セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

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平成25年・第21回 レースレポート

期間 2013年3月22・23・24・25日
会場 静岡県立三ヶ日青年の家(静岡県浜松市)
共同主催 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団(YMFS)、NPO静岡県セーリング連盟
参加艇 OP級:21艇、ミニホッパー級:7艇、シーホッパー級SR:18艇、FJ級:16艇
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20クラブから集まった78選手


新学期を控えた春休み、新たなセーリングシーズンのオープニングレガッタとして定着してきた本大会ですが、近年、各地で春休みの同時期に開催されるユース/ジュニア世代を対象にしたレガッタが増加したことで選手の分散傾向が見られ、今年は20クラブ、62艇、78選手と例年に比べてやや少ない参加となりました。また昨年同様、東日本大震災の被災地から参加するクラブについては参加費の免除等の支援が行われ、宮城県から気仙沼高校ヨット部の2選手が参加しました。

例年、北西の強風が吹き荒れることの多い本大会ですが、今年は初日の23日に6〜10m/sの中〜強風が吹いたのみで、2日目以降は微〜軽風に終始し、軽量選手や女子選手にとって有利なコンディションとなりました。


憧れのオリンピックセーラーが直接指導

この大会は、単に順位を競うレガッタではなく、セーリングというスポーツを多角的に研究する場であると同時に、伸び盛りのジュニア〜ユース世代に対して各種の取り組みを実験的に行い、新しいコーチング方法を模索する場として機能してきました。

その代表的な取り組みが、毎年実施している招聘コーチによる特別指導と、レース後に毎日行われる勉強会です。今年の招聘コーチは、昨年のロンドン五輪に470級男子のヘルムスマンとして出場した原田龍之介さん(アビームコンサルティング)と、その実妹で、レーザーラジアル級でリオデジャネイロ五輪出場を目指して活動中の原田小夜子さん(鹿屋体育大学職員/YMFSスポーツチャレンジ体験助成 第7期生)の2人。初日のレース後に行われた講義では、予定時間を大幅にオーバーするほど活発な質問が相次ぎましたが、翌日、風待ちをしているハーバーでも個別にたっぷりと直接指導が行われ、選手たちはオリンピック選手の言葉に目を輝かせて聞き入っていました。

また、昨年に引き続き、ポータブルのGPS端末をレース艇に搭載し、レース中の航跡データを専用ソフト上に走らせて再現したバーチャルレース空間を利用して、アップウィンドにおけるコースどりのセオリーについて、現実に即した講義が行われました。昨年は上位艇にのみGPSを搭載するという方法が採られましたが、本年はクラス毎に全艇に搭載したことから、より具体的で緻密なデータを集積することができ、参加者にも理解しやすかったようです。

ミーティングで準備体操の指導をする原田小夜子コーチ

レース前のミーティングで真剣な表情で聞き入る選手たち

サイン攻めを受けた五輪出場の原田龍之介コーチ

GPS端末のデータをコンピューター上で走らせる

勉強会は時間をオーバーするほどの熱気

風待ちのハーバーで質問を受ける原田小夜子コーチ


微〜軽風シリーズとなった2013年大会

毎年、北西の強風が吹き荒れる印象の強い本大会ですが、今年は初日の23日に強めの風が吹いた程度で、その他は2〜5m/s程度の微〜軽風の多いコンディションとなりました。 大会2日目に行われたシーホッパー級SRの第3レースも2〜3m/sの微風だったため、上位4艇を女子選手が独占するなど、軽量選手に有利なシリーズを印象づけました。とはいえ、全7レースを消化したリザルトには、各クラスとも実力者が上位に名を連ね、コンスタントに手堅く走ることの大切さを証明してくれました。

昨年から、新たに採用されたOP級には、最も多い21艇が参加しました。中〜強風の初日に飛び出したのは、地元の神谷仁選手(静岡県セーリング連盟浜名湖ジュニアクラブ)。浜名湖の風を知りつくしたレース運びでトップに躍り出ましたが、2日目からの微〜軽風に苦しみ、第5レースでは2度の推進方法違反で優勝戦線から後退。代わって首位に立ったのは、昨年のチャンピオン中村瑠夏選手(横浜ジュニアヨットクラブ)。ムラのある難しい海面を手堅く走りきって、2年連続の優勝を勝ちとりました。「最終レースは優勝を意識してしまい、自分の走りができませんでした。プレッシャーには弱い方なので、これを克服していきたいと思います」(中村選手)と、自分の課題と向き合うコメントを残してくれました。

2人乗り種目のFJ級には、愛知県と静岡県の高校ヨット部5校から16艇がエントリー。7レース中5回のトップフィニッシュを決めた北島稜太郎/樹神滉志(碧南セーリングクラブ)が2位以下にダブルスコア以上の大差をつけて優勝。愛知県の碧南高校と碧南工業高校からなる碧南セーリングクラブは、山口県で開催されている「光ウイーク」に主力選手が参加しているため、この大会に参加したのはセカンドチーム。「主力チームに入れなかったので、この大会ではオールトップで優勝するつもりできました」(北島選手)と、圧勝での優勝にも悔しさを滲ませました。とはいえ、まだ2人とも2年生であり、これからの成長が大いに期待できる選手です。

