第10回 YMFSスポーツ・チャレンジャーズ・ミーティング

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特別講演

日時 3月4日(土) 13:00〜14:00
講演者 長谷川 弓子
国立大学法人岩手大学 人文社会科学部 准教授
公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団、スポーツチャレンジ研究助成 第7期生
演題 実践から研究へ:スポーツ心理学の観点からパフォーマンス向上を目指して
講演概要 私は15歳の時にゴルフを始め、大学卒業後から8年間、専門的に取り組みました。その後、競技生活のなかでわからなかった問題を少しでも理解したいという思いから、中京大学大学院に進学し、スポーツにおける心理学的問題について研究しています。
こころの「あり方」はとても重要だと思いますが、「こうあれば良い」というように、解が1つに定まるものではないと思います。皆が同じ「あり方」で上手くいくとは決して思えません。また同一人物であっても、「ずっとこれで上手くいく」というような「あり方」は存在しないと思います。私たちは、日々さまざまなことにトライしますが、そのなかで鋼のような強さを身につけていくというよりも、大いに「ゆらぎ」ながら、柔軟性をもって、自分の「最高のあり方」を目指してやり続けるしかないと実感しています。本講演では、プレッシャーに関連する科学的研究で得られた知見に触れながら、私自身の経験をもとに「こころのあり方」についての話題を提供させて頂きます。

スポーツ・チャレンジャーズ・ミーティングの2日目に開かれた特別講演では、プロゴルファーから研究者に転身した長谷川弓子先生が「実践から研究へ:スポーツ心理学の観点からパフォーマンス向上を目指して」をテーマに講演を行いました。

長谷川 弓子(国立大学法人岩手大学人文社会科学部准教授、公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団 スポーツチャレンジ助成第7期生)

本日は、私自身の経験をもとに、私見を交えながらパフォーマンスの向上について話していきたい。

私は子どもの頃から29歳まで、競技としてゴルフに専門的に取り組んできた。選手時代には重要な場面で崩れてしまったりすることがあり、わからないことも多かった。①スタートの朝、クラブを持った時に重く感じたり軽く感じたりするのはなぜ? ②距離に対する感覚が伸び縮みするのはなぜ? ③目の前の状況に対して、自分がどうすべきかわかる日とわからない日があるのはなぜ? ④ミスが連続して起きるのはなぜ? ⑤試合の「流れ」を制御する方法はある? こうしたことがわかるといいと考え、30歳の時に中京大学大学院に進学した。

4年前の成果報告会で、浅見俊雄先生は「私たちの前に道はない。私たちの後に道はできる」とおっしゃったが、正直、その時はピンとこなかった。私が選手時代に疑問に思ったことなどは、どこかの偉い先生が知っているのではないかと考えていたからだ。でもいま実感しているのは、私の知りたいことの答えなど誰も持っていないということ。だから自分自身で調べ、考え、知るしかないと今は思っている。皆さんが期待している話とは違うかもしれないが、ただただ自分の最高の在り方を目指して頑張っていくしかない。

最後に野口三千三先生の言葉を紹介したい。「覚悟すべきことは、どんなに練習しても、今までにない最高の動きだということはあっても、完璧な動きということはあり得ないということだ。その人の一生を賭けても、その人にとって最高の在り方にたどり着くことができるだけで、完璧などということはない。だからこそ死ぬまで新しいことを発見できて楽しいのだ、と覚悟することが大切である」。野口先生の言う「最高の動き」には、私は心の在り方も含まれていると考えている。


講演者

特別講演
プロフィール

長谷川 弓子(はせがわ ゆみこ)

2005~2006年日本女子プロゴルフ協会ツアープロフェショナル(単年資格保持者)。2013年中京大学大学院体育学研究科博士後期過程満期修了。2013~2016年名古屋大学総合保健体育科学センター研究員、名城大学非常勤講師、中京大学非常勤講師、椙山女学園大学非常勤講師などを経て2016年4月より現職。
日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロフェッショナルA級 専門:スポーツ心理学(運動学習)


  • ※2017年2月21日現在
  • ※敬称略