調査研究
2017(平成29)年度
障害者スポーツの振興と強化に関する調査研究
-テレビCF、大学の先進的取り組み、地域現場の実態に注目して-
障害者スポーツ関連のテレビコマーシャル実態調査
目的
2008年以降の障害者スポーツ関連のテレビCF制作の実態(放送年、競技、出演者等)を把握し、社会的ムーブメント形成の背景を探ることを目的とする。
概要
国内における障害者スポーツ関連(競技、選手など)をテーマや題材に取り上げて制作されたテレビCFについて実績を元に分析を行う。
主な結果
リオ大会開催年にCFに起用されたパラアスリートの数が急増
「アスリートCMランキング」によると、CFに起用されたパラアスリートは、2008年・2012年は1人のみだったのに対し、リオ大会が開催された2016年には40人となった。また企業数も一人が複数のCFに起用されるケースも増えてきた。
まとめ
障害者スポーツ選手関連のテレビCF制作本数を年別にみると、北京大会が開催された2008年では3本、ロンドン大会が開催された2012年では1本であったが、東京大会の開催が決定した2013年を機に徐々に増えてきたことがわかる。
東京2020パラリンピック開催決定(2013年)、および「東京2020スポンサーシッププログラム」の募集開始(2015年)時期に、テレビCF制作本数も増加してきており、2016年ではリオ大会の開催も後押しして、95本のCF数となった。
「東京2020スポンサーシッププログラム」への参加企業別にみると、2016年は95本のうち75本(78.9%)、2017年は47本のうち40本(85.1%)が参加企業のテレビCFであり、残りは「東京都」や「ACジャパン(旧・公共広告機構)」による周知啓発目的のものであった。2020年の東京大会に向けて、こうした傾向は顕著になっていくことが推察されるが、スポンサーシップとテレビCFの密接な関係が示唆された。
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担当者のコメント
小淵 和也
(公益財団法人笹川スポーツ財団 主任研究員/当財団障害者スポーツ・プロジェクト メンバー)
「テレビメディアによる障害者スポーツ情報発信環境調査」(2017)において、北京大会、ロンドン大会、リオ大会の地上波テレビ放送時間はリオ大会で急増しましたが、テレビコマーシャルの制作本数でも同様に急増したことが分かりました。企業の認知度向上、イメージアップ、商品の売上増加など、スポンサー側の意図がそれぞれあるなかで、2020年まではこの傾向が続くと思われます。2020年東京大会以降の企業と障害者スポーツの新たな関係構築に向けて、スポンサー企業の社員がダイバーシティの理念を社内の合意形成の主軸に据え、長期的な支援が可能な環境づくりの議論が進むことを期待したいと思います。理想の共生社会の実現には、支援する側もされる側も、同じ方角を向いて進んでいくことが重要と言えるでしょう。