スポーツチャレンジ賞

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YMFS SPORTS CHALLENGE AWARD SPECIAL CONTENTS

INTERVIEW
YUTAKA HIGUCHI × TOMOKO KOJIMA

【対談】樋口豊×小島智子

純粋なスケートの楽しさを知ってほしい

競いつつ、でもお互い勉強しあうことが必要

小島先生は振り付けもされるのですか?

樋口最近はだんだんやらなくなってきました。いろいろな条件が揃わないと難しいですね。自分の好きな曲だったりすれば、発想もわくだろうけれど。

小島振り付けを思いつかれるときって、どんな感じなんですか?

樋口バレエ曲であれば、クラシックバレエのビデオなどをよく見て、スケートに活かせそうな動きを取り込むようにしています。あとは、曲を心と身体で感じたものを表現したいと思っています。

小島浮かんだイメージをどのように生徒さんに伝えていらっしゃるのですか?

樋口自分でやってみせるけれど、この年齢だからそんなにはやれない。やはり、手取り足取り、こういう形にしてみて、という感じでしょうか。

小島選手の雰囲気、性格、容姿、表現の仕方、そういうものを念頭において作られるのですか?

樋口そういう時もあるし、自分が思ったイメージのほうを強調する時もあります。自分のイメージではこうだったんだけど、その子の演技を見て、どうしてもちょっと違う、となると、少し妥協していって。でも、僕の友人の、世界でも1、2を争う優れたコレオグラファーは、妥協もあまりしないです。素晴らしいですよ。

小島先生はその世界的に優れた振付師さんやコーチの方々と日本の選手たちの橋渡しの役を、長野五輪の少し前頃から務めてこられたんですよね。

樋口そうです。JOCの専任コーチをしていたものですから、連盟の人の意向などを聞いて動いていました。当時、振り付けはまだすこし遅れている。そういう気がしていました。

小島私が初めてコーチについたのは海外のNFLのときだったんですが、そのとき以来コーチと選手の相性というのはとても大切だなって思っているんです。次の世代の女の子が「このチームにどうしても行きたい」と望んでも、私はコーチとチーム事情を知っていて、絶対に合わない組み合わせも分かっている。そのマッチングがすごく難しい。

樋口私の場合はシングルのスケーターがほとんどですからね。その子のスケートを見て、この子だったらこういう振付師さんのほうがいいだろうな、と。1人だから、割と合わせやすかった。もちろん全員がうまくいくわけではないのですが。

小島成功した選手の例を教えていただけますか?

樋口本田武史くんとダグ・リーさんでしょうか。当初、スケート連盟は五輪チャンピオンを育てたロシア人の先生に習わせたいと考えていたんです。とりあえず1年ほど続けてみたのですが、その先生は付きっきりでコーチをしたいタイプで、それがどうも彼には合わなかった。それで新しい先生としてダグ・リーさんを紹介したんですけど、結果的にそれがとても合って。彼には愉快で、明るく教えてくれる先生のほうがよかったみたいです。本田選手自身が、優しくて明るい青年ですからね。もちろん厳しく教えるところはとても厳しいコーチでしたけれど。

小島先生は今の時代になっても選手はやはり海外に出たほうがいいと思われますか?

樋口今は日本の選手たちの技術も素晴らしいので、一概に海外出ればいいものではないことは十分わかっているんです。しかし、演技の幅や人間としての領域を広げるためには、日本の良さを活かしつつ、向こうの良い部分を取り入れていく、ということはまだまだ大切なんじゃないかなと思います。競いつつ、でも良いところをお互い勉強しあう、というのが必要かな、と。

小島私も海外に行って改めて思いました。きっと、現地で味わった感覚や思ったことは、インターネットで見聞きしたり、新聞やニュースで知るものでは得られないものだったのかなって。

樋口その良い部分だけをしっかり取り入れることができればいいんじゃないでしょうか。

<次のページへ続く>



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