年度別チャレンジャー一覧

助成対象者のチャレンジ概要
前大 純朗
氏名
前大 純朗(まえおすみあき)
助成実績
スポーツチャレンジ研究助成(基本):第17期生
単関節運動と多関節運動による筋肥大効果の違いとその相乗効果を探る

筋量の増加に有効なレジスタンストレーニングは、単一の関節で行う単関節運動と複数の関節で行う多関節運動に分類される。本チャレンジでは、単関節運動と多関節運動ならびにそれらの組み合わせによるトレーニングの筋肥大効果を検証する。健常若齢者を対象に、1)単関節運動のみ、2)多関節運動のみ、3)同日に単関節運動と多関節運動、4)別日に単関節運動と多関節運動、を行う条件を設定し、週2回・12週間のトレーニングによる筋肥大効果を比較する。

成果報告(2024年3月)

本チャレンジでは、レジスタンストレーニングにおいて同一の筋群を対象とした場合でも、運動を単関節運動または多関節運動で行うかによって、筋肥大効果が異なることを明らかにした。具体的には、主に大腿四頭筋を対象とするニーエクステンション(単関節運動)およびレッグプレス(多関節運動)トレーニングのそれぞれにより大腿四頭筋は肥大するものの、その効果は前者の方が大きい(+7.1% vs +4.9%)ことが分かった。一方、ニーエクステンションによる筋肥大効果は大腿四頭筋に限定されていたものの、レッグプレスでは大臀筋や中臀筋、さらには内転筋やハムストリングスでも筋肥大効果が認められ、分析対象とした筋全体(17筋)の筋肥大率でみると、後者の方が有意に大きかった(+2.8% vs +5.9%)。現在は、これらの運動を組み合わせた場合の筋肥大効果を検証している。

スポーツチャレンジ研究助成(基本):第16期生
全可動域または筋伸張位での部分可動域で行う股関節伸展トレーニングの筋肥大と疾走パフォーマンス改善効果

大臀筋を主とする股関節伸展筋群の大きさは、疾走タイムと強い関係がある。従来のトレーニングガイドラインでは、運動を広い可動域(全可動域)で行うことが推奨されているが、近年の研究では、筋が伸ばされた状態(筋伸張位)でトレーニングを行うことで、筋肥大効果が高まることが示唆されている。本チャレンジでは、股関節伸展トレーニングによる筋肥大と疾走パフォーマンス改善効果を、トレーニングを全可動域または筋伸張位での部分可動域で行う場合とで比較する。

成果報告(2023年3月)

本チャレンジの主な成果の一つとして、股関節伸展トレーニングによる筋肥大効果は、トレーニングを筋伸張位での狭い(部分)可動域で行う方が、広い(全)可動域で行うよりも有意に大きいことが明らかとなった。近年の研究では、トレーニングによる筋肥大効果は、運動を筋伸張位で行う方が筋短縮位で行うよりも大きいことが分かっている。本チャレンジの結果は、トレーニングを全可動域で行う場合と比べても、運動を筋伸張位で行う方が、筋肥大効果が大きいことを示すものである。また、疾走パフォーマンスの向上効果は、筋伸張位でのトレーニングの方が大きいものの、変化の程度にトレーニング条件間で統計的な有意差はなく、両トレーニングで同程度に向上した。一般的なトレーニングのガイドラインでは、運動を広い可動域で行うことが推奨されているが、筋伸張位での狭い可動域で集中的に運動を行う方が、少なくとも筋肥大にはより効果的である可能性が高い。

スポーツチャレンジ研究助成(基本):第15期生
関節トルクが最大となる関節角度は筋肥大のための至適なトレーニング実施角度となりうるか?

発揮可能な筋力(関節トルク)は関節角度によって変わる。関節角度を固定して行う等尺性トレーニングは、関節トルクが最大となる関節角度(Optimal条件)で実施される場合が多いが、筋が伸ばされる関節角度(Long条件)でトレーニングを行うことにより、筋肥大効果がより大きくなる可能性がある。本チャレンジでは、この二条件で行うトレーニングの筋肥大効果を比較する。

成果報告(2022年3月)

本チャレンジでは、関節角度を固定して力発揮をする等尺性トレーニングについて、筋肥大を促すうえで最も効果的なトレーニング実施角度を明らかにすることを目的に、トレーニング介入実験を行った。先行研究では、筋が伸ばされる関節角度でトレーニングを行うことで、筋が短くなる条件でトレーニングを行う場合に比べ、筋肥大効果が高まることが報告されている。一方、発揮可能な筋力(関節トルク)は関節角度によって変わるが、筋力が最大となる関節角度と、筋が伸ばされる関節角度条件でのトレーニング効果を比較した研究はなかった。本チャレンジを通して、膝を曲げる筋であるハムストリングスに関しては、「筋力が最大となる関節角度でトレーニングを行うよりも、筋が伸ばされた状態で行う方が、筋肥大効果が大きい」ことが明らかとなった。膝を伸ばす筋である大腿四頭筋についても、現在解析を進めており、一刻も早く研究成果を公表できるよう努めている。