調査研究

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2016年1月30日

障害者スポーツ体験イベント「目指せ!未来のトップアスリート!」を初開催

障害者スポーツ体験イベント「目指せ!未来のトップアスリート!」を初開催

(公財)ヤマハ発動機スポーツ振興財団(以下:YMFS)は、1月30日(土)、障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(神奈川県横浜市)にて、障害者スポーツ体験イベント「目指せ!未来のトップアスリート!」を初開催しました。

YMFSは、平成24年度より障害者スポーツを取りまく環境、特に障害者スポーツ選手の発掘・育成・強化について調査研究を行った結果、未来を担う若い選手が少ない現状や、社会認知度の低さなど、具体的な課題を確認しました。こうした背景から、子どもたちに障害者スポーツの一つである車椅子バスケットボール体験を通して、その存在や楽しさを知ってもらうことを目的に開催しました。

今回は、横浜市内の小学4年生から中学3年生までの児童・生徒を対象として、当日は参加者35名(障害者2名/健常者33名)に加え、指導員、視察者、保護者、YMFS調査研究委員会関係者など、およそ100名が参加しました。

最初にゲストの根木慎志さん(2000年シドニーパラリンピック車椅子バスケットボール男子日本代表キャプテン)による講演会を実施。自身の体験談を交えながら車椅子バスケットボールの魅力を伝えるとともに、障害者スポーツの歴史や現状について紹介いただきました。

続いて参加者は、横浜ラポールの指導員と現役の車椅子バスケットボールプレーヤー(横浜ドリーマー、湘南SC所属)によるエキシビションマッチを見学後、実践練習に移りました。最初に行ったスポーツ用車いすの操作練習では戸惑う様子も見られましたが、鬼ごっこやボールを使った練習になると操作にも慣れ、笑顔が見られるようになりました。最後のプログラムとなった模擬試合では、全員が汗を流し、大きな声を出して真剣に取り組む様子が見られ、車椅子バスケットボールの楽しさを肌で感じてもらえたと思われます。


後援団体

横浜市教育委員会、横浜市小学校長会、横浜市中学校長会、横浜市小学校体育研究会、横浜市中学校体育連盟、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会、公益財団法人笹川スポーツ財団(順不同)







根木 慎志さん(2000年シドニーパラリンピック車椅子バスケットボール男子日本代表キャプテン、一般社団法人日本パラリンピアンズ協会副会長、日本パラリンピック委員会 運営委員会 委員)

私は高校生の時に交通事故で車いすに乗るようになりました。元々、スポーツが大好きで、柔道、水泳、サッカーをやっていましたが、障害者スポーツのことはまったく知らず、車いす生活になったことで、何もスポーツができなくなったと勝手に思っていました。それが、入院中に車椅子バスケットボールの選手と出会い、この競技について知りました。競技を始めたのは、その選手のイキイキとした姿を見て、もう一度、自信を取り戻そうとしたのがきっかけです。そして、先輩たちの姿に憧れ、競技にのめり込み、最終的にはパラリンピックに出場しました。今回はテーマとして、“目指せ!未来のトップアスリート!”とあるように、障害者スポーツ競技を知り、体験してもらうことがまず大切で、これを機にオリンピックやパラリンピックに出たいと思ってくれる子どもが、一人でも出てくれればうれしく思います。さらに、スポーツで自信を取り戻した私や、他の指導員の姿を通して、スポーツには、さまざまな可能性があることを伝える場でもありましたが、きっといろいろと感じ、考えてくれたのではないかと思います。


山川 洋さん(横浜ラポール スポーツ事業課 指導担当課長)

“目指せ!未来のトップアスリート!”というテーマからもわかる通り、このイベントは若い選手の発掘や体験が目的ですが、車椅子バスケットボールを知ることそのものも、将来の応援者を増やすという意味では、大きな意義があると感じました。また、参加者募集の際、横浜市内の小中学校を対象とすることで、障害者のスポーツを体験する機会や横浜ラポールのような施設があることを知ってもらえるきっかけになったことも大きな成果だと思っています。一方で、参加した35名の内、障害のある子どもは2名だけでしたが、これは、障害者自身が主役となってスポーツを行う機会が少ないことや、そもそもスポーツをする習慣がないことが原因と思われ、改めて課題の大きさを痛感しました。今回の活動は、スポーツ界全体や競技団体を動かすものではありませんが、教育現場や自治体への影響を考えると、こうした草の根活動が、2020東京パラリンピック開催へ向け、状況を変えていく下地としてとても重要になると思っています。今後もYMFSには、さらなる活動に期待したいです。


伊藤 俊之さん(横浜ラポール スポーツ事業課)

今回は、たくさんの子どもたちが参加してくれましたが、これは先生や保護者のおかげであり、サポートする皆さんの考え方や視野の広さがとても重要だと感じるイベントとなりました。障害者スポーツは大変だ、という固定観念が強くありますが、指導においては、工夫次第で障害者・健常者に関わらず楽しめることを、参加したすべての方に感じていただけるよう心がけました。特に、子どもたちには一度に多くのことを伝えても、そのすべてを理解させるのは困難です。

車椅子バスケットボール体験を通して、車いすのことを知り、さらには障害者のことを知るきっかけになればと考えながら指導にあたりました。障害のある子どもたちは、自分もスポーツができるというイメージを持っていない人がほとんどです。特に先天的に障害のある子どもは、保護者を含め障害者スポーツについての情報や知識を得る場所が多くないので、スポーツをやるという発想自体が少ないのが実情です。だからこそ、みんなが普通にスポーツを楽しめる環境作りへの一歩として、このイベントはとても重要な機会になったと思います。


藤田 紀昭さん(同志社大学スポーツ健康科学部 教授/YMFS調査研究委員会 委員)

今回は車椅子バスケットボールの体験でしたが、水泳、陸上、ボッチャなど、障害者スポーツには様々な競技があります。参加した子どもたちの表情から、障害者スポーツを楽しんでいることは伝わりましたが、今後も横浜ラポールなどの施設を活用して、別の競技にもぜひチャレンジしてほしいと思います。また、横浜市教育委員会や神奈川県立体育センターなどの教育関係団体から視察に来ていただけましたが、現在、文部科学省のオリンピック・パラリンピック教育についての有識者会議でも、学習指導要領の改訂でパラリンピックを取り上げることが決まろうとしています。教育関係者の皆さまには、障害者スポーツの楽しさ、パラリンピックの素晴らしさや凄さを積極的に伝えて欲しいと願います。


杉本 典彦(YMFS事務局長)

YMFSは設立当初より、自己の夢・目標にチャレンジするアスリートや指導者、研究者等の活動を助成するスポーツチャレンジ助成事業を行ってきました。そこで障害者アスリートと出会って、さまざまな課題があることを知り、4年前から障害者スポーツの調査・研究に取り組む中で、10年先を担う若い選手が少ない状況や、障害者スポーツの社会認知が低い現状など、具体的な課題が浮かび上がってきました。そこでYMFSは、こうした課題の克服に向けた一歩として子どもたちを対象とした本イベントを開催することにしました。今回は車椅子バスケットボール体験でしたが、障害のある方もない方も、ともに汗を流して、障害者スポーツの楽しさに触れていただけたように思います。小さな一歩ではありますが、こうした活動が少しでも広まって障害者スポーツ界が盛り上がり、若い選手が現れてくれることを期待しています。


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