全国児童 自然体験絵画コンテスト

このページをシェア

水辺に学ぶ体験レポート:Vol.1

竹富町立上原小学校(沖縄県八重山郡)

体験学習「海の達人」が育む子どもたちの豊かな感性

上原小学校では、西表島の豊かな環境をベースとした校外体験学習を通じ自然や生き物と触れ合うことで児童の豊かな感性を育んでいます。今回は、上原小学校の児童が描いた作品の題材となった「海の達人」プログラムを中心とした学校の取り組みについてご紹介します。

レポートをPDFでダウンロード

魚巻き集会で体感する西表島の自然

上原小学校からは今年、第23回「全国児童 水辺の風景画コンテスト」に3年生以上の児童が描いた37作品の応募があり、そのうち4作品が入選し、6年生の真謝紀香さんの作品が文部科学大臣賞を受賞しました。

最終審査会で真謝さんの絵を選出した審査員の方から「自然体験活動の機会が減ってきているなか、この絵は生き生きとした笑顔で魚を捕まえる様子が描かれています。全国の子どもたちもこの絵のように笑顔で活動してほしい」とコメントされたように、笑顔で自然と触れ合う姿が大臣賞授賞決定のポイントとなりました。 この作品の題材になったのが、上原小学校が毎年5月に開催している「魚巻き(うおまき)集会」です。川満順二校長は「これは大見謝(おおみじゃ)川の河口で行う巻き網漁の体験学習で、児童だけでなく父兄や地域の方々など100名以上が参加する当校の一大イベントです。網にかかる生き物のなかにはサメやかなり大きな魚、カニなどもおり、子どもたちはキャーキャーと声をあげながら飛び跳ねて逃げようとする魚と格闘しています。その時の楽しかった記憶が、子どもたちの絵の中で表現されたのでしょう。」と、作品をご覧になりながらお話しくださいました。

また、この「魚巻き集会」は、漁を体験するだけのものではなく、摑まえた魚は低学年がうろこを取り、高学年が3枚におろし、保護者が刺身、天ぷら、にぎり、魚汁などに料理して、最後は参加者全員でおいしくいただくところまでを一連の学習と位置付けています。これは、漁の喜びや楽しさを味わうだけでなく、西表島の自然が命を育み、その命をいただくことで自分たちが生きていることを学び、自然や命に対する感謝の気持ちを身につけて欲しいという狙いがあるからなのです。


学校と地域の願い

上原小学校では、この「魚巻き集会」を含む「海の達人」というプログラムを実施しています。これは、西表島の自然を活用した総合的な校外体験学習であり、海や川、そこに棲む魚やサンゴなどの生き物や危険生物についての学習、さらに自然環境保護を意識した「砂浜クリーン作戦」などから成り立っています。そして、この「海の達人」の最大の特徴と言えるのが、学校だけでなく地域と連携してプログラムを推進しているということ。地域に住む漁師やダイバーなど、海のプロフェッショナルである皆さんが先生役となって力を貸してくれるのです。

「魚巻き集会」が始まった23年前から、中心となって児童の指導を続ける地元の漁師、井本由五郎さんは、「子どもたちには魚のことだけでなく、網の修理など漁をする上で必要な知識も教えています。一番大切にしているのは、魚ははじめからスーパーに並んでいるのではなく、自分たちの身近な海で獲れることをわかってもらうことです。今まで長く続けてきたのは、子どもたちが喜ぶ姿や成長していく姿を見たいからなんですよ。」とうれしそうに話してくださいました。

「海の達人」は、西表島の自然を身近に感じ、自然が様々な命を支え、そこで育まれた命によって自分たちの生活が成り立っているなど、児童に様々な気づきを与えているのです。そしてこうした体験を何度も重ねることにより、児童が西表島について考え、将来この島を守り育ててくれるような大人になって欲しいという願いが込められた活動なのです。


“自信”と“やる気”の醸成

川満校長は「今回の応募では、文部科学大臣賞を受賞した真謝さんを含めた4人が入選しました。表彰式で見せた誇らしげな顔からもわかるように、これは子どもたちにとって大きな自信となります。今回入選できなかった子は、この悔しさをバネにして、絵だけでなく様々な分野でやる気や励みにつなげて欲しいと考えています。また、作品を改めて眺めてみると、どの作品も生き生きとした笑顔で溢れているように、子どもたちが“魚巻き集会”を通じて何を感じ何を考えているのかが手に取るように分かり、コンテストへの応募を通じて私たちが行ってきたことの意義を再確認できました。」とおっしゃいました。

上原小学校の子どもたちには、先生方をはじめ、家族や地域の方々の温かい目が常に向けられています。これからも、この西表島の豊かな自然のもとで心も体もともに逞しく感性の豊かな子どもたちが成長していくことでしょう。

(2011年12月取材)




「全国児童 水辺の風景画コンテスト」トップにもどる