スポーツチャレンジ賞

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東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 戦略広報部

【コラム】東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 戦略広報部~熱意がもたらした希望

OPINION
THE TOKYO 2020 BID COMMITTEE COMMUNICATIONS DEPARTMENT

熱意がもたらした希望

近藤篤 = 写真・文
Text&Photograph by Atsushi Kondo

2012年の5月、日本国内における2020年東京オリンピック・パラリンピック招致への支持率はわずか47%だった。

開催への機運が盛り上がらなかった理由はたぶん二つある。

東京はすでに2016年の招致レースに参加し、リオデジャネイロに敗れていた。

ここでもう一度招致レースに参加して、更なる予算を費やすだけの意味はあるのか?(つまり、また負けたらどうするのか?ということだ)

もうひとつは、なぜ2011年3月の大震災の傷が全く癒えていないこの時期に、オリンピックの話をしなければならないのか?という疑問があった。

我々が今向き合うべき問題は被災した地域と人々にいかにして復興をもたらすかであって、東京でオリンピック・パラリンピックを開催するかどうかではないのではないか?

僕自身もオリンピック・パラリンピックの招致には諸手を上げて賛成できない、そんな一人だった。

しかしながら、時間の経過とともに、人々のオリンピック・パラリンピックに対する認識は少しずつ変化してゆく。

今回奨励賞を受賞した東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 戦略広報部は、スポーツが本質的に持つ強い力、オリンピック・パラリンピックというスポーツイベントがこの国にもたらすであろう大きな変化、といったポジティブな側面を、2年間の広報活動によってこの国の人々にもう一度伝え直すことに成功した。

同時に、対国外に対しては、なぜ東京でなければならないのか、東京が、そして日本が、どれほどこのイベントの開催を希求しているのか、を誠実に伝え続けることにも成功した。

招致委員会CEO水野正人氏の言葉を借りるならば、『真心』を伝えることに成功した、とでも表現すればいいだろうか。

もちろん、オリンピック・パラリンピックの招致が真心だけで可能になるわけではない。そこには周到且つ綿密なロビー活動があり、広報・宣伝活動があり、利害関係の微妙な駆け引きがある。オリンピック・パラリンピックがひとつの商品である以上、最高の商品を提供することを前提に、インフラ面も含めて、莫大な予算をつぎ込まねばならないことも事実だ。

しかしながら、今回の取材で話を伺った三人、戦略広報部の部長をつとめた鈴木德昭氏、部長補佐として戦略広報部の中心的存在を担った髙谷正哲氏、そして招致委員会CEOとして戦略広報部のひとつ上のところで招致の推移を直接的に見守り続けた水野正人氏、彼らの言葉に耳を傾けていると、水野氏が口にした『真心』言う言葉は、招致活動におけるきわめて重要なファクターのひとつだったのだろうと実感する。

あるいは『熱意』と言い換えてもいいかもしれない。

髙谷氏も、鈴木氏も、水野氏も、そして話を伺うことの叶わなかった残り8名の戦略広報部のメンバーも、さらには、今回の招致に関わった数多くの関係者の人々は、この二年間の日々を、それぞれのバックグラウンドとそれぞれの信念や想いに従って、圧倒的な熱意でなすべきことをなしてきたのだろうと思う。

そして、彼らの『熱意』は、2020年東京オリンピック・パラリンピックを現実のものとした。

6年後、東京はいったいどんなオリンピック・パラリンピックを世界に対して発信できるのだろうか?スポーツというものをどんな次元にまで高められるのだろうか?

2020年の後が本当のスタート。

髙谷氏も、鈴木氏も、水野氏も、そしてインタビュアーを担当してくれた萩原氏も、皆が同じ台詞を口にした。

2020年、我々に問われるのは、スポーツそのものに対する真心、あるいは熱意なのではないか、と僕自身は思っている。

写真・文

近藤篤

ATSUSHI KONDO

1963年1月31日愛媛県今治市生まれ。上智大学外国語学部スペイン語科卒業。大学卒業後南米に渡りサッカーを中心としたスポーツ写真を撮り始める。現在、Numberなど主にスポーツ誌で活躍。写真だけでなく、独特の視点と軽妙な文体によるエッセイ、コラムにも定評がある。スポーツだけでなく芸術・文化全般に造詣が深い。著書に、フォトブック『ボールピープル』(文藝春秋)、フォトブック『木曜日のボール』、写真集『ボールの周辺』、新書『サッカーという名の神様』(いずれもNHK出版)がある。



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