調査研究

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2017(平成29)年度

障害者スポーツの振興と強化に関する調査研究
-テレビCF、大学の先進的取り組み、地域現場の実態に注目して-

大学の先進的取り組み調査について

目的

障害者スポーツに関わる活動を先駆的に行っている大学の事例収集を行い、今後の大学における障害者スポーツ振興を検討する際の基礎資料を得ることを目的とする。

概要

3大学の教員計5名と行政関係者1名、ならびに特別支援学校教員2名を対象にそれぞれ1時間程度の聞き取り調査を行った。


車椅子ソフトボールに関わる取り組み

日時 2017(平成29)年9月13日
場所 北翔大学大西研究室
回答者 北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科 大西昌美教授
聞き手 河西正博(同志社大学スポーツ健康科学部)
尾鍋文光(公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団)
結果
北翔大学北翔大学北翔大学
  • 日本では野球(ソフトボールを含む)が大変ポピュラーであるが、障害者が楽しめるベースボール型種目が普及していない。パラリンピックにもベースボール型種目が無く、障害者がベースボール型スポーツの楽しさを享受する環境整備は不十分。(2018年3月現在)

  • 北海道で高校生を対象に野球指導を行ってきた大西教授(北翔大学)が中心となり「車椅子ソフトボール」の国内普及を推進している。※一般社団法人日本車椅子ソフトボール協会

  • 普及促進を図り、国内向けには健常者と障害者が一緒になってプレイできるようルール改正などの配慮されている。

  • 北海道日本ハムファイターズ、埼玉西武ライオンズ、広島東洋カープ、中日ドラゴンズなどプロ野球チームとの連携や支援の輪が広がりつつある。

  • 今後は国内のみならず、アジアに普及を目指している。


ボッチャの普及強化、杏林大学との連携

大阪府立大学
日時 2017(平成29)年10月6日
場所 大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科長室
回答者 大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科 奥田邦晴教授
聞き手 河西正博(同志社大学スポーツ健康科学部)
尾鍋文光(公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団)

結果
大阪府立大学大阪府立大学大阪府立大学
  • ボッチャ競技力強化支援として「ボチトレ(ボッチャ+トレーニング)」に取り組む。従来、ボッチャ選手に対する筋力トレーニングはタブー視されてきたが、様々な研究成果から選手の状況に合わせたトレーニングプログラムを実施している。

  • 学内に「ボッチャ部」を創設し、障がい者支援に留まらず、学生自身がプレーヤーとしてボッチャに関わり、また地域住民向けの体験会開催を通じて年齢や障がいの有無に関わらずスポーツを楽しむ環境づくりに取り組んでいる。

  • 杏林大学とボッチャの普及強化に関わる連携協定を締結し、選手の発掘・育成や共同研究を行っている。また提携協定をきっかけに将来的には医療・保健系のみならず、体育、教育、福祉など様々な大学と協力関係を構築し、ボッチャを核とした大学コンソーシアムを作っていきたいと考えている。

  • 今後はボッチャを通した障がい者スポーツの一般化を目標として「i-BOCCIA」の考え方のもと、健常者と障がい者が一緒にボッチャをプレイすることで目標達成を目指したい。


大学での障害者スポーツに関わる取り組み
筑波大学での寄附講座設置に関わる協定

日時 2017(平成29)年11月20日
場所 筑波大学筑波キャンパス体育科学系棟A204
回答者 筑波大学体育系 中川昭教授・木塚朝博教授
日時 2018(平成30)年1月12日
場所 茨城県庁茨城県国体・障害者スポーツ大会局
回答者 茨城県国体・障害者スポーツ大会局障害者スポーツ大会課 小沼博義 主査
場所 筑波大学齊藤研究室
回答者 筑波大学体育系 齊藤まゆみ准教授
聞き手 河西正博(同志社大学スポーツ健康科学部)
尾鍋文光(公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団)
結果
茨城県・筑波大学茨城県・筑波大学茨城県・筑波大学
  • 筑波大学と茨城県で「アダプテッド体育・スポーツ学寄附講座」設置に関する協定を締結(2017年7月)。これは同県内の「特別支援学校や福祉施設等における障害者スポーツ指導者育成」、「選手発掘・強化に関わる研究推進」、「障害者スポーツ活動拠点形成」などを目的としており、2022年3月までの5年間におよぶもの。

  • 筑波大学は「オリンピック・パラリンピック総合推進室」を設置し、学内外のオリパラ関連情報を集約し発信していく予定。

  • 筑波大学(体育系)は指導者・教育者の養成を非常に重視しており、東京2020五輪大会に学生が選手として参加出場した後に指導者や教育者になってくれることを期待している。

  • 茨城県では2019年に国体・全国障害者スポーツ大会が予定されており、大会開催を機に障害者スポーツ関連環境の整備を進め、大会後にも障害者がスポーツを楽しめる環境を残すことに寄与することを期待して今回の寄附講座開設に到った。

  • 寄附講座設置を通じて、特別支援学校教員が専門知識の習得や経験を通じて、それぞれの所属先で「教員のリーダーになれる教員」となることを期待している。


教育課程の独自性、大学との連携

日本体育大学附属高等支援学校
日時 2017(平成29)年9月14日
場所 日本体育大学附属高等支援学校
回答者 日本体育大学附属高等支援学校 島崎洋二校長 ・長澤知博主幹教諭
聞き手 齊藤まゆみ(筑波大学体育系)
小淵和也(公益財団法人笹川スポーツ財団)
河西正博(同志社大学スポーツ健康科学部)
尾鍋文光(公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団)
結果
日本体育大学附属高等支援学校日本体育大学附属高等支援学校日本体育大学附属高等支援学校
  • 日体大の創立125周年(2016年)を機に「共生社会の実現に向け特別支援境域を推進」する方針に基づき、北海道網走市に知的障がい児を対象とした高等支援学校を開校

  • 教育方針はスポーツ教育、労作教育(農業教育・職業教育等)、情操教育(音楽・美術・ダンス等)を中心とするカリキュラム。

  • 日体大附属学校なので体育・スポーツ教育に力を注ぐが、全学生にパラリンピック出場を目指してほしいとは考えておらず、学びを通して人間性を高めていってもらいたい。

  • 学内には二つの体育館、全天候対応型の屋内150m直線走路、実習室、調理室など様々な施設・設備が整っている


担当者のコメント
河西 正博氏

河西 正博
(同志社大学スポーツ健康科学部)

北翔大学・大阪府府立大学の事例において、両大学ともに施設貸与やボランティア派遣等の後方支援にとどまらず、大学そのものが活動拠点になっていると同時に、学生が「プレーヤー」として種目に参加している点が特徴的です。インクルーシブ体育・スポーツの視点からも先駆的な取り組みであり好例と言えるのではないでしょうか。

筑波大学と茨城県の連携について、都道府県が大学に障害者スポーツに関わる寄附講座を設置するのは管見の限り前例のない取り組みであり、地域での障害者スポーツ振興や指導者育成の今後の展開が注目されます。

また、日本体育大学附属高等支援学校については、体育・スポーツ活動を中心とした教育課程の中で、今後在校生がどのようなスポーツキャリアを形成いくのか、日本体育大学や関連校との連携の中でどのような進路を開拓していくのか等について引き続き調査を進めていきたいと考えています。


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