛生選手(中1)。「風が強い方が好きなので、今回は気持ちよくレースができました」と、強風に強い選手が多い福岡のセーラーらしいコメントをしてくれました。

ミニホッパー級

1993年の第1回大会から採用されているクラスですが、すでにメーカーによる製造は停止されており、レースに使える艇体も年々減っている状況ですが、比較的新しい艇体を所有している山中湖中学校ヨット部から全8艇中7艇が参加。唯一、山中湖以外から参加した地元静岡の高橋果乃子選手(中2)が大接戦を制して初優勝。両親もセーラーだという高橋選手は、今回は母親が若い頃に乗っていた艇体を持ち込んでの出場。「今年に入ってからミニホッパーに乗り始めたんですけど、すごく楽しいフネです。風が強いのは苦手なんですが、なぜか優勝できちゃいました」。

レーザー4.7級

レーザーラジアル級とともに、世界選手権の代表選考ランキングの対象レガッタに指定されていたため、昨年(27艇)を上回る32艇が参加。優勝争いは、序盤から元尾帆斗選手(中2)と黒田浩渡選手(中2)の一騎討ちの様相。ライバルの猛追を振り切って元尾選手が初優勝。元尾選手は長崎からセールを手に新幹線で浜名湖にやってきました。「海面がフラットな感じは大村湾にも似ていて、大会2日目の風をうまく読むことができた」と分析。女子優勝は、全7レースをオールシングルでまとめ、男女総合でも4位に入った須田英実子選手(高1)。470級の世界チャンピオンを輩出した滋賀県の名門・膳所高校ヨット部に在籍しています。「昨年のインターハイは420級のクルーでしたが、これからはシングルハンダーに専念するつもりです。琵琶湖で乗っているので微風でシフトの多い海面が好きなんですが、今回は強風でもうまくシフトをつかむことができました」。

レーザーラジアル級

ナショナルチームレベルのセーラーが集まったレーザーラジアル級は、上位4艇がわずか5点差にひしめく大接戦となりました。混戦を逃げ切ったのは五輪セーラーを輩出した大阪の名門・清風高校ヨット部所属の水田隆文選手(高2)。「レベルが拮抗していたので、毎レース首位が入れ替わるような展開で気が抜けないレガッタでしたが、もの凄く楽しかった。レガッタの前日に行われた強化合宿では多くのことを学びました」と、この大会期間中の成長を語ってくれました。女子優勝は千葉ヨットビルダーズクラブジュニアの三浦帆香選手(中2)。中2ながら167cm/70kgの体格をいかし、強風シリーズを制しました。「そもそもあまり前を走った経験がなかったので、前の方でマークを回航した後にどうやったら抜かれないかとか、そういうタクティクスを知らなかった(笑)。身長はまだ伸びています」と大物の片鱗を見せてくれました。

420級

インターハイ種目でもある420級には、全国8つの高校ヨット部から15艇が参加。中でも圧倒的な強さを誇るのが愛知県の碧南高校と碧南工業高校の合同クラブである碧南セーリングクラブ。実は、昨年の10月に同クラブの艇庫が火災で全焼してしまったため、艇体以外のセールやマストなどが消失。OBやその他の援助を得て、今回なんとか出場にこぎ着けました。そんなOBたちの思いを受けて、優勝争いは同クラブの3艇による三つ巴。最終成績は同点ながら1位の回数の多さで澤井寛人選手/梶川璃久選手チームが優勝。同点で2位に甘んじた女子の岩月愛望選手/大須賀梨歩選手チームは、第4レースの出艇申告漏れで1点のペナルティを受けており、それがなければ優勝だったという悔しい準優勝。強風シリーズにもかかわらず女子チームの頑張りと、出艇申告漏れの戒めを込めて、今大会の荒田忠典メモリアル杯は彼女たちに贈られることとなりました。

FJ級

昨年のインターハイを最後に高校生レガッタの種目から姿を消したFJ級には、420級の艇体が足りなかった碧南セーリングクラブから3艇が参加。しかし、FJ級で優勝した岸下海渡選手/都築渉兵選手チームの思いは違ったところにありました。「自分たちは420が足りないからではなく、FJ級に乗りたかったんです」と語るのはヘルムスマンの岸下選手。「昨年、FJ級最後のインターハイに出場することができなかったので、FJ級最後のレガッタにどうしても出場したかった。優勝できて良い記念になりました」と熱い思いを語ってくれました。


大会の様子


スポーツ振興くじ助成金

第26回「セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖」は、スポーツ振興くじ助成金を受けて実施しています。