セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

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第25回(平成29年) レースレポート

大会史上最多の128艇・162人のジュニア/ユースセーラーが出場

公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団(YMFS)では、3月18日(土)から20日(月)の3日間にわたり、静岡県立三ヶ日青年の家(浜松市)において「第25回 YMFS セーリング・チャレンジカップIN浜名湖」を開催しました。

1993年に「ジュニアチャンピオンレガッタ」として行われた第1回大会から積み上げてきた歴史が四半世紀という大きな区切りを迎えた今大会には、メモリアルイヤーに相応しく、大会史上最多となる128艇・162人がエントリー。

2008年に大会名称を「セーリング・チャレンジカップ」へと変更し、大会の主たる目的をチャンピオンシップから技術向上・育成へとシフトさせた本大会の特徴は、国内の一流コーチによる実践的な指導が実施されること。今年も春休みの3日間に、浜名湖で大きく成長するジュニア/ユースセーラーたちの姿を見ることができました。

期間2017年3月18〜20日
会場静岡県立三ヶ日青年の家(静岡県浜松市)
共同主催公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団、NPO法人静岡県セーリング連盟
参加艇OP級:初級14艇/上級26艇、ミニホッパー級:17艇、レーザー4.7級:27艇、レーザーラジアル級16艇、FJ級:11艇、420級:17艇

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昨年と同じ種目構成

ユースセーラーの多くが目指すインターハイや、国体の少年種目として採用されるクラスは、ここ数年で大きく変わりつつあります。インターハイでは、2015年からFJ級に加えて420級が採用され、来年からはFJ級に代わり一人乗りのレーザーラジアル級が採用されることが決まっています。

目まぐるしく変わる状況に合わせ、本大会の艇種も年ごとに変更を加えてきました。昨年大会では2018年のインターハイから採用されるレーザーラジアル級を採用するとともに、今年を最後にインターハイ種目から姿を消すことになったFJ級についても種目として残しました。これは、現時点でFJ級に取り組む高校生の活動の場を狭めないという配慮はもちろん、これまで日本のユースセーラーの育成に貢献してきたFJ級というクラスおよび、FJ級で活動してきた過去のユースセーラーたちに対する敬意でもあります。

今大会で行われたのは、全6艇種/7種目の競技。時代を先んじて新しいものを取り入れていくことと同時に、これまでの歴史を担ってきた人や物にも正当な評価を与えたいというのが、四半世紀の歴史を刻むことになった大会のフィロソフィーでした。

最高のスタジアムとしての浜名湖

初日の3月18日は3〜4m/sの軽風から徐々に風速が上がり、午後は5〜6m/sというすべてのセーラーにとって最も走りやすい中風コンディション。2日目の19日は朝から西北西の強風が吹き荒れ、瞬間最大風速では12m/sという突風が襲うサバイバルコンディション。そして最終日の20日は前日の強風が嘘のような無風の状態からそよそよと吹き始めた1〜2m/sの微風となり、体力よりも神経を消耗するようなナーバスなコンディションと、浜名湖というロケーションは、今年もまたセーラーの技量を試すようにあらゆる風速の風を吹かせました。サッカーなどのフィールドスポーツでは、グランドコンディションが選手のパフォーマンスに大きな影響を与えると言われますが、この点で早春の浜名湖は超一級のセーリング・スタジアムと言えそうです。


OP級

昨年から上級/初級というクラス分けが採用されているOP級には、初級クラスに14艇、上級クラスに26艇がエントリーしました。セール面積が小さくアンダーパワーなこのクラスにおいては、例年体重の軽い女子選手の活躍が目立ち、2012年大会から3大会連続で女子選手が優勝してきましたが、昨年大会では初めて男子選手が優勝しました。しかし、今年は再び上級/初級ともに1・2位を女子選手が独占。成績上位者には全日本選手権への推薦が与えられる上級クラスは、上位争いに7艇がひしめく大混戦。その接戦を制したのは今春から中学に進学する杉浦ふう華選手(海陽海洋クラブ)。一方、初級クラスを制したのは小学校5年生の内田幸恋選手(清水ヨット・スポーツ少年団)。6レース中4回トップフィニッシュでダントツの優勝を勝ち取りました。

ミニホッパー級

1993年の第1回大会から採用されている唯一のクラス。すでにメーカーによる製造は行われていないものの、他に類を見ないオリジナルなデザインとサイズにより、根強い愛好者によって支持されているクラスでもあります。特に、予算規模の小さい中学校の部活動では、耐用年数の長い堅牢なハルを持つこのクラスで活動しているクラブが多いようです。今大会は久々のエントリーとなった射北中学校ヨット部が8選手を送り込み17艇がエントリー。この伝統のクラスを制したのは、第1回大会から参加している山中湖中学校ヨット部の高村龍英選手(中学2年生)。「筋力トレーニングに力を入れた結果なのか、強風コンディションでも疲れることなくレースに集中することができた」と振り返りました。

レーザー4.7級

世界選手権派遣選手の選考対象レガッタに指定されたこともあり、昨年を上回る27艇がエントリー。前回大会では三浦凪砂選手(静岡県セーリング連盟)に惜敗して2位に終わった江の島ヨットクラブジュニアの桐井航汰選手(高校1年生)が全8レースでトップフィニッシュするというパーフェクトゲームで雪辱を果たしました。世界選手権への切符をほぼ手中にした桐井選手は「初めての世界大会ですが、ゴールドフリート入りを目標に精一杯頑張りたいと思います」と抱負を語ってくれました。一方、連覇を逃した三浦凪砂選手は、男女総合2位で女子二連覇を達成しました。

