セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖

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平成26年・第22回 レースレポート(総括)

期間 2014年3月20・21・22・23日
会場 静岡県立三ヶ日青年の家(静岡県浜松市)
共同主催 公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団(YMFS)、NPO静岡県セーリング連盟
参加艇 OP級:21艇、ミニホッパー級:4艇、シーホッパー級SR:28艇、FJ級:25艇
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春休みに開催されるレガッタの先駆けとして全国のジュニア/ユース世代のセーラーたちの目標となってきた本大会ですが、近年は全国各地で春休みを利用したレガッタが同時期にいくつも開催されるようになり、トップレベルのチャンピオンシップという位置づけから、セーリングの楽しさやヨットレースの面白さを追求するイベントへと生まれ変わり、今年は18クラブ、78艇、103選手が参加しました。今年は2人乗りのFJ級の参加が多く、参加選手数が昨年より25名増となりました。

今年も大会を通して北西の強風が吹き、レガッタ初日の21日は瞬間最大風速が18m/sとなり全レースが中止となりましたが、翌22日からは10m/s前後に落ち着いたため2日間で全5レースを実施しました。


憧れのメダリストによるレクチャー

この大会の目玉が、毎年行われている国内トップセーラーによる特別指導と、レース後に行われる勉強会です。今年の招聘コーチは、アテネオリンピック(2004年)男子470級で、日本では男子初となる銅メダルを獲得した轟賢二郎さんと、(公財)日本セーリング連盟(JSAF)オリンピック委員会トレーナーとしてアテネ五輪セーリングチームを担当された江口典秀さんのお二人。

強風のため全レースが中止となった21日は、早めに江口さんによる勉強会が開催されました。これまで招聘されたコーチは実際に競技をするアスリートがほとんどで、競技を裏方として支えるトレーナーとしての勉強会は今回が初めて。江口さんは、もともとスキーのアルペン競技の選手として活動し、その経験をもとに日本男子アルペンスキーチームのトレーナーとして独立されました。「スキーとセーリングは、バランスを取りながら競技をするということで共通項が多く、アルペン選手の多くが(スキーの)シーズンオフにウィンドサーフィンなどのセーリングに取り組むケースは多いんです。私自身も、選手時代にセーリングを行った経験から、セーリング競技のトレーナーも行うようになりました」(江口さん)。

この日の勉強会で江口さんが講義した内容は、セーリングのためのトレーニングということ以上に、長時間ハイクアウトしても疲れにくい体の使い方や、そのコツといった、明日からのセーリングにすぐに応用できる実践的な内容で、選手たちは初めて聞く内容に興味津々。その骨子は「いかにバランスのいい姿勢を保つか」という点で、実際にバランスボールを使用して、自分たちのバランスがどれだけ正しくて、どれだけ狂っているかを身をもって体験する場面もありました。

翌22日からは、アテネ五輪銅メダリストの轟賢二郎さんが来場し、レースが行われている現場にコーチボートを出し、スタート前やフィニッシュ後を中心に、轟さんが気づいた部分を選手に直接指導。その内容は極めてベーシックなものですが、メダリストが発する言葉には重みがあるようで、選手たちは真摯な面持ちで指導に聞き入っていました。

レース後に行われた勉強会では、轟さんが高校生の頃に大きな疑問だった、ヨットレースのコース引きについての講義が行われました。その内容は、気圧配置から空気の対流、レースが行われる海面の地形など、風が吹く原理から解き明かしていく壮大なもので、そうしたことに興味を抱き始めた選手たちは食い入るように聞き入り、講義が終了した後も夕食の時間ギリギリまで轟さんを囲んで質問攻めにする場面も見られました。


強風シリーズとなった22回大会

毎年、北西の季節風が吹く本大会ですが、実際には軽風となる日も混じり、様々なコンディションのレースが行われることになります。しかし、強い冬型の気圧配置が日本列島を覆った今年は、初日から最終日まで10m/sを超える北西の季節風が吹き続ける正真正銘の強風シリーズとなりました。

例年、女子選手も上位に食い込むことの多いシーホッパー級SRでは、トップ10を全て体力に勝る男子選手が独占する結果となりました。特に、トップ3を争った中学3年生トリオのレベルは拮抗しており、レース毎に順位が入れ替わる接戦で、最終日の2レースを1-2位で走りきった杉浦涼斗選手(海陽海洋クラブ)が、2位の豊島以知朗選手(レーザー光フリート)を僅か1点差で抑えて優勝しました。普段はシーホッパー級SRよりセールエリアの小さなレーザー4.7級で活動しているという杉浦選手ですが「どちらかというと強風コンディションの方が好き」という言葉どおり、少し大きめのシーホッパー級SRを自在に操っての優勝でした。

4人の中学生がエントリーしたミニホッパー級では、はるばる鳥取県からエントリーした森田智典選手(湖山池ドリームジュニア)が5レース全てトップフィニッシュというパーフェクトゲームで優勝。普段は浜名湖と同じ汽水湖である湖山池でセーリングしている森田選手は、「湖山池ではこんなに強風が吹くことはないので、最初のうちは少し怖かった」と言いますが、後半戦では強風にも慣れ、楽しくセーリングすることができたようです。

