セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

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第27回(平成31年) レースレポート

大会史上最多 全国から140艇・164人のジュニア/ユース選手が参加

第27回 セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団(YMFS)では、3月21日(木)から23日(土)の3日間にわたり、静岡県立三ヶ日青年の家(浜松市)において「第27回YMFSセーリング・チャレンジカップIN 浜名湖」を開催しました。今大会は、全国44クラブから集まった140艇・164人のジュニア/ユース選手が出場しました。

「YMFSセーリング・チャレンジカップIN浜名湖」は小学生から高校生までのジュニア/ユース世代を対象にしたセーリング大会で、毎年、春休みが始まる3月下旬に浜名湖を舞台に開催されています。本大会の特徴は、単に順位を競うチャンピオンシップとしてのレガッタとしてだけではなく、国内トップレベルの実績を持つコーチ陣を招聘し、選手に直接指導を行う「学びつつ、成長できるレガッタ」であること。今回も元オリンピック選手2人を含む、4人のコーチがハーバーで、海上で、さらにレース後の勉強会で熱のこもった指導を行いました。

期間 2019年3月21〜23日
会場 静岡県立三ヶ日青年の家(静岡県浜松市)
共同主催 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団、NPO法人静岡県セーリング連盟
参加艇 OP級・初級9艇/上級32艇、ミニホッパー級:11艇、レーザー4.7級:22艇、レーザーラジアル級:44艇、420級:22艇

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世界大会への選考対象レースとして、ハイレベルな選手の参加増加

大会会場となった静岡県立三ヶ日青年の家

昨年の全国高等学校ヨット選手権大会(インターハイ)で、新種目としてレーザーラジアル級が採用されました。これは、59年の歴史を誇る高校ヨット選手権で初めての一人乗り種目の採用という画期的なできごとでした。これにより、高校生セーラーの競技種目は二人乗りの420級と、一人乗りのレーザーラジアル級の二種目となり、世界的に普及しているユース種目と同じ枠組みとなりました。

このことが影響したのか、今年はレーザーラジアル級が44艇(前回大会は29艇)、420級が22艇(前回大会は15艇)と、高校生種目が大きくエントリー数を増やし、本大会は3大会連続で最多参加艇数の記録を上回る結果となりました。 またレーザーラジアル級、レーザー4.7級ともに、本大会が世界選手権出場選手の選考対象レースに指定されていることで、競技レベルの高い選手が集まる傾向が強まっているようです。

真剣な眼差しで講義を受ける選手のみなさん
真剣な眼差しで講義を受ける選手のみなさん

本大会の最大の特徴である「学べるレース」を実現させるコーチ陣は、中村健次さん(470級でソウル五輪、アトランタ五輪、49er級でシドニー五輪、アテネ五輪と4大会のオリンピックに出場。現在は日本セーリング連盟オリンピック強化委員会統括コーチ)、佐々木共之さん(レーザー級でアトランタ五輪、49er級でシドニー五輪に出場。現在は日本レーザークラス協会強化委員長)という2人のオリンピアンを始め、永井久規さん(本大会の前身ジュニアチャンピオンレガッタでシーホッパー級2連覇(97・98年)。2010年アジア大会レーザー級銀メダリスト。現在は日本レーザー協会強化委員会スタッフ)、高橋昌威さん(各水域におけるレーザークリニックなどで指導を実施。現在は日本レーザー協会強化副委員長)と国内トップレベルのコーチ陣が、それぞれのクラスを担当し、毎日のレースを見ながら海上で直接指導を行ったり、夕食後に行われる勉強会で講義を行いました。

また、初日のみとなりましたがノースセイルジャパンの白石潤一郎さんが、全てのクラスに共通するセールトリムの考え方についての講義を行い、各選手ともメモを取りながら真剣な表情で聞き入っていました。

大会2日目は10m/sを超える強風が吹いた
大会2日目は10m/sを超える強風が吹いた

昨年からGPSのトラッキング機能を使い、各レース艇のリアルタイムの位置表示を行う「スマホでヨット」というシステムが参加全艇に導入されましたが、今大会からは昨年の世界セーリング選手権(デンマーク)で採用された「Trac Trac」という、さらに解析精度の高いシステムが導入され、より高度なレース解析が可能となりました。

昨年は3日間とも晴天に恵まれた本大会でしたが、今年は初日があいにくの雨天となり、開会式は三ヶ日青年の家の体育館で行われました。しかし、その初日も午後からは雨も上がり、2日目からは晴天となり、春の浜名湖らしい北西からの強風が吹いたことで、各クラスとも十分なレース数が消化されました。

OP級
OP級上級
強風でもレースが行われたOP級上級

小中学生が取り組むOP級は選手間の技術レベルの差が大きいため、セーリングを始めたばかりの選手を初級とし、それ以外の選手を上級とする2クラスに分けてレースが実施されました。初級クラスで優勝したのは地元の浜名湖ジュニアクラブに所属し、レース海面に近いビーチスマリーナで活動している縣潤乃介選手(小4)。ヨットを始めたのは小学校3年の7月で、この大会に出るのは2回目。今回の優勝は「去年よりタッキングで失敗することが減ったこと」が勝因だと冷静に分析。上級クラスで手堅い走りを見せて優勝したのは江の島ヨットクラブジュニア所属のポル・マテウ選手。フランス生まれでスペイン国籍のマテウ選手は、昨年の夏に両親とともに来日し、横浜のインターナショナルスクールに通う13歳。11歳のときにバルセロナのヨットクラブでヨットを始めたという彼は「浜名湖は初めてですが、波がなくて風がシフティなところがバルセロナの海と似ていたので、うまく走らせることができました」と謙虚に勝因を分析。女子優勝は四国の高松から来た旭夏希選手(中1)。お父さんの勧めで小3の5月からヨットに乗り始めました。「スタートは得意な方だと思います。エンドは狙わず真ん中から出遅れないようにスタートして、その後に風のシフトに合わせていくのが私のスタイル。今回はそれがうまく行きました」と中1らしからぬクレバーな考えを語ってくれました。