レーザーラジアル級

前回大会は6艇の出場に留まりましたが、今年は16艇がエントリー。日本のシングルハンダークラスの将来をリードすることが嘱望されるセーラーたちによって、レベルの高いセーリングが披露されました。中でも抜きん出た走りを見せたのは和歌山ユースセーリングクラブの西尾拓大選手(高校1年生)。軽風の初日こそ出遅れたものの、10m/sオーバーの強風コンディションとなった2日目は4レース中3レースでトップフィニッシュを決め、世界選手権への切符をほぼ手中に収めました。女子では、2015年の国体で優勝経験のある菅沼汐音選手(高校2年生)が、男女総合で4位に入る成績で女子優勝を勝ち取りました。

420級

今年は全国10の高校ヨット部から全17艇(うち女子3艇)がエントリー。優勝を争ったのは、静岡県最古の高校ヨット部で、近年部員数も増加して古豪復活を予感させる熱海高校と、愛知県の碧南高校と碧南工業高校の二校のヨット部を中心とした碧南セーリングクラブ。杉浦涼斗/山田大夢組が微風から10m/sオーバーの強風まであらゆる風域で行われた全8レースでトップフィニッシュという異次元の走りを見せつけました。

FJ級

インターハイから姿を消すことになったFJ級には11艇がエントリー。こちらも男女ともに碧南セーリングクラブ(男子優勝:鈴木三史朗/石川魁人、女子優勝:黒川琴音/清水絢佳)が優勝を飾り、二人乗りクラス4クラスを碧南勢が独占しました。420級では男女スキッパー/クルーの4人中3人が海陽海洋クラブで小学生からヨットを始めたジュニア出身選手であるのに対し、FJ級の選手たちは全員が高校からヨットを始めた選手ばかり。FJ級男子ヘルムスマンの鈴木選手は「420級よりも上り角度がいい。自分は風を読んだ駆け引きで勝負することが好きなので、FJ級の方が面白い」とその理由を語りました。


チャーター艇というシステムが持つ可能性

今大会、久々にエントリーしたのが射北中学校ヨット部。総勢12名でエントリーできたことには、ある理由がありました。顧問の荒井克範先生はヨット経験がなく、実質的な指導は広島大学ヨット部出身の村井美和子さんが行っています。「日本海に面した練習環境なので、冬場は強風が吹くと練習にならない。浜名湖はこの時期にとてもいい風が吹くので、ぜひともこのレガッタに参加させたかった」と村井さんが切望する一方、顧問の荒井さんは「遠征費の問題があった。しかし、主催者側によるチャーター艇システムによって参加することが可能になった」と予算のやりくりの苦労を語ってくれました。

中学や高校の部活動としてセーリングに出会った子供たちは、その予算の枠組みの中でしか活動することができません。世界の頂点で競い合うためには、最高の状態に保たれた最新のレース艇を用意することが必要というのも一つの真実である一方で、できるだけ多くの子供たちがセーリングの魅力に触れる機会を増やすためには、競技活動に掛かるコストを低く抑える必要があることもまた真実です。2015年のインターハイから採用された420級の全艇チャーターというシステムの狙いも、まさにそこにあります。

サッカーやバレーボールのように、ユニフォームとボールさえ持っていけば世界中どこでもプレーできるという状況をセーリング競技において創出することができれば、セーリングの競技人口は今とは比べものにならないほど増加するはずです。古い艇体で元気よく走り回るミニホッパー級を見て、また協会からレンタルした古いレーザー4.7級で、オールトップの離れ業で優勝を決めた桐谷選手を見て、チャーター艇システムの可能性が広がりを見せた大会でした。


大会の様子

上位成績

OP級 初級(参加14艇)
総合1位・女子1位 内田幸恋(清水ヨット・スポーツ少年団)
総合2位 栗原こまき(射水市立射北中学校ヨット部)
総合3位 山谷聖周(山中湖中学校ヨット部)
OP級 上級(参加26艇)
総合1位・女子1位 杉浦ふう華(海陽海洋クラブ)
総合2位 須永笑顔(YMFSジュニアヨットスクール)
総合3位 市川太陽(静岡県セーリング連盟浜名湖ジュニアクラブ)
総合4位 園村浩輔(YMFSジュニアヨットスクール)
総合5位 高橋果乃子(海陽海洋クラブ)
総合6位 川前優太(海陽海洋クラブ)
ミニホッパー級(参加17艇)
総合1位 高村龍英(山中湖中学校ヨット部)
女子1位 牧田瑚夏(射水市立射北中学校ヨット部)
レーザーラジアル級(参加16艇)
総合1位 西尾拓大(和歌山ユースセーリングクラブ)
女子1位 菅沼汐音(レーザー江ノ島フリート)
レーザー4.7級(参加27艇)
総合1位 桐井航汰(江の島ヨットクラブジュニア)
総合2位・女子1位 三浦凪砂(静岡県セーリング連盟)
総合3位 前田海陽(広島セーリングスクール)
FJ級(参加11艇)
総合1位 鈴木三史朗/石川魁人(碧南セーリングクラブ)
女子1位 黒川琴音/清水絢佳(碧南セーリングクラブ)
420級(参加17艇)
総合1位 杉浦涼斗/山田大夢(碧南セーリングクラブ)
女子1位 杉浦春香/稲吉風生(碧南セーリングクラブ)