7人の小中学生がエントリーしたミニホッパー級では、昨年大会で2位に甘んじた小沢聖人選手(山中湖中学校ヨット部)が、7レース中6レースで1位をとり、失点6点というパーフェクトゲームで初優勝を勝ちとりました。4月から甲府の高校に進学することが決まっている小沢選手にとって、これが最後のヨットレース。「ヨット部での3年間はとてもいい思い出になりました」(小沢選手)と振り返りました。

また、本大会のメインレースともいうべきシーホッパー級SRには18艇がエントリーし、実力が伯仲した大接戦が繰り広げられました。序盤戦で頭角を現したのは、高校2年生の吉田慎一朗選手(神奈川ユースヨットクラブ)。少々ムラのある走りながら、パワフルなセーリングで上位を堅持しつつ、第6レースではダントツのトップフィニッシュ。ほぼ優勝を手にしたところでしたが、最終の第7レースでアップウィンドのコース選択で出遅れてしまい、その後、猛追を見せたものの及ばず、中学2年生の亀井嘉文選手(東京都ヨット連盟)に僅差で優勝を奪われました。優勝した亀井選手は本大会初出場。シーホッパー級SRを今年2月に始めたばかりながら、「地元の東京で開催される国体出場が目標」と語るスーパー中学生です。

今大会最多エントリー(27艇)となったOP級

国体少年種目のシーホッパー級SR


FJ級には愛知と静岡県の高校ヨット部5校が参加

唯一強い風の吹いた初日には、沈をする艇もあった


昨年大会から採用されたOP級は大接戦となった

コーチ艇から直接指導する原田龍之介コーチ


被災地の高校からも2艇が参加

被災地の宮城県から参加した気仙沼高校ヨット部

東日本大震災の被災地から参加したのは気仙沼高校ヨット部の2人。気仙沼高校ヨット部は、津波で艇庫やレース艇など全てが流出してしまい、部の存続も危ぶまれていましたが、OBや県連関係者の努力によって活動を継続させ、現在はコンテナハウスを部室代わりに活動しています。シーホッパー級SRで参加した伊藤依里選手は気仙沼高校ヨット部初の女子部員(気仙沼高校はもともと男子校だった)で、震災の直後の4月に新入生として入学し、ヨット部の門を叩きました。毎レース、最下位争いとなった今大会でしたが、最終第7レースでは第1マークに5位でアプローチ。「奇跡が起きました。うまい人についていったのがよかったようです」(伊藤選手)と満面の笑みを見せてくれました。

一方、男子で1年生の齋藤健斗選手は、この大会がデビュー戦。最終成績は最下位ながら、「仕方ないと思います。でも最下位ではなかったレースもあったので、これからも頑張ります」とあくまでも前向き。2人の部員を引率してきた芳賀雄一郎先生は、セーリング競技の経験はなく、ヨット部顧問となってから小型船舶の免許を取得して活動をサポートしてきました。「ヨット部は伝統がある部なので、OBの皆さんが本当に頑張って存続させてくれました」(芳賀先生)と震災後の苦労を語ってくれました。


国体種目が変わる

国体の少年少女および青年女子の一人乗り種目として普及してきたシーホッパー級SRですが、2015年の和歌山国体から国体の一人乗り種目がレーザーラジアル級に変更されることが決定されたため、今後、多くのジュニア/ユース世代のセーラーがシーホッパー級SRからレーザーラジアル級に乗り換えることが予測されます。

また、冒頭でも触れたように、春休みの同時期にジュニア/ユース世代を対象としたレガッタが全国各地で開催されるようになり、参加選手が分散してしまい、大きなフリートでのレガッタが成り立たなくなっているという状況があります。以上のような状況の変化に対して、この大会がどのように対応していくべきなのか、次なるステップに向けての変革が求められています。


上位成績

OP級(参加21艇)
1位 中村瑠夏 横浜ジュニアヨットクラブ
2位 石川 航 なごやジュニアヨットクラブ
3位 神谷 仁 静岡県セーリング連盟浜名湖ジュニアクラブ
ミニホッパー級(参加7艇)
1位 小沢聖人 山中湖中学校ヨット部
2位 熊谷 亮 ジュニアヨットスクール葉山
3位 長岡叶子 B&G高松海洋クラブ
シーホッパー級SR(参加18艇)
1位 亀井嘉文 東京都ヨット連盟
2位 吉田慎一朗 神奈川ユースヨットクラブ
3位 宮田月乃 千葉市立稲毛高校ヨット部
FJ級(参加16艇)
1位 北島/樹神 碧南セーリングクラブ
2位 加藤/大石 相良高校ヨット部
3位 奈須/川内 相良高校ヨット部

※写真は各クラスの総合優勝と女子優勝者



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