ミニホッパー級
ミニホッパー級
第1回大会から種目になっているミニホッパー級

1993年の第1回大会から種目として採用され続けているのがミニホッパー級。このクラスでは例年、山中湖中学校ヨット部のエントリーが多く、今年も11艇中8艇が同中学の選手で、上位も山中湖中学の3艇が独占。中でも6レース中5回トップフィニッシュを果たした長田貴哉選手(中3)が優勝。山中湖中学校ヨット部は、第1回の高村幹治選手の優勝以来、実に9回目の優勝となりました。昨年は2位だったという長田選手は「去年まで苦手だったランニングの走りが少しよくなったことと、メインセールのコントロールがなんとなくわかってきた」ことが今回の勝因だと語ってくれました。4月からは富士北稜高校に進学し、ヨット部に入部して同じ山中湖で活動していくようです。

レーザー4.7級
レーザー4.7級
年々レベルが上がってきたレーザー4.7級

レーザーシリーズ最小のリグを持つレーザー4.7級には、OP級では体格が大き過ぎる中学生を中心に22艇がエントリー。世界選手権の代表選考ランキングがかかるシビアな戦いのなか、7レース中5レースでトップフィニッシュ、失点7の見事なスコアで優勝したのは、ディフェンディングチャンピオンの元尾帆斗選手(中3)。昨年同様、長崎からセールだけを持って新幹線を乗り継ぎ、浜名湖まで遙々やってきた元尾選手。今年の世界選手権に出場することができれば、なんと3回目のチャレンジとなります。「ちょっと高い目標ですけど、世界選手権では20位以内を目指します」と抱負を語ってくれました。女子優勝は第3レースでのリコールが最終日にカットレースとなって順位をジャンプアップさせた抜井理紗選手(高2)。小学校2年の時からヨットを始め、レーザー4.7級以外にも、レーザーラジアル級、二人乗りの29er級などさまざまな艇種で活動しています。

レーザーラジアル級
レーザーラジアル級
上位3艇が同ポイントで並んだ激戦のレーザーラジアル級

昨年からインターハイの種目となったレーザーラジアル級には、今大会最多となる44艇がエントリー。レーザー4.7級同様、世界選手権の代表選考ランキング対象レガッタとなっているため、レベルの高い選手が集まりました。ドラマは3レースが一気に行われた最終日におこりました。首位の服部陸太選手を5点差で追う黒田浩渡選手、最終日はこの2人の一騎打ちかと思われたのが、前日までは首位から14点差をつけられての4位に甘んじていた白石誉輝選手が最終日の3レースを全て2位フィニッシュの快走。なんと全7レースを終えて三者の失点は15点の同ポイント! 規定により1位を4回取っている黒田選手が優勝、2位は1位が3回の服部選手、3位は安定して走ったものの1位を取っていない白石選手という結果になりましたが、この3人の実力は完全に互角。父親の勧めで小3からOP級に乗り始めたという黒田選手。「これまで2回レーザー4.7級で出場したんですが優勝できなかった(昨年2位)ので、今年は優勝したかった」。4月からはヨット部のある三重県立津工業高校に進学予定で、大阪の実家を離れて一人暮らしを始めることになります。女子優勝は、最終日まで男女総合でも3位に食い込む活躍を見せていた三浦帆香選手が昨年に引き続きの2連覇を果たしました。「この1年心掛けたのはフィットネスを高めること。トレーニングメニューに基づきフィジカルトレーニングに励みました。おかげで強風のハイクアウトも去年以上にラクになりました」。

420級
420級
420級には慶應義塾高校ヨット部が6艇エントリーした

昨年のインターハイ種目からFJ級が外れたことで、本大会も二人乗り種目は420級の1クラスとなりました。その影響かエントリー数は昨年(15艇)を上回る22艇がエントリーしました。優勝は6艇がエントリーした慶應義塾高校ヨット部の伊藤賢/海老澤快(ともに高2)チーム。ジュニア経験者もいる同クラブですが、伊藤選手は中学では山岳部、海老澤選手は中学でテニス部でした。「年明けからの乗り込みで全般的なスキルが上がったような気がします」(伊藤選手)と伸び盛りのコンビです。 また前回大会では出艇申告ミスのペナルティーで優勝を逃した岩月愛望選手が、新しいクルーの成田絵真選手とのコンビで雪辱を期しますが、最終日に逆転されて今年も3点の僅差で準優勝(女子ではトップ)。「まだ新しいコンビなので、クルーとのコンビネーションを高めている途中でした」と悔しさを滲ませました。2人が所属する碧南セーリングクラブの山田コーチは「岩月選手のお兄さんが2014年大会で優勝(FJ級)していたので、どうしても同じ1位の表彰台に立ちたかったみたいです。その悔しさはインターハイでのバネにすればいいと思いますよ」と夏の雪辱に期待をかけていました。


大会の様子


スポーツ振興くじ助成金

第27回「セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖」は、スポーツ振興くじ助成金を受けて実施しています。