スポーツチャレンジ賞

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YMFS SPORTS CHALLENGE AWARD SPECIAL CONTENTS

MIYUKI KANO × YOKO ZETTERLUND

指導する立場に立ってみて見えてくるもの。

ゼッターランド同じ強豪と呼ばれる学校でやっていても、それぞれの監督さん、年代によっても得るもの、学ぶものは違うと思いますね。例えば私が所属していた中学、高校のチームは、選手が監督に追い込まれるというよりは、自らを追い込んでゆく、という感覚で練習に取り組んでいました。やらされているというよりは、自ら望んでやる、って感じです。もちろん毎日の練習が厳しすぎて、泣きそうになったこともたくさんありましたけど、笑。

狩野私の場合は、やらされているのか、やりたいのか、そんなことも考えないような環境でやっていました。走れと言われれば走る、そんな風ですね。監督さん、そして先輩の方々、ものすごくきつい部分もありましたし、理不尽なルールも今になって考えてみれば山のようにありました。でも、まず最初から選手の自主性に任せて全てやらせる、と言っても限界はありますよね。

ゼッターランドこうして指導する立場に立ってみると、ものの見え方はまた変わってきます。技術を習得するためには、どうしても一定量の練習をこなさなければいけない。そのレベルにたどりつけなければ、試合にすらならない。そのレベルにまず達するために、選手たちに考えさせないわけではないけれど、まずは監督のオーダー通りにやるべき、となるのかもしれません。

狩野当時はほとんど毎日、なんでこんなことしなきゃいけないんだろう、って練習がありました。もちろん時代も違いますから、当時私たちが受けた指導法を今の時代にそのまま適用できるとも思いません。ただ、今おっしゃったように、最初から、じゃあやりましょう、と言われてできる子は一人もいないんです。ある程度できるところまでは手取り足取り連れて行ってあげないと難しい。自分で考えることはいいのですが、それにもレベルというものがあります。高校生の年代で自分で考えてやれ、と言われて、練習や試合を自分たちだけで完璧にこなせる人はほぼ皆無だし、間違った方向に行きがちだと思うんです。

ゼッターランドそれはデフバレーの指導にも言えることですよね。

狩野はい。今うちのデフの選手たちは、素人とは言いませんが、しっかりと教えられてこなかった選手がたくさんいます。バレーボールを始めた時にしっかりと教えてもらうことでしょ、というものすら経験していないんです。そういうレベルでは、こちらから一から九くらいまでセッティングしてあげなければいけないな、と思ったりもします。

ゼッターランド私は「バベル」という映画での技術指導がきっかけで、デフバレーとの接点ができたんですよ。主人公の一人、菊地凛子さんが演じる少女がデフバレーをやっている、という設定だったんです。

狩野へー、そうなんですか!

ゼッターランド監督はスペイン人の方で、主演は役所広司さん、他にもブラッド・ピットさん、ケイト・ブランシェットさんも出演されていました。そのお仕事がきっかけでデフバレー、あるいはデフリンピックというものの存在を知って、そこから聾学校の選手たちや先生たちと一緒に活動させていただいて。ジャパンの合宿にも足を運んで、練習を見させていただいたり、話をさせていただいたり。

狩野すごい役者さんの顔ぶれですね!どんな技術指導だったんですか?

ゼッターランド撮影まで一ヶ月半あるかないかだったんですが、一番はサーブを打つ場面だったんですね。フローターは無理だからサイドハンドで打つというのを教えたりしたんですが、でも今考えてみるとサイドハンドもけっこう難しいものね、笑。

狩野経験者として言うと、サイドハンドもそう簡単にはできるようにならないと思いますけど、笑。

<次のページへ続く>



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