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[Case9]仲間と楽しむサッカー文化を醸成し、しなやかな心とたくましい身体を育む

提供教材:サッカーボール

学校法人東明幼稚園(福島県会津若松市)

サッカーを軸に身体を鍛え、色々なことに挑戦し、話しあうことで考える力や自主性、向上心が発達

Case9 学校法人東明幼稚園(福島県会津若松市)

サッカーが大好きな先生が、サッカー好き園児を育成し、その子どもたちの楽しい笑顔がサッカー好きな輪を広げ、気づけば幼稚園内に「サッカー文化」が根付いている学校法人東明幼稚園。園の方針を凝縮したというサッカーの指導内容や、多くの園児にサッカーが受け入れられている秘訣は何なのか訪ねました。

Philosophy: 健康的な心と身体をベースに生涯必要とされる「生きる力をはぐくむ」

「生きる力をはぐくむ」を教育理念とする学校法人東明幼稚園では、子ども一人ひとりの個性を生かしながら、できる喜びを味わい自信獲得につながる「挑戦」と、自分の気持ちを表現するとともに相手の考えも受け入れることで、しなやかさと気持ちに折り合いをつけることを習得する「話しあい」をとても大切にしています。また、全身を使ってさまざまな動きを行う「サーキットトレーニング」を週に1度は行なうなど、2012年頃から改めて体力づくりにも力を入れているそうです。「身体をたくさん動かしてたくさん食べてたくさん寝る、そんな正しい生活リズムが生きる力のベースとなる健康な心と身体に欠かせませんから」と副園長の大竹舞先生。なかでもサッカーは、手軽に始められ、身体全体を使った基礎体力づくりに役立つとともに、団体スポーツとしてコミュニケーション能力や協調性を育むことから、園のスポーツカリキュラムとしてだけでなく、課外クラブ活動としても取り組むほど力を入れています。

Plan: サッカーを通じてスポーツをする身体の基盤を作り仲間と一緒に運動をする楽しさ、大切さを伝えたい

「以前より日本サッカー協会からコーチを招いてのサッカー教室を月に1度開催していました。たまたまサッカー好きな子どもたちを集めて試合に出たことがきっかけで、サッカークラブをつくってはどうか、という話が周囲から持ち上がり、私自身サッカーが大好きなこともあって、年長児を中心に希望者を募り『TOMYO.FC(とうみょうフットボールクラブ)』を2012年に設立しました」と話すのは、中村海先生。日頃から年中・年長児を対象にサッカーの指導に当たるとともに、「TOMYO.FC」の監督兼コーチを務めています。

クラブ設立したての折り、教育委員会からタイミングよく飛び込んできたのが、本財団のスポーツ教材提供の案内。用具類が不足していたこともあって「サッカーを通して、プレゴールデンエイジと呼ばれる子どもたちのスポーツをする身体の基盤を作り、仲間と一緒に運動をする楽しさ、大切さを伝えたい」と早速応募したそうです。当時、財団では東日本大震災の被災地支援として、教材提供申請団体のうち被災3県(岩手・宮城・福島)の団体を対象に、子どもたちが身体を動かすきっかけになればと、抽選枠とは別に教材を提供しており、その一環としてサッカーボールが届けられました。

Do: 誰もがサッカーを楽しめる環境づくり

朝の遊び時間のサッカーは、誰でも参加OK。少しでも多くの子どもたちが楽しく身体を動かせるよう「レベルが偏らないようにグループ分けしたり、女子チームや年中児チームにハンデを与えたり、レベルに適したルールをその場その場で作り、仲間と一緒に“みんなが楽しめるような工夫”を心がけている」(中村先生)そうです。

課外活動の「TOMYO.FC」も基本は同じ。みんなが楽しめるサッカーを目指しています。とはいえクラブチームとして、試合に出場するからには、遊び時間のサッカーよりも指導に熱が入ります。時には単調な基礎練習も必要ですが、少しでも楽しく、集中して取り組めるようゲーム性を持たせるほか、何のための練習なのか、子どもが分かる言葉できちんと説明し、目的意識を持たせています。

試合でも、対戦相手のレベルに合わせ、点を取られないようにする、ゴールを決めるなど、まず目標を設定。また試合には上手な子だけがレギュラー化して参加するのではなく、必ず全員が出場させています。「上手でない子を出さないのではなく、その子が入った時にチームとしてどう動いたら勝てるのかを考えさせるんです。勝ちたい気持ちを大切にしながら、勝ち負けだけではないサッカーを目指しています」。そして試合の後は勝っても負けても反省会。どこが良かったのか悪かったのか、どうしたら良かったのかを考えさせそれを他の子どもたちに伝え、また他の子どもの意見にも耳を傾けさせる、問題にぶつかった時も自分たちで解決策を考えさせる……。まさに、日ごろ東明幼稚園として取り組んでいる活動が「TOMYO.FC」に凝縮されているのです。

Check: 年次を超えてサッカーを楽しみながら身体と心を鍛え上げる

最近は、「TOMYO.FC」の子どもだけでなく、色々な子がサッカーを楽しむようになっているといいます。年長児が年中児をゲームに誘ったり時に教えたり、みんなで協力しあって自主的に道具を準備したり片付けたり、がんばっている仲間に声をかけたりと、サッカーを一緒に楽しむ子同士の絆が深まっているそうです。そして年に1度、子どもたち自身がチームを作り“TOMYOワールドカップ”を開催。

また「TOMYO.FC」の子どもたちは、試合で好成績を収めることで自信を深め、それにより、自分の意見をしっかり話したり、相手を思いやる優しさが身に付くとともに、勝つ喜びや、負ける悔しさを体感することでもっと上手くなりたいと向上心も芽生えているのだとか。体力面でも市内の駅伝大会に参加し、出場した4チーム中3チームが表彰台を独占したほどだそうです。そんな成果を確実に上げていることもあって、サッカー指導に対し保護者からも信頼が寄せられているのです。

Action: いつの日かサッカー日本代表選手を!

今後は園庭を芝にし、もっと安心してサッカーを楽しめる環境を整え、そしていつの日か、「TOMYO.FC」から日本代表選手を輩出したいと意欲を見せる中村先生。

昨今、教育現場で子どもたちを指導する先生方が常々感じていること———バランスや俊敏性に欠け体力が落ちている、忍耐力や協調性がなく、集中して話を聞けない、あいさつができない———などが、東明幼稚園では見事に解決されていました。それは毎日ていねいに「話しあい」の場をもち、時に涙がこぼれるようなことがあっても、少しずつステップアップしていけるよう子どもたちと同じ目線で辛抱強く「挑戦」し続ける機会をサポートする先生方の姿があるからこそだと感じました。

(2014年7月取材)