中間報告会

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2018年9月21日

平成30年度 第12期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

平成30年度 第12期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会

9月21日(金)、御茶ノ水トライエッジカンファレンス(東京都)にて平成30年度 第1回目の中間報告会を実施しました。体験チャレンジャーの君嶋愛梨沙さん(ボブスレー・陸上/選手)、研究チャレンジャーの大塚俊さん、高橋祐美子さん、山口翔大さん、渡部喬光さん、小木曽航平さんの6名が参加。それぞれが上半期のチャレンジ状況を報告するとともに、下半期の活動予定について発表しました。

報告会終了後には、市村志朗先生(東京理科大学)をファシリテーターに迎え、第2回中間報告会にも参加するチャレンジーも加わって、心・技・体の「体」に着目し、「スポーツを実践している時の体」をテーマに座談会を開催。研究者とアスリート、それぞれが考え、感じている「体」について発表しました。その後はグループ内外で共有して理解を深めあう活発な議論が行われ、チャレンジに活かせる多くのヒントを得ることができたようです。

参加いただいた審査委員

浅見俊雄委員長、遠藤保子委員、川上泰雄委員、草加浩平委員、定本朋子委員、増田和実委員、丸山弘道委員 (五十音順)


大塚俊さん(研究)

「私が着目している深筋膜とは、筋肉と脂肪組織に挟まれる膜状の組織ですが、生体を対象とした研究はなく、身体運動と深筋膜の特性の関連性は明らかになっていません。そこで本研究では、様々な背景を持つ人を対象に、身体運動と深筋膜の特性の関連性について調査することを目的としました。第1四半期は、健常な成人男性14名を対象に身体運動中の深筋膜の硬さを計測する実験を実施。安静時と様々な強度での力発揮における深筋膜の動態を長軸、短軸で調査しました。この結果、強度が増加するにつれ硬くなること。長軸と短軸では、同じ部位でも長軸の方が硬くなりやすいことが示され、深筋膜では長軸方向は安定性を高めつつ、短軸方向は骨格筋の変形に柔軟に対応していることがわかりました。このデータを解析し国際学会への参加申請を行った結果、11月にドイツで開催される学会での口頭発表が決まったほか、深筋膜に関する論文が国際誌で採択・出版されました。今後は原著論文の執筆・投稿に向け国内外の有識者と議論を重ねていきます」

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高橋祐美子さん(研究)

「運動時の重要なエネルギー源はグリコーゲンであり、運動によってグリコーゲンは使われ減っていきます。しかし、どう回復させるかは、グリコーゲンをたくさん作ることに加え、糖質のエネルギー利用を抑えグリコーゲンを節約することも重要だと考えました。そこで注目したのが、糖質のエネルギー利用を抑えられたなどの報告があるケトン体です。本研究ではこの一種、βヒドロキシ酪酸を用い、まずケトン体がグリコーゲンの回復を促進できるかを検討し、回復の促進が認められる結果を得ました。続いて、120分培養を終えた筋肉を用い、ケトン体が糖質エネルギー利用を抑えるかを、糖質エネルギー利用に関わる酵素の活性化の指標となるリン酸化を測定しましたが、その効果は見られませんでした。そこで 30分・15分という時間で培養した筋肉で行った結果、15分ではケトン体がグリコーゲンの回復を促進し、糖質エネルギー利用抑制に働いていることが示唆されました。追加実験としてケトン体を骨格筋に取り込むタンパク質を阻害するとグリコーゲン回復促進効果は打ち消されるかについて検討していきます」

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山口翔大さん(研究)

