スポーツチャレンジ賞

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YMFS SPORTS CHALLENGE AWARD SPECIAL CONTENTS

TAKAO OCHI × MONIKA SERYU

驚きや感動を超えて。パラスポーツが持つ魅力とは

【対談】越智貴雄×瀬立モニカ フォトグラファーとパラアスリートの幸福な関係

越智今回の東京大会では22競技のうち半分以上を撮りましたが、勝ち切った選手、強かった選手は、確信に満ちているように見える選手が多かったように思います。スタートラインに立っているだけで、もう勝つことが見えている、そんな雰囲気がありましたね。男子のテニスで金メダルをとった国枝選手が、一番大事なものはという質問に、最後はやっぱりメンタルです、というニュアンスの返事をしていたのがすごく印象に残っています。スタートラインに立った時の感情や決意というものがやはり結果に反映されるのかな、と。

瀬立水泳男子100mバタフライで金メダルをとった木村敬一選手も、僕はタイムはよくなかったかもしれないけれどそのレースの中で一番金メダルをとりたいと思っていたから勝てたんだ、っておっしゃっていましたよね。

YMFSモニカさんは確固たるものを持ちきれていなかった?

瀬立私も周りの人から指摘されるのはまさにそこなんですよね。そして越智さんもやはりそうおっしゃるってことは、やるべきことは明確なんだなと感じます。今はもう一回、自分でもがき苦しんでみるのがいいのかなと思っていて、練習場所を含め全てを一から考え直しているところなんです。

YMFSお二人にとっては必ずしも100%完璧なパラリンピックではなかったかもしれませんが、限られた環境下でもやはり東京大会は人々の心にパラスポーツの存在を示すことができたのではないでしょうか。

越智パラリンピックは今、どんどんオリンピックに近づこうとしていますよね。商業主義、それが悪いことだとは思いません。ただ僕自身は、パラの魅力はやっぱりそこだけではない、と感じます。もちろん競技の部分で、人間ってこんなことまでできるんだ!という驚きや感動はあると思いますが、その感動を作り出している個の部分、つまり選手たちをもっとしっかり見ていきたいですよね。例えばモニカさんの場合なら、彼女が大宜味村の人々とどんなふうに繋がっていったのか、そういうところがもっと可視化されるようになってほしい。パラリンピックに出場した瀨立モニカ、ではなくて、瀨立モニカがパラリンピックに出場した、そんなふうに表現するべきだと思います。

【対談】越智貴雄×瀬立モニカ フォトグラファーとパラアスリートの幸福な関係

瀬立私は選手目線でお話しすると、パラのアスリートというのは、オリンピックのアスリートと比べると、練習でも、大会でも、一人では完結できません。どうしても周りの人たちのサポートは必要です。でもだからこそ、周りの人たちと繋がりながらもっと身近に感じてもらえるスポーツになれるんじゃないか、そこがパラならではの魅力であると思うんですよね。

越智パラスポーツっていうのは未来への希望とか人間の可能性とか、そんなものがたくさん散りばめられているものだと僕は信じていますし、そこがもっともっと世界に伝わればいいなあと願っています。

YMFSでは最後に、今回、ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ賞奨励賞を受賞した越智さんに、モニカさんからメッセージをいただけますか?

瀬立はい!まずは本当におめでとうございます。越智さんは選ばれるべくして選ばれた、私はそんなふうに思っています。一瞬で過ぎ去っていってしまうものを写真に撮る作業、越智さんはよく後世に伝えていく、って言葉を使うんですけれど、そのことが本当に素晴らしくって、初めてお会いした時からずっと、いつも越智さんの写真にはワクワクさせられてきました!。

越智ありがとうございます。お金がなくてバックパッカーのように、ノミに喰われながら取材を続けたこともありましたけど、自分の中では楽しい記憶しかないんですよね。ですから、こんな楽しい思いさせてもらって、賞までいただいていいんかな、って。僕の中ではこの賞をいただいたことが本当に自信になりましたし、これからも懸命にシャッターを押していきたいと思います。そしてモニカさん、引き続き公認の追っかけとしてよろしくお願いします!笑

【対談】越智貴雄×瀬立モニカ フォトグラファーとパラアスリートの幸福な関係

<了>

写真=近藤 篤 Photograph by Atsushi Kondo

インタビュアー

瀬立 モニカ

MONIKA SERYU

1997年11月17日、東京都江東区生まれ。

中学時代はカヌー部に所属、高校1年、体育授業中の不慮の事故で、車椅子生活となる。

2014年にパラカヌーを始め、翌2015年、世界選手権に出場。2016年には、リオデジャネイロ・パラリンピックに出場し、女子カヤックシングル(運動機能障害)8位入賞を果たした。

2017年、ワールドカップやアジアパラカヌー選手権大会で優勝した後に、2019年の世界選手権で5位入賞し、東京2020パラリンピックへの出場が内定。金メダル獲得を目指したが、2021年、東京2020パラリンピックは7位入賞。

現在、江東区カヌー協会に所属、筑波大学体育専門学群へ復学し、2022年3月卒業予定。パリ・パラリンピックでの金メダルに向けて漕ぎ出している。



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