全国児童 自然体験絵画コンテスト

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水辺に学ぶ体験レポート:Vol.5

社会福祉法人若竹会 秋和保育園(長野県上田市)

数多くの感動体験をベースに、感性を磨く絵画教室を展開

毎年、数多くの作品を応募いただいている秋和保育園では、日々「感動」をキーワードとした子どもたちの体験機会の創出を行っています。またその体験を、絵画教室の中で作品にすることで「感性を磨き、育てる」というところまでを一連の活動とし、子どもたちの「感動」が成長に繋がっていく保育を行っています。

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体験のキーワードは『感動』

長野県の上田市にある秋和保育園は、乳児から幼児まで、およそ120名の子どもたちが在籍しています。上田市内ということで、大自然に囲まれた環境ではありませんが、日々のカリキュラムやイベント等を活用したさまざまな「体験」に力を入れており、その体験を「絵」で残すまでを一連の活動として行っています。さらに子どもたちの作品は、さまざまなコンテストに応募しているそうで、「水辺の風景画コンテスト」もその一つ。子どもたちにとって表現しやすいテーマであると感じたことから、平成13年頃より毎年、多数の作品を応募しています。前回の第25回では97作品の応募があり、6作品が入選しました。

その狙いについて、竹内栄子園長は「当園では、感受性が高いこの時期に、心に響くさまざまな体験の機会を作ることを第一に考えて保育を行っています。そのキーワードは“感動”です。しかし、感動を感動で終わらせるのではなく、それを二次的に活用するために行っているのが絵画の指導です。それぞれの体験の中で、感じたことを絵で表現し、体験・感動を記憶に残しながら、表現力や感性を磨いていこうと考えたのです」

絵画の専門指導は、平成13年頃から始めており、週に一度、絵画教室から先生を迎え、およそ2時間にわたる本格的なもの。取材を行ったこの日も、年中、年長クラスの子どもたちに向けた、絵画教室が行われており、その様子を含め、お話を伺いました。


『毎日が発見』を積み重ねることが大切

「体験というと、大掛かりなものを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、小さな子どもたちにしてみれば普段の散歩から、園内でのカリキュラム、そのすべてが貴重な体験であり、毎日、驚きや発見(感動)に出会えるのです。また、イベントでも動物園に行くときは好きな動物を探して写生したり、遠足の場合は事前に昆虫や植物を探すという課題を設け、実際に昆虫を捕まえ、植物を観察するなど、子どもたちが注目する対象を設定するようにしています」と竹内園長。

こうした、日常的な生活の中やイベント以外にも、特別な行事も実施しています。その一つが「蛍の放流」への参加であり、「自然体験」という括りの活動では大きな柱となっています。「11月から子どもたち自身が、えさを与えるなどの世話をして、4月になると近くの小川などに放流するというものです。そして6月には、自分たちが育てた蛍が、美しい光を放ちながら飛び回る姿を見て感動してもらうことが、大きなポイントになっています」

この「蛍の放流」以外にも、プロのピアニストをはじめ、吹奏楽などの演奏会、地域行事での子どもたちによる演奏披露、スポーツプログラムの実施、園にポニーを連れてきての乗馬など、自然、芸術、スポーツなど、ジャンルを問わず、さまざまな活動を展開しています。

「自然の中でイキイキとする子もいれば、生き物が好きな子、スポーツが得意な子、音楽に興味を持つ子と、それぞれ興味を示すものには違いがあります。最終的に何を選ぶかは大人ではなく、子どもたちであることを考えると、ひとつのことに集中するのではなく、多くのジャンルで体験機会を提供していくことが大切だと考えています。そしてそれを継続すること。何かしらの発見が毎日あることを心がけています」


絵を描くことは、『感動』を見つけるトレーニング

さて、絵画教室が行われている教室に向かうと、子どもたちはきちんと画用紙に向かい、真剣にクレヨンで下絵を描いていました。竹内園長はこの様子に、「この年代の子は長時間の集中が苦手ですが、絵画の時間はみんな驚くほど集中していますね。先生の誘導も適切だし、子どもたちの注意をうまく引きつけてくれるのですが、やっぱり絵を描くことを楽しんでいるのだと思います」

絵画の指導を行っている小泉博夫さんも、子どもたちの様子について感心しています。「この集中力は、多くの感動をしているからだと思います。基本的に子どもたちの絵は、常識にとらわれることなく自由で、のびのびしていますが、絵と体験をセットにしていることでの相乗効果により、より良いものになっています。園での活動は絵を描くための材料になりますが、絵を描くことが逆に、オモシロイこと(感動)を見つけるトレーニングになっていると思うのです。なぜなら、絵を描くときに子どもたちは、それぞれが感動したことを思い出そうとしますが、それを繰り返すことで、無意識のうちに興味や関心が何であるかを知ることになる。すると、実際の活動では、それを率先して探し出す力になっているのです。だから私の指導は、子どもたちが体験の中で多くの感動するための手助けをしているという感覚なんですよ」

その子どもたちが描いていたのは「水辺の楽しい思い出」、今回の取材に合わせて小泉先生が、このテーマを設定してくださいました。その作品には、家族との思い出、生き物など、さまざまなものが描かれており、子どもたちが園の活動やご家庭で、多くの感動体験をしていることを感じさせるものばかり。秋和保育園が目指す心に響く「感動体験」の創出が、子どもたちの成長へと大きく貢献していることが強く感じられました。

(2014年7月取材)




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