中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2017年10月13日

平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

平成29年度 第11期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会

10月13日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)にて平成29年度 第3回目の中間報告会を実施しました。この日、参加したのは体験チャレンジャーの神箸渓心さん(スヌーカー/選手)、髙居千紘さん(障害者陸上/選手)、辻沙絵さん(障害者陸上/選手)と、研究チャレンジャーの金多允さん、田中嘉法さん、三重野雄太郎さん、八木優英さん。所用で出席できなかった工藤開さん(空手道/選手)は、事前に録音した音声にて報告を行いました。
報告会終了後には、メンタルトレーナーの後藤史さん(体験助成第5期生/株式会社リコレクト)を講師に招き、「チャレンジする心の持ち方、高め方」というテーマで座談会を実施しました。グループに分かれたチャレンジャーは、ボールを使ったゲームに取り組んだ後、プレッシャーのかかる状況下での心的状況やパフォーマンス低下の原因となる要素を洗い出し、グループごとに発表を行いました。その発表内容について全員で議論を行ったほか、審査委員の先生方からさまざまなアドバイスをいただき、活発な座談会となりました。

参加いただいた審査委員

浅見俊雄委員長、伊坂忠夫委員、北川薫委員、杉本龍勇委員、高橋義雄委員、村田亙委員(五十音順)

金多允さん(留学生)
金多允さん(留学生)

腸脛靭帯炎の発生因子に着目して、腸脛靭帯のストレインに影響を及ぼす要因を研究しています。腸脛靭帯炎は、ひざ関節に生じるランニング障害の中で、2番目に多く起こります。腸脛靭帯と大腿外側上果の間の脂肪組織を過度に圧迫することで腸脛靭帯炎は発生しますが、女性に多いことやO脚などのアライメントが原因として報告されています。これまでに腸脛靭帯のストレイン測定を男女40名の大学生を対象に超音波エラストグラフィを用いて実施しました。超音波エラストグラフィは、圧迫を加えて生じる組織の歪みを分析し、硬さを評価するものです。この結果として、肢位によって男女で筋肉・筋活動に違いがあることがわかってきました。特に女性の立った状態ではストレインが高くなります。これが腸脛靭帯炎の発生と関連するのではと考えています。今後は、長時間のランニングが腸脛靭帯のストレインへ与える影響について検討するために、トレッドミルを用いた30分程度のランニングを実施して、ストレインと筋電図の測定を行います。

髙居千紘さん(障害者陸上/選手)
髙居千紘さん(障害者陸上/選手)

走り高跳びで日本記録を塗り替え、2021年デフリンピックでメダル獲得を目指すことを目標にしています。今シーズンは、横浜で行われたハマピックでは大会新を記録したものの、調子は上がらず、夏には負傷をしてしまい記録は伸び悩みました。現在は怪我をしっかり治しながら、10月の第17回全国障がい者スポーツ大会で自己ベストを更新する意気込みで調整しています。練習に取り入れた踏切ドリルはうまくできるようになりましたが、まだ跳躍一つ一つのポイントで力をうまく繋げることができていません。うまく助走のリズムをつかむことや踏切前から上半身を前傾にならないようにすることができれば記録は伸びていくと思います。前回のデフリンピックで活躍した日本代表の選手たちに肩を並べられるように一生懸命練習を続けたいです。

三重野雄太郎さん(研究)
三重野雄太郎さん(研究)

ドーピングをめぐる法的・倫理的問題に関する研究を、ドイツ・オーストリア・スイスでの状況を文献調査し進めています。日本でも2020年の東京オリンピックに向けて、ドーピングに関する法の整備は進んでいます。国内のドーピング件数は、非常に少ないことが実状としてありますが、2020年は海外から多くのアスリートが来るため、そのあたりも踏まえると法的な対応は必要なのではないかと思います。ドイツでは1998年の薬事法改正により他人にドーピングを行うことを規制する法律が成立しましたが、自己使用のドーピングに対する規制はありませんでした。状況が大きく変わったのは2015年の反ドーピング法の制定です。この法では、国民の健康を守ることに加えて、スポーツ競技の純血性の保持に寄与することを目的として挙げています。自己使用のドーピングも規制の対象となったことで、スポーツの公平性・健全性を守る方向に、法の姿勢が変化しています。今後はオーストリア・スイスの状況と、ドイツの現行法の運用状況などにも調査を進めていきたいと思っています。

神箸渓心さん(スヌーカー/選手)
神箸渓心さん(スヌーカー/選手)

昨年入学した北京の世界スヌーカー学院での1年目は、技術・メンタルの基礎を中心に学びました。2年目の今年はより実践的な指導を受けています。コーチより構える前やショット間の動作を一定にする訓練を受けたことでリズムも安定してきていますし、フィジカルトレーニングを積んだことでショットスピード、ボールのコントロールも向上しています。国外試合では、以前は勝てなかった選手との力の差が縮まった実感を得ています。本場英国でのプロアマ入れ替え戦では残念ながら敗退してしまいましたが、プロの様子を間近で見ることができ、プロになるために必要なものを知る機会となり、必ずこの場所に帰ってくるという強い思いをもつことができました。帰国して参戦した全日本選手権、関東オープンでは落ち着いたプレーができ優勝することができました。しかし、まだ調子の波が激しく、調子が悪い時でもうまく試合に集中することが必要だと考えています。そのためにも、反復練習に励み、どんな状況下でもいい結果を出せるようにしたいです。試合や練習にも緊張感を持って取り組むことで、メンタルを鍛え、来月の世界選手権ではベスト16に入り、ジャパンオープンでは優勝したいです。世界スヌーカー学院では、レベルの高い刺激ある仲間に出会えます。この刺激を糧にして、目標である世界チャンピオンを目指していきたいです。

