スポーツ教材の提供

スポーツに親しむ機会の充実を目的に教材を提供
 教材活用アイデアレポート

[Case17]タグラグビーを通じて、スポーツの面白さを子どもたちに伝播

提供教材:タグラグビーセット

IWAKIユニバース(福島県いわき市)

わかりやすく・無理なく・楽しい指導により、運動不足解消を目指すスポーツ教室

Case17 IWAKIユニバース(福島県いわき市)

地域の子どもたちの運動不足解消を目的に始まったタグラグビー教室がきっかけとなり、運動が苦手でも成功体験を積めるタグラグビーを通じてスポーツの楽しさを普及しようと設立された「IWAKIユニバース」。たくさんの子どもたちにタグラグビーを指導する上での心得、魅力、可能性などを伺いました。

Philosophy: 成功体験の積み重ねで運動の喜びを味わわせる「できる」を「楽しい」に!がモットー

「近頃の子どもは、なぜ運動不足なのか? 答えは簡単、スポーツを楽しむことよりも、携帯ゲームの方が断然面白いからです」と「IWAKIユニバース」の代表・早川達彦さん。ご自身も子どもの頃は運動が大の苦手、体育の授業はひたすら苦痛でしかなかったと苦笑い。だからこそ“「できる」を「楽しい」に!”をモットーに掲げ、タグラグビーを軸にスポーツ本来の楽しさを体感できるスポーツ教室としてIWAKIユニバースを2015年4月に設立しました。

「きっかけは、子どもたちの運動不足に危機感を抱いた地元の高校の先生が、福島県ラグビーフットボール協会の普及活動の一環として2009年にボランティアで始めた週に一度のタグ&タッチラグビー教室。親戚の子どもを遊ばせるために通っていたのですが、ラグビーを好きになって欲しいという熱意にあふれたボランティアコーチの姿に影響を受け、気づけば自分も指導する側に。高じて会社を辞めてスポーツ教室を立ち上げてしまいました(笑)。接触プレーがなく安心で、走るのが苦手でも、ボールの扱いが下手でも“とにかく前に進んで、味方にボールをつなぐ”というシンプルで手軽なタグラグビーの面白さに魅了されたんです」

実は早川さん、中学生時代に花園出場をかけて戦う高校生ラガーマンの姿に感動し、高校に進学したら自分もラグビーをやりたい!と決意し入部するも、半年ほどで怪我に見舞われあきらめざるを得なかった苦い経験があるそうです。

「ラグビーへの思いが長年くすぶっていたこともあって、タグの認知拡大・普及に尽力しているのかもしれませんね」

Plan: フットワーク良く活動するために自前のタグセットを

日本ラグビーフットボール協会スタートコーチの資格を取得した早川さんは、週に一度のタグ&タッチラグビー教室や小学校への出張教室、先生方への指導講習など、福島県ラグビーフットボール協会主催の普及活動を一部請け負っています。最近では総合型スポーツクラブや学童保育のプログラムの一環として、スクール開催の依頼が増えており「自前のタグラグビーセットがあれば、各所からの要望を受けてフットワークよく対応できる」と当財団の教材提供に申し込んだのだそうです。

Do: 「わかりやすく」「無理なく」「楽しく」

年齢も運動能力もタグラグビーの習熟度もさまざまな子どもを対象に指導している早川さんの心得は、「わかりやすく」「無理なく」「楽しく」。タグラグビーという競技を通して、スポーツの楽しさを伝え、身体を動かすことを好きになって欲しいとの想いから「ボールを持ったらとにかく前へ」「ボールを前に落としたり投げるのはNG」「タグを取られたら仲間に向かってボールを渡す」という三原則をベースに対象者の習熟度や年齢に合わせて臨機応変にルールを変更するそうです。

「例えば幼稚園児から高学年までが一緒にプレーする時には、幼稚園児はタグなしにしたり、低学年の子のノックオンはノーカウントにする、また男女混合の時には、女の子に必ずパスを回すなど、とにかく全員がプレーに参加できるよう心がけています」と早川さん。

また総合的に運動能力を高めるコーディネーショントレーニングにも注力。タグボールを上に投げてその間に何度手を叩けるか、ボールを抱えてケンケン足をしたり、ボールを持った鬼ごっこを行ったりと、ゲーム感覚で身体を動かし、楕円のボールに慣れるような運動遊びに大半の時間を費やしているのです。さらに参加人数が多い場合は、チーム分けを行なって、経験値や体力差などをならし、みんなが楽しくプレーできる工夫をこらしています。

Check: 指導時は叱らず、ポジティブな言葉遣いを心がける

「子どもたちがこの先、中学、高校と進んで行く中で、部活動などでくじけそうな時に、幼い頃に遊んだタグは面白かったなぁ、本来スポーツって楽しいんだよなと思い出してもらえるような指導を心がけている」と話す早川さん。そのポイントは、危険につながる行為や仲間を貶める行動以外は、どんな時でも叱らないこと、そしてポジティブな言葉遣いです。「タグの合図が出たら、“止まって後ろを向いてパス”という表現ではなく、“近くの仲間を見てやさしくパス”と言い換えて指導するだけで、子どもの動き方がのびのびとしてくるんです。ボールを頻繁に落としてしまう子どもには、“ボールをよく見よう”“手を離す位置を考えてみよう”などと、小さい失敗は気にせず次に上手くいくにはどうすればいいか、改善点のヒントを与えるだけで、子どもなりに考えて挑戦します。それによってなし得る小さな成功体験の積み重ねが、楽しいという感情を醸成し、スポーツの楽しさを育んでいく」と考えているそうです。

Action: 2019年にはタグラグビーの認知度100%を目指す

当面、タグラグビーの認知度向上を活動目標に掲げていると目を輝かす早川さん。「ラグビーワールドカップが日本で開催される2019年には、タグラグビーの国内認知度100%を目指したいですね。ドッジボールやサッカーと同じように、タグラグビーも学校の休み時間に子どもたちが楽しむ競技になってくれたらいいなぁ。その一方で、タグラグビーだけでなく楽しく身体を動かせる他のスポーツも取り入れて、学童保育のスポーツ版へと事業内容を拡大。携帯ゲームよりもスポーツの方が楽しい!と言う子どもを増やしていきたい。そしてゆくゆくは指導対象も拡大し、総合型スポーツクラブに発展させていければ……。いつの日か、日本代表に選ばれるような選手を輩出できたら嬉しいですね」と次から次へと今後の活動への思いが溢れ出る早川さん。

スポーツ本来の持つ楽しさを子どもたちに伝える早川さんの活動は、ラグビーへの情熱に満ちた周囲の協力を得ながら、着実に広がりをみせているようでした。

(2016年1月取材)