調査研究

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2018(平成30)年度

障害者スポーツを取巻く社会的環境に関する調査研究
-パラリンピアン、競技団体、大学、地域現場に着目して-

地域現場における実態調査について

背景・狙い

2017(平成29)年度より「地域現場の実態」を明らかにすることで、環境課題をマクロとミクロの視点で捉え、より立体的な把握を目指す活動を開始。これにより、“障害者スポーツ現場で役立つ、リアリティー感ある成果"を目指す。


調査対象

障害者に対するスポーツ推進活動に積極的に取り組む実績を有し、東京2020五輪大会開催決定で社会インフラの急激な発達や環境の激変地域に該当せず、かつ東京圏(東京2020五輪大会の影響を考慮)と中部圏(2018年度調査地域)に該当しない地域として、福岡県・福岡市・北九州市を選出。


調査結果

  • 福岡県内には3つの協会(福岡県障がい者スポーツ協会。福岡市障がい者スポーツ協会。北九州市障害者スポーツ協会)と2つのスポーツセンター(福岡市立障がい者スポーツセンターさん・さんプラザ。北九州市障害者スポーツセンターアレアス)があり、それぞれが積極的な活動を行っている。

  • 福岡障害者スポーツ指導者協議会に所属する指導員に加え、県内には3つの障害者スポーツ支援のボランティア組織(F.H.Sの会。H.S.S.会。SKET)があり、これら組織に登録した支援者ネットワークが地域における障害者スポーツの現場を支えているのが特徴。

  • 大会参加選手は6割が男性4割が女性。平均年齢は34.9歳。『学生』『無職』『福祉施設・作業所等の利用者』が中心。スポーツを始めたキッカケは「福祉関係者のすすめ」が最も多く、「学校の授業やクラブ活動」「友達や知人のすすめ」「家族のすすめ」など。特に影響が強い存在は「福祉関係者」。選手たちはパラリンピックを頂点とする競技スポーツのピラミッド構造は志向せず、地域の競技大会出場など身近で具体的なものが大半。

  • 障害者スポーツ教室受講者の活動実態には、福岡県と政令指定都市(福岡、北九州)に差異。これは障害者向け公共施設や障害者の利用が想定されている施設・設備がある両政令指定都市と、施設をもたず、幅広いエリアをカバーする福岡県との間にある環境要因の差だと推察される。

  • 障害者スポーツ指導者の男女比率はほぼ同じ。 年齢層では50-60代の指導者を中心に20代から80代まで幅広く、指導者育成や運動指導場面における年代間の好循環があることが示唆される。

  • 障害者スポーツ受講者や指導員の東京2020大会に対する意識は、テレビを通しての視聴に対する意識が高いことが示されたが、直接観戦に関しての受講者の意識は低く、25%は特に興味なしと回答していることから、パラリンピックという競技性の高いスポーツと身近なスポーツ活動は関連しない存在であると捉えられているようである。

  • 【特別企画 座談会】地域現場における障害者スポーツ振興の取組み

    〜指導人材育成・ボランティア組織構築に着目して〜 福岡県の事例


担当者のコメント
齊藤 まゆみ氏

齊藤 まゆみ
(筑波大学体育系准教授/当財団障害者スポーツプロジェクト メンバー)

地域における障害者スポーツ環境調査、今年度は福岡を対象に実施しました。福岡の特徴は北九州市と福岡市という2つの政令指定都市と福岡県との関係性にあります。たとえば北九州市のスポーツセンターは障害の有無にかかわらず利用できる共用型でありそこには相互理解を深める仕掛けがありました。福岡市の場合は、施設のある障害者スポーツセンター(さん・さんプラザ)とスポーツ施設をもたない障害者スポーツ協会との役割分担、福岡県障がい者スポーツ協会は、障害者専用・優先施設をもっていないことやカバーするエリアが広いこと、それにともなうアクセスの問題も存在することなど、政令指定都市とは異なる環境での普及・振興における課題の存在です。福岡の障害者スポーツに関わる人々のネットワークは強く独自のボランティア組織づくりも含めて有機的な連携がとれていることから、政令指定都市で構築された拠点づくりのノウハウを福岡県内の市町村において、また本調査を目にしたみなさんが関わっている地域それぞれの実情に見合う形にアダプトし、拠点づくりに生かされることを期待します。


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