八木優英(研究)
八木優英(研究)

近年股関節痛の原因の一つとされている股関節不安定性は、未だにわかっていない部分が多いです。特に力の入った状況での股関節不安定性は、全く究明されていない状況にあり、それについて研究を進めていきます。股関節は骨盤側のカップと大腿骨側のボールでできており、本チャレンジでは股関節不安定性をボールとカップの間に生じる並進運動として測定を進めています。股関節不安定性を測定する従来の方法はレントゲン・MRI・CTですが、身体的、金銭的、時間的にも負担が大きく、さらに筋収縮中の特徴を捉えるには最適な方法とはいえません。一方、超音波画像装置では筋収縮中にも測定できる可能性があり、既存の測定方法と比較して多くの面でメリットがあります。そこでまずはこの装置を用いた股関節不安定性の測定方法の確立を目指します。超音波画像装置の信頼性をMRI画像との相関係数から検討します。そして確立した方法を用いて、健常者と股関節痛患者の股関節運動の特徴を比較します。現在の進捗としてMRI解析プログラムのプロトタイプを用いて、MRIの解析を進めていきたいと考えています。

工藤開(空手道/選手)
工藤開(空手道/選手)

私の目標は東京オリンピック2020の空手道にて日本代表として出場し、金メダルを獲得することです。そして指導者の道に進み、空手の素晴らしさを伝えて、空手道の成長に貢献していきたいです。今回助成を受けたことで海外へも遠征することができ、さまざまな強い選手と練習ができました。またトレーニングにトレーナーを付けて日常生活から変えています。しかし来年世界ランキング50位以内に入らなければ、全日本ナショナルチームから除外される可能性があります。ランキングの順位次第では、出場できない大会もあります。助成を受ける前の時点で私のランキングは120位でしたが、現在は72位です。このペースでいけば50位以内、上位進出も可能です。今後の課題は、国際大会に出場を続けランキングを上げていくこと。今私は、目標達成の手応えを着実に掴んでいます。これまで勝てなかった相手に勝ち、大会での上位進出も増え、過去最高の結果も残すことができました。しかし現状に満足することなく精進を続けたいと思います。*事前に録音した音声で発表

田中嘉法さん(研究)
田中嘉法さん(研究)

私のチャレンジでは、乳酸の動きを直接観察することを目指しています。運動をすることで乳酸が骨格筋に蓄積されることは知られていて、今まで乳酸がたまることで筋肉疲労が起きるということが広く言われてきました。最近の研究では、乳酸は骨格筋から心臓や脳、筋繊維間に輸送されエネルギー基質となることがわかっています。しかし、乳酸の細胞間輸送は未だに観察されていません。この移動を直接見ることで、乳酸がエネルギー物質であることを誰にでもわかるように示したいと思っています。乳酸を見るために必要な蛍光タンパク質や観測装置などを他大学の教授から協力を得ながら調達してきました。購入予定だったものも自前の設備で代替え可能なことが判明し、浮いた予算で高性能の最新観測装置を購入することもできました。蛍光タンパク質の観測テストは済ませたので、動物に対して行う実験を進めていきます。実験では、高圧の電気を複数回かけることで生じる筋肉損傷の回復と蛍光タンパク質発現のフェーズ比率を正確にとる条件を設定することが課題となっています。また観察面でも蛍光タンパク質を筋表面に発現させる条件も選定する必要があります。

辻沙絵さん(障害者陸上/選手)
辻沙絵さん(障害者陸上/選手)

春先は右ひじの怪我の影響で、日本パラ陸上競技大会のみに参加しました。200mと400mでは優勝しましたが、力んだ走りもでてしまいストライドが小さくなり後半失速してしまったため、そのことを反省しストライドを広くする練習を行いました。7月に出場したロンドンでの世界陸上では200mで自己ベストを更新し400mでは3位に入りました。200mでは股関節を大きく使ってストライドを伸ばす走りができ、タイムも更新できたと思っています。400mではアウトレーンに入った時は、ペースがわからずに試合を組み立てられないという悪いイメージを持っていましたが、今回はそのイメージを払拭するためにも、試合をしっかりコントロールする姿勢で臨みました。300mまではいいペースでしたが、結局最後の100mで失速してしまいました。今後の課題としては、ウェイトトレーニングや100m・200mなどの速い動きに取り組んでスピードアップをめざし、また後半の失速を改善するためにも、試合形式の乳酸耐性トレーニングに取り組みたいです。世界陸上で自己記録を更新した200mでは股関節を大きく使ってストライドを伸ばす走りができ、タイムも更新できたと思っています。今後さらにストライドを伸ばすために、骨盤を意識した動きを練習に取り入れていきたいです。