中間報告会

半期の活動発表、人材交流と学びの場
 2015年9月25日

平成27年度 第9期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

平成27年度 第9期生スポーツチャレンジ助成 第1回中間報告会を実施しました

9月25日(金)、大手町ファーストスクエア カンファレンス(東京都)にて平成27年度 第1回目の中間報告会を実施しました。この日、参加したのは体験チャレンジャーの網本麻里さん(車いすバスケットボール・障害者スポーツ/選手)、尾崎弘和さん(オリエンテーリング/選手)、鈴木徹さん(陸上走高跳・障害者スポーツ/選手)、保坂史門さん(スノーボードクロス/選手)、研究チャレンジャーの渡邊瑛季さん、外国人留学生の宣 輔瓊(ソン ボギョン)さん。海外留学生の作田飛鳥さんは、インターネット・ビデオ通話による報告を行いました。

報告会終了後の座談会では、「チャレンジと環境について考える」というテーマで意見交換を行いました。まず、チャレンジャーが成功・失敗例をふまえて自身の意見を語り、審査委員の先生方は、経験談などを交えながら助言を行うなど、活発な意見交換が行われました。

参加いただいた審査委員

浅見俊雄委員長、伊坂忠夫委員、影山一郎委員、北川薫委員、定本朋子委員、杉本龍勇委員、増田和実委員(五十音順)

尾崎弘和さん(オリエンテーリング/選手)

今年世界選手権が行われたスコットランドや、来年の開催国であるスウェーデン、ノルウェーなど、上半期は3回の欧州遠征を行った。そこでは、強豪国のスウェーデンチームと合同トレーニングを行い、彼らの練習メニューやスタイルを見るなど多くを学ぶなど、今年、来年の世界選手権に向けた良い準備ができた。世界選手権には、3競技に参加し、なかでもロングディスタンスに力を入れていたが、アジア選手でトップを獲得。さらに各競技のランキングもアジアのトップに立つことができた。しかし、ロングディスタンスでは、トップが1時間40分、私は2時間18分で、世界とは大きな差がある。これを縮めるには、トレーニングを増やし、活動拠点を欧州に移す必要があると考えている。また、他の日本人選手の目標とされる立場として、自身の経験を伝えるべく、ジュニアの活動に帯同するなどの活動を行った。下半期は来シーズンを見据え、競技に直結するトレーニングを増やすため、積極的に欧州への遠征を行いたいと考えている。

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宣 輔瓊(ソン ボギョン)さん(外国人留学生)

競泳におけるコンディショニングにおいて、メンタル、フィジカルなど1点ではなく、包括的なコンディションに着目。そのため、個別性と個人の特徴の重視し、実践・応用が可能なコンディショニングが必要と考え、セルフモニタリングを用いたセルフコンディショニングの作成と実施を目指し、中学生、高校生34名を対象に約2ヵ月間に渡って調査を行った。最初は日誌を作成してもらうことからスタート。続いて指導者、専門家の助言を得て決めたコンディショニングを含めてセルフモニタリングを行ってもらった。まだすべての調査・分析は終わっていないが、予想される結果としては確実に変化が現れていることを確認した。パフォーマンスについては、タイムトライアルや試合結果を見たところ、2〜3秒以上向上した生徒、変化のない生徒があった。今後は結果を整理・分析を行い、修正論文にまとめたい。また、初めてのコーチングを行ったが、今後も生徒たちのためにコンディショニングプログラムを組んでいきたい。

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保坂史門さん(スノーボードクロス/選手)

前期は、筋力、体力の向上、体重の増加により、海外選手に負けない体を作ることを念頭に活動してきた。一方で昨年まではパワー系を重視してきたが、シーズン中は体力も必要であり、体重は増やすだけでは瞬発力が落ちるため、全体をバランスよく向上できるようにトレーニングを行った。数値の確認は11月に行うが、筋力は10〜20 kg重い負荷でトレーニングできており、体重は夏の70kg以下から現状74kgまでアップ。しかし、海外の選手は80kgオーバーが多いため、シーズンインまでにそこを目指す。また8月上旬はオーストラリア遠征を行い、大会にも参加。結果は決勝17位だったが、世界チャンピオンとの対戦を通じ、パワーと柔らかさの両立する滑りのスタイルを知るなど、多くの収穫があった。今後は10月から再びオーストラリア遠征を行い、シーズン本番では、積み上げてきたことを生かし、好成績を追い続けたい。

