調査研究

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2018(平成30)年度

障害者スポーツを取巻く社会的環境に関する調査研究
-パラリンピアン、競技団体、大学、地域現場に着目して-

パラリンピアンに対する社会的認知度調査
平昌2018パラ出場選手、リオ2016パラ出場選手を調査対象

調査目的

平昌2018パラリンピック大会の開催、東京2020パラリンピック大会の開催を控え、パラリンピアンに対する社会的認知度を測定する。前回調査との比較を行い、変化、傾向、要因などを調査する。

調査内容

主な調査内容は以下のとおりである。

  • パラリンピアンの社会的認知度
  • 平昌2018パラリンピック大会の視聴状況
  • 日常生活におけるスポーツ環境

調査対象

全国の市町村に在住する20歳以上の男女

調査期間

2018年6月28日(木)~2018年6月29日(金)

調査方法

  • インターネットによるウェブ調査
  • 当財団調べ(マクロミルモニタを利用)

要約

  • リオ大会に出場したパラリンピアンの2年経過後の認知度は減少傾向で、第1位の「国枝慎吾」は5.3ポイント減の28.7%、第2位の「上地結衣」は1.4ポイント減の13.4%、3位の「成田真由美」は1.0ポイント減の9.5%であった。
  • 平昌大会に出場したパラリンピアンの認知度は、最も知られている選手が「成田緑夢」(50.9%)、ついで「村岡桃佳」(9.6%)、「南雲啓佑」(9.0%)、「山本篤」(6.9%)、「新田佳浩」(4.9%)であった。
  • 実施競技の正答率が高かったのは「成田緑夢(スノーボード)」(84.1%)で、ついで、「村岡桃佳(アルペンスキー)」(48.0%)、「森井大輝(アルペンスキー)」(25.0%)、「新田のんの(クロスカントリー/バイアスロン)」(23.0%)、「狩野亮(アルペンスキー)」(22.5%)であった。
  • 平昌大会の観戦形態は、「テレビのニュース番組で観た」が45.6%で最も多く、ついで、「テレビで中継番組を観た」(32.8%)、「テレビの選手・競技を紹介した特集番組を観た」(11.2%)であった。いずれかの観戦形態で、観戦した競技は、「スノーボード」(49.8%)が最も多く、ついで「アルペンスキー」(34.7%)、「クロスカントリー/バイアスロン」(16.7%)であった一方、「わからない」が28.5%であった。
  • 平昌大会を観戦した感想は、「アスリートとして非常に優れていると感じた」(69.5%)が最も多く、ついで、「障害の有無にかかわらず、スポーツは一緒にできると感じた」(65.6%)、「障害者への偏見がなくなった、身近な存在に感じた」(61.5%)であった。「2020年東京パラリンピックを直接観戦したい」は35.2%であった。
  • 「自分以外の身近な人に障害者がいる」と回答した人では、「テレビで中継番組を観た」「テレビのニュース番組で観た」「テレビの選手・競技を紹介した特集番組を観た」「(テレビやインターネットの)その他の方法で観戦した」が有意に高かった。
  • 「自分以外の身近な人に障害者がいる」と回答した人では、「障害者スポーツを直接観戦したい」「障害者スポーツを体験したい」「障害者スポーツのボランティアをしたい」が有意に高かった。
  • 日常生活の中で障害のある人がスポーツを行う光景をみることがあるかについて、みることがある人の方が、特にインターネット動画の観戦形態において有意に高かった。

(文章中は敬称略)


担当者のコメント
小淵 和也氏

小淵 和也
(公益財団法人笹川スポーツ財団 主任研究員/当財団障害者スポーツ・プロジェクト メンバー)

平昌大会に出場した選手の認知度をみると、成田緑夢選手の「一人勝ち」が明らかになった。成田選手を「知っている」(29.2%)と「聞いたことがある」(21.7%)を合わせると回答者の過半数が成田選手を認知していた。また、成田選手の実施競技がスノーボードだと認識している人も84.1%と非常に高く、多くの人が『スノーボード選手・成田緑夢』を認知していることがわかる。注目は、平昌大会を観戦しないにもかかわらず、『スノーボード選手・成田緑夢』を77.7%の人が認知していることである。平昌大会に出場した選手のなかで、観戦しない人の認知度が約8割となったのは成田選手のみにみられた傾向であり、成田選手が「障害者スポーツ」「パラリンピック」の枠に留まらずに、メディアで取り上げられていたことが推し量られる。

2020年東京大会に向けた社会環境の整備は着実に進んでおり、パラリンピック自体は大成功の予感を漂わせる。東京で開催される2回目のパラリンピックに求められるのは、“その先"である。「障害者がいて当たり前の社会」が価値観として根付くためにも、ヒーロー・ヒロインは必要となる。これまでの足跡からも成田選手に、その役割を期待せずにはいられない。

考察-成田緑夢を考える


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