中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2016年10月7日

平成28年度 第10期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

平成28年度 第10期生スポーツチャレンジ助成 第3回中間報告会を実施しました

10月7日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)にて平成28年度 第3回目の中間報告会を実施しました。この日、報告を行ったのは、体験チャレンジャーの八木愛莉さん(カヌー・スラローム/選手)、三浦優希さん(アイスホッケー/選手)、研究チャレンジャーの高倉久志さん、松田太希さん、水野貴正さん、鷲谷洋輔さん、そして外国人留学生奨学金のフィンク・ジュリウスさんの合わせて7名。海外でチャレンジ中の三浦さんは事前に録画されたビデオで、鷲谷さんはSkypeで報告を行いました。

また「チャレンジをより高めるための心の持ち方、高め方」をテーマとした座談会には、リオ2016パラリンピックでメダルを獲得した5名の体験チャレンジャー(山本篤さん、多川知希さん、佐藤圭太さん、芦田創さん、辻沙絵さん)が合流。リオでの体験を報告するなど、現役のチャレンジャーたちに向けて大きな刺激とアドバイスを贈りました。








参加いただいた審査委員

浅見俊雄委員長、遠藤保子委員、北川薫委員、草加浩平委員、定本朋子委員、高橋義雄委員、増田和実委員、村田亙委員(五十音順)


高倉 久志さん(研究)

あらためて言うまでもなく、アスリートは、トレーニングを最大化して効率的に競技力を向上したいと願っている。近年、トレーニング適応を導く鍵因子の発現量が概日リズムによる変位を示したことで、トレーニングを実施するタイミングがその効果に違いを生じさせる可能性が考えられるようになった。これらを背景に、本研究ではトレーニングプログラムの軸とされてきた因子に加えて、運動実施タイミングの重要性を明らかにしたいと考えている。現在は、時計遺伝子発現リズムを考慮した1日2回、9週間にわたるトレーニングプログラムを実施し、摘出筋mRNA及びタンパク質測定用のサンプルを作成するなど順調に実験を進めている。

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八木 愛莉さん(カヌー・スラローム)

今シーズンは、4月のジャパンカップとNHK杯のポイントで総合1位となり、日本代表の1番手として選考されるなどよいスタートを切った。しかしその直後のアジア選手権の公式練習で肩に故障を負ってしまい、国際レースの前半戦は出場せずにリハビリに専念することにした。ケガが回復した7〜9月はスロバキアを中心に欧州でトレーニングと試合を重ねた。初戦のU-23世界選手権は23位、初めてのチャレンジとなったワールドカップでは、2戦に出場したがともにセミファイナルに進出することができなかった。今シーズンの反省を踏まえ、今後はケガをしない身体をつくるとともに、スロバキア語の語学力を高めて現地コーチの指導をより深く理解できるようにしたい。2020年、カヌー・スラロームで女子初のメダルを獲得するため、一日一日を大切にして過ごしていきたい。

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水野 貴正さん(研究)

静的ストレッチングに電気刺激を組み合わせた筋力増強法の開発にチャレンジしている。必要な機器の準備に想定以上の時間がかかってしまい、実験システムの構築が予定より2か月ほど遅れてしまった。現在はプレ実験を終え、本実験に向けて被験者38人のリクルーティング等準備を加速している。10月中には被験者全員がトレーニングを開始し、12月中旬には完了する予定。ここまでのところ計画設計が甘かったと反省しているが、質の高い研究を進めて最後にはしっかりと成果報告できるようチャレンジを続けていく。

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フィンク・ジュリウスさん(外国人留学生奨学金)

レジスタンストレーニングによる筋肥大の確かなメカニズムや因子は完全に分かっていない。それに加えて、重い負荷やオーバートレーニングによってケガをしてしまったという事例もある。感覚ではない科学的なアプローチで、それぞれの目的や体質に合ったレジスタンストレーニングを提示し、それによって人々の健康づくりに貢献するのが私の目標。これまで実施した実験は例数が十分ではなかったため、今年は追加実験を実施して論文を作成している。その一部の投稿論文が国際誌に掲載されるなど目標に一歩一歩近づいている。

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松田 太希さん(研究)

スポーツ文化それ自体が孕んでいる暴力性と、それが指導者および選手の自我に与える影響、またはその自我の構造に関する考察を進めている。このテーマについて論じた論文が、体育・スポーツ哲学研究、体育学研究などに掲載された。現在のところ、哲学者たちの議論を借りてスポーツ集団の暴力性について明らかにしている。しかしそれらの哲学者の議論は、決してスポーツ集団を念頭に置いた議論ではない。今後は、哲学者たちの思索をたどりつつも、スポーツ集団に固有の暴力性の構造を探求していかなければならないと考えている。

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鷲谷 洋輔さん(研究)

視覚障害者柔道選手に焦点を当てて、言語も視覚も超えた感覚の世界を考察している。被験者とコミュニケーションを密にしながら、彼の日々の生活における身体の多面性をフィルムエスのグラフィーの手法で明らかにしたい。上半期は、5月(広島)と8月(東京)でフィールドワークを行った。引き続き10月には広島、11月にはパリで柔道稽古の観察を行う予定。また現在、博士論文の執筆を進めているとともに、11月には南アフリカでの学会発表も控えている。フィルム編集についてはまだ手を付けられていないが、これについてはじっくり時間をかけ、研究成果の一つとしての作品に仕上げていきたい。

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三浦 優希さん(アイスホッケー)

USHLのトライアウトに合格し、活動の拠点をチェコから北米に移した。所属するウォータールー・ブラックホークスでは開幕から3試合連続でリーグ戦に出場し、NHLのスカウトにプレーを見てもらえる機会は格段に増えると思う。また、USHLでプレーする選手の95%がNCAAに所属する大学に進学しており、これも目標であるNHLに近づくステップになると考えている。6月には目標の一つであった日本代表候補に招集され、9月には2018年平昌五輪の最終予選に出場した。しかし、日本はドイツ、オーストリア、ラトビアに3連敗し、長野以来の出場を手にすることはできなかった。自分自身も得点することができず、世界の壁をあらためて感じた。今後はUSHLで活躍し、2017年のNHLドラフトで指名選手になること、そしてNCAAディビジョン1の大学とのコミットメントを果たすことを目指して引き続き努力を重ねていく。

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