この大会の種目として採用されて3回目となるOP級には、中学生5名、小学生16名の全21艇がエントリー。体重の軽い小学生が多いこともあり、10m/sオーバーの強風が吹き荒れた22日はスタートを見送った選手も多かったのですが、優勝争いには2名の女子選手が名乗りを上げる健闘ぶり。OP級の場合、セールエリアが小さいことからそれほど大きな体格は必要なく、さらにこの世代は女子選手の方が体格が大きいケースも多く、強風シリーズにも関わらず、女子選手の活躍が目立ちました。優勝したのは地元浜名湖で活動している三浦凪砂選手(静岡県セーリング連盟浜名湖ジュニアクラブ)。小学校1年生からOP級に乗り始めたというだけあって、OP級のハンドリングは堂に入ったもの。身長162cm、体重50kgと男子に負けない体格で、強風のなかでも堂々とした走りっぷりを見せていました。

愛知県や静岡県の高校ヨット部が数多く参戦したFJ級には、6校の高校ヨット部から25艇が参加しました。なかでも愛知県の碧南高校と碧南工業高校2校のヨット部による「碧南セーリングクラブ」からは最多の12艇がエントリー。昨年は、山口県光市で行われている高校生を対象としたレガッタ「光ウィーク」と日程が重なったこともあり、こちらには一部の参加にとどまりましたが、今年はクラブの全チームが本レガッタに出場。大会終了と同時に山口県に移動し、光ウィークに参加するという強行軍。その甲斐あって、FJ級の上位6チームを碧南セーリングクラブが独占するという圧勝ぶり。同じクラブ同士とはいえ、インターハイのレギュラー争いがあるため、彼らにとっては負けられない戦いです。結果は、碧南工業高校チームの岩月大空/酒井幹人選手が5レース中4レースでトップフィニッシュという圧勝ぶりで優勝。「浜名湖でのレースは初めてですが、いつも練習している衣浦湾(碧南市)に似ていたので、走りやすかった」(岩月選手)。昨年のインターハイでも9位(ソロ)に入った実力派で、今年のインターハイでは優勝を狙うとのことです。


セーリングの楽しさを伝える大会に

かつて、ユース世代のシングルハンダー(一人乗りディンギー)を対象とした全国規模のレガッタがなかったとき、春休みの時期に開催される本大会は、シングルハンダーの登竜門として機能し、オリンピックセーラーをはじめとする日本を代表するトップセーラーを育成してきました。

そして、時代を重ねるうちに、ユース/ジュニア世代を対象とするレガッタも増え、本大会が担うべき役割も変化しつつあります。毎年、オリンピックセーラーなどを特別コーチとして招聘することなども、そうした新しい役割を担うための試みの一つです。

こうして新しいイベントとしての姿を模索していく間にも、100名近いセーラーたちがこの大会に毎年エントリーしてきます。現在、この大会にエントリーしてくるセーラーのレベルは、かつてのようなトップを目指す層ではなく、セーリングに取り組んで日も浅く、幅広くセーリングを楽しみたいと考えているセーラーたちが多くなっています。彼らが求めているものは、この大会を通じてセーリングの楽しさを知り、もっと深くセーリングを知りたいという知的欲求を満たしてくれることに他なりません。セーリングへの理解を深めることで次なるステージ(それはオリンピックなのかもしれないし、ヨットでの世界一周なのかもしれない)への夢を膨らませる、そのための一助となるイベントへと成長しつつあるのが本大会の特徴です。


上位成績

OP級(参加21艇)
1位 三浦凪砂 静岡県セーリング連盟浜名湖ジュニアクラブ
2位 松原穂岳 海陽海洋クラブ
3位 小林 奏 宮津ジュニアヨットクラブ
ミニホッパー級(参加4艇)
1位 森田智典 湖山池ドリームジュニア
2位 谷口 央 湖山池ドリームジュニア
3位 御厩夏颯 B&G高松海洋クラブ
シーホッパー級SR(参加28艇)
1位 杉浦涼斗 海陽海洋クラブ
2位 豊島以知朗 レーザー光フリート
3位 児玉洋輝 なごやジュニアヨットクラブ
FJ級(参加23艇)
1位 岩月大空/酒井幹人 碧南セーリングクラブ
2位 兵藤隆史/稲吉航洋 碧南セーリングクラブ
3位 杉浦悠也/坂口拓巳 碧南セーリングクラブ
女子優勝 内藤風香/川邊朱里 碧南セーリングクラブ

※写真は各クラスの総合優勝と女子優勝者


大会の様子

開会式の後、みんなで気合いを入れる選手たち

特別コーチの江口トレーナーからバランスボールの使い方をレクチャーされる選手たち


メダリストの轟講師がレクチャーを始めたら、選手たちが輪になって集まってきた

22日、海上で選手たちに直接指導をする轟講師


ハンディGPSを搭載して、その日のレースの動きをバーチャルソフトで再現する

22日のレース後、勉強会でコースの引き方をレクチャーする轟講師


選手宣誓をする静岡県立相良高等学校ヨット部主将

新種目となって3大会目となったOP級には小学生を中心に21艇がエントリー


28艇がエントリーしたシーホッパー級SR

25艇がエントリーしたFJ級は上位を碧南勢が独占


シリーズを通じて強風が吹き荒れ、レース中も沈をする選手が続出

はるばる鳥取からミニホッパー級に2艇エントリーした湖山池ドリームジュニア


第22回「セーリング・チャレンジカップ IN 浜名湖」は、
スポーツ振興くじ助成金を受けて実施しています。

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