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注目度の高い北京で、「世界記録と金を!」


多川 知希

氏名 多川 知希
競技名 陸上(障がい者スポーツ)/選手

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注目度の高い北京で、「世界記録と金を!」
~障がい者スポーツの未来を自分の走りに託すスプリンター~

「スポーツの魅力は、生身の人間がつくりだす臨場感や躍動感。“障がいがあるのに頑張っている”という驚きや感動だけじゃなくて、僕の走りからスポーツ本来の魅力を感じてもらえるような存在になりたいですね」

障がい者陸上100m(右上肢機能障がいクラス)の日本記録を持つ多川知希さんは、この秋開催される北京パラリンピックで「世界記録を塗りかえての金メダル!」に挑戦します。多川さんのベストタイムは11秒23。これに対して世界記録は10秒72ですから、自ら掲げた目標とはいえ達成するのは簡単ではありません。そこで、0.5秒ものタイム差を埋める対策として主にダッシュ力とスピード、そして体幹の強化に的を絞ってトレーニングを重ねると同時に、「勝負どころの緊張感に慣れるため」に海外遠征も積極的にこなし、さらに多川さんにとっては初めての義手の着用にもトライをしています。「義手は左右のバランスを保つため。やれることは全部やって勝負したい!」という多川さんの強い気持ちの表れと言っていいでしょう。

多川さんは、高校まで健常者とともに競技を行っていました。そうした経歴もあって、自分の記録と向き合う視線は常に冷静かつ客観的です。また右手の障がいが先天的なものであったことも、健常者の記録をものさしとして捉える前向きな思考につながっているのかもしれません。

「僕は日本記録の保持者です。だけど健常者の高校生がこのタイムだと、インターハイへの出場も難しいでしょうね。健常者のアスリートと較べて僕の力が明らかに劣っているとは思わないけど、まだまだ甘いなと感じることはあります。だから僕は10秒台にこだわりたい。健常者のランナーにとっても大きな目標となる10秒台の世界を見ることで、初めて同じ土俵に上がれるんだと思っています」

10秒台、世界記録の更新、そして金メダル。そのすべてを北京の決勝レースで実現するため、ただその一点だけを見つめて多川さんはトレーニングに励んでいます。

多川さんが陸上に打ち込む姿には、一つの大きな願いが込められています。

「うまく言えませんが、日本の障がい者スポーツを元気にしたいというか、そういうことをいつも考えながら競技に取り組んでいます。日本のレベルを上げるためには競技人口を増やさなければならないし、そのためには人々の関心がもっともっと大きくなることが必要です。関心が高まることで競技人口が増えて、その結果、障がい者がスポーツするための環境が少しずつ整って競技のレベルも上がる。ですから、注目度の高いパラリンピックという大会は、そういう意味でもとても重要な機会だと考えています」

「一生懸命に取り組みながらも、スポーツを楽しむ心は忘れたくない」と話す多川さん。大会の会場でもライバルたちに気軽に声をかけ、常に周囲は明るい笑い声に包まれています。陽気なスプリンターの夢への挑戦、その号砲が間もなく北京の空に鳴り響きます。