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渡邊瑛季さん(研究)

スポーツ合宿を集中的に受け入れている、長野県菅平高原と北海道網走市を研究対象地域に選定して訪問し、現地での聞き取り調査を行った。まず菅平は、ホストである宿泊施設同士、ゲストである学校同士に強い結びつきがあり、人的ネットワークが構築されて調整機能を生み出している。一例として、高校ラグビー部の合宿では、その目的が合同練習や試合となっており、それが、監督の出身校や全国大会への出場経験など、人的にマッチングが行われている。一方の網走は、行政主導で合宿が誘致されている状況。そのため市が、宿泊場所と練習場所の手配を一元化して行っており、人的ネットワークはほとんど機能していない。このことから、菅平は面的なネットワークが作られ、網走は市が中心となって線的な構成となっている。今後は、ホスト側への聞き取り調査の継続と先行研究との照合を行い、日本全体でのスポーツ合宿の動向把握を行っていく予定だ。

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鈴木徹さん(陸上走高跳・障害者スポーツ/選手)

リオパラリンピックに向けて1m80という標準記録が示された。しかし、日本選手団としてはベスト8に入る実力がないと選ばれないため、1 cmでも高く飛ぶことを目標に取り組んだ。そのため、以前より1ヵ月早く活動をスタート。また、走り込みを減らし技術、筋力トレーニングを重視した。この結果、ランキングに記録が反映されるIPC公認大会では、ブラジルで9年ぶりに自己ベストタイの2m00を記録。さらに公認ではないが、国内大会で自己新となる2m01をマークし、常に2m以上を狙える状況をつくることができた。10月には世界選手権が待っている。現状のランキングは4位であるが、技術的な課題も明確であるため、大会までの1ヵ月間、リオパラ内定がもらえる2位以上を目指して取り組んでいく。

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網本麻里さん(車いすバスケットボール・障害者スポーツ/選手)

前期は、リオパラの予選を想定し、海外遠征と国内合宿をほぼ毎月行い、チームビルディングと同時に、長丁場の大会でハイパフォーマンスを継続して発揮できる体力の強化を念頭に活動してきた。まず海外遠征では、1日平均数試合という過酷な状況を作った。国内合宿では、4〜6月はディフェンス、7〜9月はオフェンスをメインとしながら、海外遠征で見つかった課題の克服に取り組んだ。また個人としては、シューティングの量を増やし、上半身だけでなく、下半身を使って車いすを操作するため下半身の筋力トレーニングを行った。このほか、リカバリーのためマッサージを開始したり、専属のコーチと契約して、技術や知識の向上に努めた。遠征などの海外強豪国との試合では、勝利こそ少ないが、近年力をつけているイギリスに1勝できたことで、自分たちのやってきたことが、間違っていないことを確認でき、10月のリオパラの予選に自信をもって臨める。

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作田飛鳥さん(海外留学生)

イギリスのチェスター大学にて「ソマティクス的舞踊訓練とダンサーの自己認識」というテーマに取り組む。ソマティクスとは、動作を通して自身の身体感覚(筋感覚・運動感覚)に意識を向け、自身の身体に対する理解を深める訓練テクニックであり、ソマティクス的舞踊訓練とは即興+動作探究を行うもの。上半期はソマティクス的舞踊訓練のどのような要素が、自己認識のどのような要素に影響を与えているのか、また具体的な要素の相互関係を体系化することは可能かを研究。東洋・西洋の舞踏訓練法の違いに着目しソマティクス的舞踊訓練の東洋的手法が、自己意識向上と消失にどのような影響を与えているのか、ソマティクス的舞踊訓練中に出現するFlowを、動作解析を通して計測することが可能かに焦点を絞る。今後は論文の作成に向けて内容の整理と実験の準備・実施・データ解析へと進める。

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