「激しい運動や不慣れな運動から数時間後に発症する筋肉痛ですが、これを客観的に評価する方法としてバイオマーカーという手法があります。しかし現在の主流は採血する必要があり、被験者の負担が大きいなどの問題がありました。ところが近年、激しい運動を行うとタイチンというタンパク質の一部が分解され尿中に遊離することが報告されており、このタイチンが新規バイオマーカーとして着目されたのです。本研究では、タイチンのバイオマーカーとしての妥当性を担保することを目的としました。筋肉痛は伸張性収縮のみで発症するという先行研究を元に、伸張性収縮と短縮性収縮の運動をそれぞれ実施し、伸張性収縮の運動のみ筋肉痛が発症することを確認。その上で、両運動後にタイチンの尿中濃度を測定した結果、伸張性収縮の運動の時のみ濃度が高まりました。また、現在主流となる手法と強い相関関係があることもわかり、タイチンがバイオマーカーになりうることが示されました。ただ、被験者が6名ということで、今後は追加実験を重ねさらなる分析を行う予定です」

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君嶋愛梨沙さん(選手)

「陸上競技・ボブスレーの二刀流で、日本で5人目となる夏冬両五輪出場を目指しています。私は陸上選手として日本体育大学に進み、ボブスレーとの出会いは大学3年時。トライアウトを受け代表に選出され、初の大会となるヨーロッパカップで優勝。さらに世界選手権では日本男女史上初の7位入賞と2ヶ月で世界と戦えるまでになりました。陸上では、4年時に関東インカレ100m優勝や日本インカレ100mの3位といった成績を残し、現在は日本体育大学大学院の1年生として両競技を続けています。ただ今年は怪我の影響もあり、陸上では日本選手権100mで予選敗退するなど思うような成績を残せていません。一方のボブスレーは月1回の代表合宿をこなしながら、全日本ボブスレープッシュ選手権で優勝。また新たにスケルトンにも挑戦し、全日本スケルトンプッシュ選手権で優勝しました。今後は三刀流も視野に、ボブスレーは国内合宿、スケルトンは海外遠征で力をつけ、陸上はこの相乗効果で来年度の日本選手権の出場資格を獲得すべく自己ベストの更新を目指します」

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渡部喬光さん(研究)

「イップスとは精神疾患ではなく、同じ動作の反復を伴う競技のある決まったシチュエーションにおいて、反射的でなく自分のタイミングでできる簡単な動作をミスしてしまう症状のことだとされ、明確な診断基準もありません。本研究では、発症の原因究明、各個人ごとに最適化された非侵襲的治療や予防策の確立を目指しています。上半期は、軟式野球やソフトボール、ゴルフ、弓道など被験者を集め、予備面接として、発症時期や期間、症状などの聞きとりを行い、精神科的症状として説明できない状況を確認しました。その後、通常の状態とイップス状態を作り、それそれで行動実験を行いました。一つは命令に従いタスクをこなし、一つは自発的にタスクを決めてこなしていくものですが、命令があるときは同じ結果となりましたが、自発的なタスクでは明らかな差があり、表現は難しいですが、脳の柔軟性がなくなっている状態がみられました。今後は被験者を増やして、MRIを用いた行動実験などを重ねていく予定です」

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小木曽航平さん(研究)

「スポーツは文化であると言われていますが、スポーツが人間にとって何かを答えるのは困難です。そこでスポーツを様々な視点で見ることで世の中におけるスポーツの役割や価値を具体化することがスポーツ文化研究の役目だと思っています。本研究は、地域社会における伝統的なスポーツ、タイにおけるロングボートレース(競舟)に焦点をあてました。これはタイだけでなく、日本や中国などでも行われており、最終的には東アジアと東南アジアを比較する研究にしていきたいと考えています。上半期では、タイにおける競舟の実施状況を文献によって整理・分析し、現地調査の課題を明らかにする作業を実施。この中で、過去タイの王室儀礼として行われていたことがわかりましたが、現在はどういった意義を持つのかなど課題が見えてきました。その後、実際にタイでの調査を行い、この結果を踏まえ、競舟がタイの多くの農村地域社会に根付いたスポーツであることや、その様式は地域ごとに多様であるなどの仮説をたて、今後は新たな課題なども含め、10-12月までタイでの聞き取りや文献の探索などを行います」

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